かつての越前国(現福井県北東部)で栄華を誇った朝倉家ゆかりの滋養酒・蘭麝酒(らんじゃしゅ)をご存じですか。一乗谷朝倉氏遺跡に程近い地で、400年にわたって一子相伝で継承されてきた秘伝の酒。製造する「青木蘭麝堂」を訪ねました。
戦国武将・朝倉氏由来の健康ドリンク「蘭麝酒(らんじゃしゅ)」
熟成によって琥珀色に輝く蘭麝酒。名香「蘭奢待」にちなんで名付けられた。提供/青木蘭麝堂朝倉氏一門の健康維持を支えた滋養酒
「蘭麝酒」の歴史に思いを馳せる
戦国時代、朝倉氏が築いた一乗谷の城下町(現・福井県福井市)は、都の騒乱を避けて文人や学者が集まり、高度な文化が形成されました。中国・明で医術を学んだ谷野一栢(たにのいっぱく)もその一人。朝倉家に仕え、この地に最先端の医学をもたらしたといわれています。その朝倉家で造られていたのが蘭麝酒。一門の健康増進の薬酒として飲まれていました。
朝倉家の滅亡後も、一乗谷に近い青木家で、先祖代々、門外不出の家伝酒として大切に守り造られてきました。
旧家として、代々、この東郷地区に住まう青木家。建物や庭にも往時の面影が残されている。提供/青木蘭麝堂江戸後期になり、青木家は蘭麝酒を商品化し営業販売を始めました。明治の頃には、北海道開拓民の滋養強壮のために、北前船に乗って運ばれたという記録があり、また明治天皇の侍医を務めた岩佐純(いわさじゅん)医師にもその効能が認められています。
厳寒の1月から2月にかけて仕込むという蘭麝酒。原料のもち米の栽培から精米、醸造まで青木家の人々によって行われます。
お酒の原料となる東郷米の栽培から精米、醸造の工程まで、すべて地元の人々や青木家親類の協力で行う。醸造過程でできるみりん粕も自然の旨みが詰まっている。提供/福井県交流文化部ブランド課米麹をたっぷり使ったもち米酒に、十数種類の生薬を漬け込んで琥珀色のお酒へと熟成させます。
漬け込む生薬の配合は一子相伝で、自然の恵みを詰め込んだ、400年の間変わらない味わいと芳醇な香りが特徴です。
青木蘭麝堂当主の青木邦夫さん。提供/青木蘭麝堂「効果を期待しながら楽しく飲んでもらうのが一番です。お客様から、『おかげで元気に過ごしています』と言われることが何よりも励みです。」と当主の青木邦夫さん。
疲れがたまっていると感じる方だけでなく、健康に気を配る方への贈り物にもおすすめです。
レトロな雰囲気がお洒落なパッケージ。贈答品としても重宝される。蘭麝酒(720ml、化粧箱入り)2750円。蘭麝酒は、他の素材と組み合わせて、料理やカクテル、またお菓子のアクセントとしても使えます。次のページでは、福井の郷土料理研究家・佐々木京美さんにおすすめのアレンジ法を伺います。