ねぎとこんにゃくのすき焼き
「
ねぎのふろふき、味噌焼き」、「
大根酒肴3種」と、常備野菜で手早くできる酒肴を紹介しましたが、こんにゃくもぜひ、冷蔵庫の定番食材に加えていただければと思います。「
こんにゃくのピリ辛煮」などを常備菜としてまとめて作っておけば、和えものなど他の料理に加えてもよいアクセントになります。
こんにゃくの原料となるこんにゃくいもは、口にするとほんの少量でもピリピリとするほどえぐみが強く、そのままではとても食用にはなりません。そこで茹でつぶして水を加え、糊状になったところに昔であればアルカリ性の灰汁(あく)、現在は消石灰(しょうせっかい)などを加えて固め、茹で上げてえぐみを除きます。
「あく抜き不要」といううたい文句のこんにゃくもありますが、あくが全くないということではなく、使用している消石灰が少ないというだけなので、手間を惜しまず、あく抜きして用いたほうがよいでしょう。あくやにおいの上手な抜き方は「
こんにゃくのピリ辛煮」でお教えしましたね。
白と黒のこんにゃくは実は原材料は同じです。皮付きのまま作られた昔風の黒いこんにゃくを模して、白こんにゃくに荒布(あらめ。海藻の一種)やひじきなどの粉末を加えたものが黒こんにゃくです。この連載でよく使っている赤こんにゃくは滋賀県近江八幡市の名物で「三二酸化鉄(さんにさんかてつ)」(人体には無害)という成分で赤くします。
こんにゃくを使う上でもう一つ知っておいていただきたいことがあります。開封前のこんにゃくはパッケージ記載の賞味期限に従えば、常温で長期保存することができます。それはこんにゃくがつかっている水が、菌が繁殖できないほどの強アルカリ性だからです。したがって、こんにゃくが半端に残った場合は、その水に浸けて冷蔵庫保存すると傷みません。
今日はこんにゃくとねぎのすき焼きです。肉なしでも十分に楽しめ、低カロリーで低コスト。そんな“こんにゃく”いつ食べる? “今夜食”う(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「ねぎとこんにゃくのすき焼き」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・こんにゃくのにおいはアルカリ性になることで発生するので、酸を加えれば中和してにおいが消える。塩もみして熱湯で茹でてさらすのが一般的であるが、この方法では臭みの希釈効果はあるが根本的な原因には対処できない。
・臭みを取るために8%の酢を加えた水に切ったこんにゃくを3分つける。
・歯ごたえのあるこんにゃくが好みならそのままで、柔らかいのが好みなら、まな板の上に置いて手のひらでこんにゃくを強くたたいた後に調理するとよい。
・下仁田ねぎなどの太ねぎは加熱すると柔らかく大変甘くなる。先に蒸し器で柔らかく蒸した後に焼くと、とろけるような柔らかさになる。
「ねぎとこんにゃくのすき焼き」
【材料(2~3人分)】・下仁田ねぎ 2本
・日本酒 少々
・揚げ油 適量
・こんにゃく 1枚
・酢 少々
・牛脂(サラダ油でもよい) 適量
・サラダ油 適量
・すき焼き割り下 50~80cc(好みで増減する)
出汁2:日本酒1:濃口醤油1:砂糖0.5の割合
・芽ねぎ(根の部分を除く) 適量
・黒七味唐辛子 少々
【作り方】1.こんにゃくをまな板の上に置いて、手のひらで強くたたいてこんにゃくのコシを取り、柔らかくする。「
こんにゃくのピリ辛煮」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。両面に細かく鹿の子の包丁目を入れ、3cm角に切る。
2.こんにゃくの臭みを抜く。水に8%の酢を加えた中にこんにゃくを3分つける。酢水から上げたこんにゃくを流水でもみ洗いして酢を流す。鍋に湯を沸かしこんにゃくを入れて2分茹でて水に放し、もみ洗いして酢を完全に抜く。
3.下仁田ねぎは柔らかい外側部分を1枚むいて長さ2.5cmに切り、皿に並べて日本酒を少々かけ、蒸気の上がった蒸し器で柔らかくなるまで蒸す。
4.揚げねぎを作る。3でむいた下仁田ねぎの外側部分を使う。内側についている半透明の薄い膜を取り除き、4.5cmほどの長さに切る。重ねて繊維に沿ってせん切りにして冷水に放す。揚げる際に焦げないようにねぎから出た汁気をさっと洗い、クッキングペーパーに挟んで水分を除く。160℃の揚げ油で薄いきつね色に揚げ、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
5.フライパンを火にかけてサラダ油をひく。ベジタリアンでなければ、サラダ油と牛脂を合わせると旨みが増す。水気をきったこんにゃくを入れて炒める。油がこんにゃくになじみうすい焦げ目がついたら、3の下仁田ねぎを入れて両面に焦げ目をつける。割り下を加えて強火でこんにゃくと下仁田ねぎに割り下をからめていく。途中でこんにゃくと下仁田ねぎを返して両面に割り下を含ませる。
6.下仁田ねぎとこんにゃくを器に盛って黒七味唐辛子をかけ、芽ねぎと揚げネギを添えて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。