《窓辺で手紙を読む女》は、左の窓から光が入る室内に女性がいるという、フェルメールの象徴的なモチーフが描かれた初期の作品。
2019年、誰もが目にしたことがあるこの名画が実は仮の姿だったと発表され、大きな話題となった。
1979年のX線調査により右上の壁に架けられたキューピッドの絵画が塗りつぶされていることが判明していたが、フェルメール本人によるものとしてそのまま展示されてきたものの、新たな調査により、フェルメールの死後、何者かによって上塗りされ、消されていたことが判明したのだ。
左・ヨハネス・フェルメール《窓辺で手紙を読む女》(修復前) 1657-59年頃 ドレスデン国立古典絵画館 © Gemäldegalerie Alte Meister, Staatliche Kunstsammlungen Dresden, Photo by Herbert Boswank (2015) 右・ヨハネス・フェルメール《窓辺で手紙を読む女》(修復後) 1657-59年頃 ドレスデン国立古典絵画館 © Gemäldegalerie Alte Meister, Staatliche Kunstsammlungen Dresden, Photo by Wolfgang Kreische今回の大規模な修復プロジェクトで本来の姿が現れた。所蔵美術館であるドレスデン国立古典絵画館でのお披露目展覧会の後、海外では初めて、日本で公開されている。
東京都美術館の学芸員、髙城靖之さんに話を聞いた。
「フェルメール自身がキューピッドを消したことを疑う専門家はほぼいなかったので、この発表は世界中に衝撃を与えました」
ヤン・デ・ヘーム《花瓶と果物》 1670-72年頃 ドレスデン国立古典絵画館 © Gemäldegalerie Alte Meister, Staatliche Kunstsammlungen Dresden, Photo by Elke Estel/Hans-Peter Klutレンブラント・ファン・レイン《若きサスキアの肖像》1633年 ドレスデン国立古典絵画館 © Gemäldegalerie Alte Meister, Staatliche Kunstsammlungen Dresden, Photo by Elke Estel/Hans-Peter Klut本展では、17世紀オランダを代表する画家たちの名品約70点も展示される。
「風俗画、肖像画、静物画、宗教画などの多種多様な作品は17世紀オランダ絵画の多様性をよく示しており、それぞれの画家がどのような表現を特徴としていたのかを見比べながら鑑賞いただけると思います。特に、レイデンの画家たちが得意とした細部まで精緻に描き込んだ小品は、選帝侯アウグスト1世と2世が好んで収集したもので、ドレスデン国立古典絵画館の収蔵作品のなかでも重要な地位を占めています」
本展は、北海道、大阪府、宮城県に巡回される予定だ。
『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』
東京都美術館 企画展示室〜2022年4月3日まで
休室日:月曜、3月22日(火)(ただし3月21日〈月・祝〉は開室)
開室時間:9時30分~17時30分
入室料:一般2100円
ハローダイヤル:050(5541)8600
URL:
https://www.dresden-vermeer.jp*日時予約制、日程変更の可能性あり
表示価格はすべて税込みです。
構成・文/安藤菜穂子
『家庭画報』2022年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。