大根酒肴3種 煮びたし、柚庵漬け、一味和え
「
ねぎのふろふき、味噌焼き」では常備野菜としての長ねぎの復活を願い、手早くできる酒肴をお教えしましたが、今日は同じく常備野菜への返り咲きを希望する大根の酒肴を紹介します。
昭和のお母さんの買い物かごから飛び出して顔をのぞかせていたのはねぎだけでなく、大根もそうです。現代は大根を丸々1本買うことも少なくなり、スーパーマーケットなどで見かける大根も半分に切ったものが多いですね。切って売っているのなら、それを上手に活用しない手はありません。作る料理に合わせて部位を選びましょう。
同じ大根でも部位によって味や特徴が変わります。上部(葉がついているほう)・真ん中・下部と3つに分けると、上部が甘く、先端にいくにつれて辛くなります。葉がついている真下の3~4cmは堅く、炒めものなどにするとよいでしょう。その下5~6㎝は水分が多く甘みが強いのでサラダや酢のものに向いており、この部分で大根おろしを作ると辛みが少なめになります。真ん中の部分は柔らかくて辛みと甘みのバランスがよく、煮ものや漬けものに向いています。先端部は水分が少なくて堅く、炊くと苦みが出て、大根おろしを作ると辛みが強いものになります。薄切りにして漬けものや味噌汁の具などにするとよいでしょう。
「
かぶの煮もの」でお話ししたように大根はぐいぐい根を伸ばしますが、地中で雑菌などから身を守るため、辛みや臭みの元になる強い酵素が厚い皮の部分に多く存在します。したがって、先端部だからというよりも皮が厚いので堅くて辛いということになります。
大根にとっては大根役者などと言われるのは不本意で(「
千波大根の磯辺風味」)、大根ほど使い勝手がよい万能野菜はありません。料理の仕方次第で主役にも脇役にも、どんな味にもなります。
今日は簡単にできる大根を使った3品をお教えします。他にも「
サイコロかぶ」の「柚子酢漬け」の要領で柚子大根にするのもよいですね。残った葉や皮は「
焼き大根」で紹介した「大根の葉と皮の梅ごま風味」やきんぴらにするのはどうでしょう。
今日の記事で「“大根”売り場が“大混”雑」(笑)になることを願います。野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「大根煮びたし」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・歯ごたえが残るくらいに半生に茹でて、水に放さず熱いまま美味出汁をかけて供する。茹でたてなので硫黄臭がしない。わさびを効かせたほうがおいしい。
・「大根柚庵漬け(ゆうあんづけ)」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・柚子果汁の量が足りない場合は酢をたして補う。柚子の皮は苦みが漬け出汁に出ないように白い部分を除いて加える。
・「大根一味和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・油分を少量加えることで味に深みが出る。ごま油だけだと風味が強過ぎるので太白油かサラダ油と合わせて加える。
「大根煮びたし」(右)
【材料(2~3人分)】・大根(皮をむいて5mm角×3cm長さに切る) 100g
・大根の葉 適量
・美味出汁 60cc
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合
・わさび(市販品のチューブわさびでもよい) 適量
【作り方】1.大根の葉は茹でて小口切りにする。
2.美味出汁をボウルに入れてわさびを溶き合わせる。
3.鍋に湯を沸かして大根を入れ、歯ごたえが残るくらいに半生に茹でる。大根は水に放さず、熱いままざるに上げ、水気をきってすぐに2のボウルに入れる。大根の葉を混ぜて器に盛り、ボウルに残ったわさび出汁を少量かけて供する。
「大根柚庵漬け」(左)
【材料(2~3人分)】
・大根(皮をむいて1cm角×3cm長さに切る) 180g
・塩 少々
・柚庵地(漬け出汁) 300cc
日本酒1:濃口醤油1.2:みりん1.2:柚子果汁0.8の割合
・柚子の皮(白い部分を除く) 8g
【作り方】1.大根に辛くならない程度に薄く塩をふってしんなりさせる。
2.柚庵地をボウルに入れて混ぜ、そこに柚子の皮を細いせん切りにして加える。
3.大根の水分をクッキングペーパーで拭いて2の柚庵地に2時間半漬け、柚子の皮と一緒に器に盛る。
「大根一味和え」(奥)
【材料(2~3人分)】・大根(皮をむく) 160g
・塩 適量
・ごま油 小さじ1/2
・太白油 小さじ1
・薄口醤油 小さじ1/2
・刻み昆布(塩昆布を刻んだものでもよい) 3g
・一味唐辛子 適量
【作り方】1.大根は皮をむいて、大根の太さに合わせて3mm厚さの半月切りか、いちょう切りにする。
2.大根に辛くならない程度に薄く塩をふってしんなりさせる。
3.大根の水分をクッキングペーパーで拭いてボウルに入れ、刻み昆布と一味唐辛子を加えて混ぜ、器に盛る。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。