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【スーパー獣医 野村潤一郎先生の動物エッセイ】野村先生が愛するドーベルマンたち

2022.03.17

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スーパー獣医の動物エッセイ「アニマルQ」 野村先生がさまざまな動物を飼育し、その経験を診察に生かしていることはよく知られています。犬猫のみならず、鳥、爬虫類、両生類、魚類、昆虫まで、長年連れ添ってきた愛する動物たちが大勢いますが、なかでもやはり先生にとって別格ともいえる存在なのが犬。“人犬一体”の魅力を説き、それを自ら実践する野村先生の愛犬、ドーベルマンたちの物語です。一覧はこちら>>

第17回 ドーベルマンズ(前編)


イラスト/コバヤシヨシノリ

文/野村潤一郎〈野村獣医科Vセンター院長〉

ドーベルマン・ピンシェルは今から200年前のドイツで、税務署の集金人であるフリードリッヒ・ルイス・ドーベルマン氏が“立腹した納税者たち”から身を守るため、様々な犬種をかけ合わせて作出した護身犬である。


筋肉質の体軀は俊敏な動作を可能とし、性格は大胆、頭脳は聡明、しかも道で出合う犬には友好的で、小動物を殺す癖もない。そもそも重税に不満を抱く暴徒を鎮圧する際に、体力がなかったり、臆病だったり、機転が利かなかったり、他の犬とのケンカに夢中になったり、猫を追いかけまわしたりしていたら仕事にならない。

世間一般にはドーベルマンは獰猛だという固定観念が根強いが、前述のとおり平常時は知的で洗練された良き伴侶犬であり“好ましくない動物性”はマダムの抱いている小型犬よりも希薄かもしれない。

ただしここが重要なのだが、自分が“尊敬している主人”にのみ忠実で、ダメな飼い主や他人には冷淡なところがある。もちろん愛する“正常な飼い主”に対して、怒りの形相の男が明らかな敵意を示し得物を振りかざした瞬間には、何のためらいもなく迎撃する。この犬種には、いざという時にのみスラリと鞘から滑り出る“刀剣”のごときメリハリと、存在理由に忠実であるが故の怖さがある。

これらの性能は高く評価され、世界中の警察や軍隊で使役犬として認められてきた。しかしながら家庭犬としては決してお勧めできる犬種ではない。犬の特性をすべて10倍にしたようなドーベルマンは飼い主にも10倍の情熱を持つことを強いるのだ。

たとえば一家に1台の自家用車を選ぶ場合、維持しやすく、手間がかからず、万能的に使用できる無難な車種が候補になると思う。何においても凝り性で好事家な私の歴代の愛車は常にランボルギーニだが、あろうことか私はこれを普段の買い物などにも使用している。

超高速に特化したスーパーカーを元々の使用目的から大きく外れた目的で使えば、非常に不便で何かと困り果てることが多いのは想像できると思う。そしてそれらをカバーする知識と技術と情熱がなければ、悲惨な大事故を招くことになる。突出した何かを求めれば相応の努力が要求されるのは、当然の理なのである。これはドーベルマンにも当てはまる。

育てるのも教育するのも暮らすのも、一般的な犬のそれとは別次元の様々な苦行を受け入れなければならない。この犬種は程度の差こそあれ神経質で興奮しやすく、暴走すれば容易に制御を失うし、飼い主が愛と誠に満ちた正義の人でなければ、尊敬しないどころか軽蔑し自律して狂犬になる可能性がある両刃の剣だ。

覚悟を持ち次々と課せられる困難を“最後の別れの瞬間までともに乗り越え続ける”、それができた者だけがこの犬種の素晴らしさを知るのだと思う。数ある“ファッションでは絶対無理な犬種”の最右翼と断言したい。
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