芸術性の高さで知られる「香川漆芸」の人間国宝がミラノの名門ジュエラー「ブチェラッティ」の優美なブローチのために唯一無二の宝石箱を制作しました。緻密な細工のブローチが映えるシンプルなデザインながら、伝統技法「蒟醤(きんま)」の加飾が光る漆の箱はそれ自体もアート。日本とイタリアの職人技のハーモニーをご覧ください。
色鮮やかな漆の箱と、植物に想を得たブローチの美しきコラボレーション。底面にはベルベットでくるまれた漆の板が敷かれており、ゴールドの輝きを引き立てている。上・花のブローチ+青のボックス242万4000円 下・葉のブローチ+赤のボックス176万4000円/ともにブチェラッティ(ブチェラッティ 銀座店)彫金細工の繊細さはイタリア随一「BUCCELLATI(ブチェラッティ)」
ミラノで1919年に創業した「ブチェラッティ」は、イタリアを代表するジュエラーの一つ。ルネサンス期の彫金技術を生かした優美な細工が特徴で、日本でも根強い人気を誇ります。
今回、コラボレーションのために選ばれた2点も、極細の線を手作業で密に彫ることでベルベットのような質感に仕上げる「セグリナート」という技法が駆使されたもの。ひと目で「ブチェラッティ」とわかる緻密さと独創性があります。
右・葉がすべて上を向いているデザインが前向きなパワーを感じさせるブローチ(YG、WG、RG/ 縦7.8×横4×厚さ1.8センチ)。「セグリナート」の技法でマットなイエローゴールドの葉に、光沢のあるレッドゴールドの葉脈を加えている。枝はホワイトゴールド。左・イタリアで広く愛されているマグノリア。その香り高い花に想を得た華やかなブローチ(YG、WG、PG/縦7×横7×厚さ1.5センチ)。「セグリナート」の技法で表現された花脈や花心はため息が出るほどの緻密さだ。植物からインスピレーションを得たデザインは、創業者マリオ・ブチェラッティの時代から多く見られたもの。名門ブランドのDNAが息づく名作ブローチです。
日本が世界に誇る伝統工芸「香川漆芸」
江戸時代後期、一人の優れた漆工、玉楮象谷(たまかじぞうこく)の登場で飛躍的に発展し、その後も多くの名工を輩出してきた香川漆芸。
芸術的な作品の特徴は、色彩の豊かさと3つの加飾技法「蒟醤」「存清(ぞんせい)」「彫漆(ちょうしつ)」にあります。
箱の素地は、監修を務めた香川漆芸作家、山下義人さんの手もとにあった樹齢400年の貴重な木曽ヒノキ。ひずみが少なく、漆器に最適なそのヒノキで、山下さんがイメージしたとおりの木地を制作したのは、香川県の木工会社「Mokuichi」。上・葉の形の赤い箱(縦15×横9.5×高さ5.4センチ)は、葉の造形を表現するため端にかすかな捻りを入れているのがポイント。下・放射状に刻まれた線がほとばしる光を思わせる青い箱(幅13×高さ5.8センチ)は、側面をふくらませて柔らかな印象に仕上げてある。今回、2つの宝石箱に用いられた「蒟醤」は、漆を塗り重ねて文様を彫り、その溝に色漆を埋めてから、表面を研いで文様を表現するというもの。
赤い箱は朱赤の漆に金、青い箱はブチェラッティのブランドカラーである青の漆に銀の金属粉を蒔く作業を30回以上繰り返すことで、深みのある色と艶、ゴールドのブローチと呼応する上品な煌めきが生まれました。