青菜3種の漬けもの、カリフラワーのあんかけ飯蒸し
「
壬生菜鍋、壬生菜と春菊の高菜粒辛子和え」で水菜と壬生菜の違いをお話ししましたが、水菜も壬生菜も漬けものにすると大変おいしい青菜です。同じく今を代表する青菜の漬けものに辛子菜があります。今日はこの3つを昆布漬けにします。1つの青菜で十分だろうって?(笑) 買ってくるならそうでしょう。でも家庭であれば1種を漬けるのも、少量ずつ3種を漬けるのも手間は全く一緒ですから、3つを食べ比べて楽しんではいかがでしょう。飯蒸しのあんかけと3種の青菜の漬けもの、晩酌のしめのご飯として最高の贅沢です。料理屋でもこんな気の利いたしめの食事は出してくれないでしょう。
辛子菜は、チンゲン菜や白菜などと同じアブラナ科の一種で、2月から3月が旬です。種からは和辛子が作られます。菜っ葉部分は黄緑で深い切れ込みが入っており、特有の辛みと香りを生かし漬けものやひたしにします。
3種の青菜のうちの1つ、サラダ辛子菜。壬生菜。水菜。辛子菜の仲間のひとつに、スーパーマーケットなどで見かける「サラダ辛子菜」があります。一般的な辛子菜は生食には不向きですが、サラダ辛子菜はそのまま食べられ、柔らかくシャキッとした歯ごたえでピリッと辛みがあります。20~25cmくらいの長さで姿は水菜に似ており、軸が細くて葉には深く細かい切れ込みがあります。今回はサラダ辛子菜を使います。
せっかくなので本来の辛子菜の漬け方もお教えしましょう。手に入ったらお試しください。辛子菜は洗って水気をきり、5cm長さに切ります。保存容器を用意して底には堅い茎部分を、上には柔らかな葉の部分を並べて、塩(辛子菜の重量の5%)をそれぞれにふります。80℃くらいの湯を全面にひたひたの状態まで回しかけ、表面にラップを張って蓋をし、そのまま2時間おきます。少し食べてみて辛みが出ていたら水気をきって使います。今回のように昆布漬けにしたり、ひたしにするのもよいでしょう。
「青菜に塩」とは、元気な者が何かをきっかけにすっかりしょげてしまうさまを言いますが、料理ではこの一塩で余分なものが抜け、本来のおいしさが出てきます。人間も跳ね返り者にはその後の成長を期待して辛(つら、から)い一塩を。そういう自分自身にこそ塩をしろという読者の声が聞こえてきそうです(笑)。今日は“しお”らしく受けとめます。野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「青菜3種の漬けもの」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・水菜と壬生菜は下茹でした後に昆布押しにする。サラダ辛子菜は下茹ですると辛みが薄くなるのでそのまま昆布押しにする。
・昆布押しの昆布は上質なものを使う。青菜に接触する面を裏表に替えれば2度使え、その後も魚の煮つけなどに利用できる。
・昆布は日本酒で湿らせてから使う。乾燥した状態のままでは青菜の水分を吸収し過ぎ、昆布の旨みがしみるのにも時間がかかる。
・「カリフラワーのあんかけ飯蒸し」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・もち米の一部をうるち米に替えて炊飯器で炊く簡易おこわもあるが、本来のおこわのおいしさを味わうにはもち米を蒸すに限る。面倒に感じるかもしれないが、実際は手間はかからないし、それに見合うおいしい仕上がりになる。まとめて作り、小分けして冷凍保存も可能。
・蒸している途中でたすふり水を、酒に塩を混ぜたものに替える。旨みが増し、下味もつき、かけるあんの味も薄味でよくなる。
・寒い時は温かさが何よりのごちそう。蒸したての飯蒸しにあつあつのあんをかけてすぐに供する。
「青菜3種の漬けもの」
【材料(4人分)】・水菜 1束
・壬生菜 1束
・サラダ辛子菜 1パック
・塩 少々
・昆布(上質なもの) 20cm×4枚
・日本酒 少々
・赤唐辛子(種を除いて細い輪切りにする) 適量
・刻み昆布 少々
・揚げ油 適量
【作り方】1.水菜と壬生菜はさっと下茹でして水に放し、冷めたら水気をきって布巾に挟んで水分を取り除く。
2.昆布に日本酒少量をまぶしかけ、15分ほどおいてしんなりさせる。
3.同じ大きさのバットを2枚用意する。バットに昆布を敷いて1の水菜と壬生菜を並べ、薄く塩をふる。サラダ辛子菜は生のまま並べて薄く塩をふる。赤唐辛子をそれぞれにのせて上から昆布をかぶせ、もう1枚のバットをのせる。輪ゴム数本を束ねて、重ねたバットを数箇所留めて重石とし、冷蔵庫で12時間ほど保存する。
4.刻み昆布(なければ白板昆布を刻んで使ってもよい)を160℃の油で揚げて、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
5.昆布の旨みが青菜にしみたら、昆布を外してそれぞれ器に盛り、輪切りにした赤唐辛子と揚げ昆布を添える。
「カリフラワーのあんかけ飯蒸し」
【材料(2人分)】・飯蒸し 1合分
もち米 1合、酒塩(作りやすい分量:昆布出汁25cc、日本酒25cc、塩2g)35~45cc(好みの堅さに応じる)、「
落花生おこわ」参照
・カリフラワー(ロマネスコ、普通のカリフラワー) 各適量
・銀あん 約230cc
出汁200cc、塩0.5〜1g、薄口醤油小さじ1/4、水溶き葛(葛粉1:水2。片栗粉でもよい)30cc
・おろし生姜 適量
【作り方】1.もち米は蒸す1時間以上前にといで、1時間水につけてざるに上げておく。
2.別のざるにガーゼを広げて、その上にもち米を広げる。蒸気が通りやすいように真ん中部分はくぼませておく。
3.蒸気がたった蒸し器に、2のもち米をざるごと入れて中火で蒸す。8分蒸したら一度蒸し器からざるを取り出して、中のもち米をボウルにあける。そこに用意しておいた酒塩を加えて、酒塩が全体に回るようにしゃもじで混ぜる。先のガーゼを敷いたざるにもち米を戻して蒸し器に入れ、再度、7~8分中火で蒸す。
4.カリフラワーはそれぞれ茎側から切り込みを途中まで入れ、手で裂いてから包丁で1.5cm角の小房に分ける。鍋に湯を沸かしカリフラワーを入れて堅めに茹で、水に放さずざるに上げて薄く塩をふる。
5.銀あんを作る。別の鍋に出汁を入れ、火にかけて調味料を加え、沸いたら弱火にする。水溶き葛を加えてよく混ぜ、粉臭さがなくなるまで30秒ほど炊く。
6.蒸したての飯蒸しを椀に盛り、温かいカリフラワーをのせて銀あんをかける。おろし生姜をのせて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。