2021年の「三月花形歌舞伎」では『義経千本桜』で『吉野山』と「四の切」で忠信を勤めさせていただきました。
「四の切」の忠信はずっとやりたかったお役。実は祖父(7代目中村芝翫)が亡くなる直前に「国生(橋之助さんの本名)は、四の切が似合うから演れるような役者になってほしい」と父(8代目中村芝翫)に話していたそうです。それが南座で実現できてとても嬉しかったです。
(中村)米吉のお兄さんとの共演でも、“2人で一公演を背負う”という感覚を初めて味わいました。
今回の青山播磨は、自分が演じるとは思ったこともないお役でした。しかし、米吉のお兄さんが「意外と播磨っぽいところが多いと思うから、国生くんが自分を信じて演じれば、僕が支えてあげます」といってくださいました。まるで奥さんのように動いてくださる相手役がいるのは心強いです。
僕の声は播磨の役にふさわしくないかもしれませんが、(18代目中村)勘三郎のおじから「声がない役者はそれ以外で頑張れば成立する」と教わったので、ないものを求めずに頑張ります。
『番町皿屋敷』の青山播磨。©松竹『芋掘長者』は(坂東)三津五郎のおじさまと父が復活させたという縁のある演目です。
新春浅草歌舞伎で巳之助のお兄さんとご一緒したことがありますが、親同士が競演した演目を受け継がせていただけるのはとても光栄なことです。
話も面白くて曲も聴きやすいので、『番町皿屋敷』の後に気持ちよくご覧いただけると思います。
中村橋之助(なかむら・はしのすけ)
1995年、東京都出身。父は8代目中村芝翫。2000年9月歌舞伎座『京鹿子娘道成寺』の所化と『菊晴勢若駒』の春駒の童で、初代中村国生を名乗り、初舞台。2016年10月、11月歌舞伎座『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』の堤軍次ほかで4代目中村橋之助を襲名。2021年の南座『義経千本桜』の『吉野山』と「四の切」で忠信を初役で勤めるなど、立役としての研鑽を積んでいる。
今月の歌舞伎
【歌舞伎座】
三月大歌舞伎
© 松竹『輝虎配膳』 長尾輝虎 中村芝翫~2022年3月28日(22日は休演)
●第一部 11時開演三代猿之助四十八撰の内『新・三国志 関羽篇』
●第二部 14時40分開演一、『天衣紛上野初花 河内山』 二、『芝浜革財布』
●第三部 18時30分開演一、『信州川中島合戦 輝虎配膳』 二、『増補双級巴 石川五右衛門』
主な出演者は尾上菊五郎、片岡仁左衛門、中村時蔵、中村雀右衛門、中村芝翫、片岡孝太郎、松本幸四郎、市川猿之助。
1等席1万6000円ほか
チケットホン松竹:0570(000)489
公演の詳細は歌舞伎公式総合サイトをご参照ください。
歌舞伎美人
https://www.kabuki-bito.jp
【巡業公演】
陽春特別公演2022
中村勘九郎、中村七之助を中心に中村屋一門が毎年行う巡業公演。
2022年3月30日 東京・板橋区立文化会館 大ホールほか4箇所で開催
一、『玉兎』 二、「トーク&ミニ歌舞伎塾」 三、『色彩間苅豆 かさね』
サンライズプロモーション東京:0570(00)3337(平日12時~15時)
※公演の詳細は公式サイトをご参照ください。
陽春特別公演URL:
http://yoshun2022.com 表示価格はすべて税込みです。
撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン ヘア&メイク/Jouer
『家庭画報』2022年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。