プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 葉ごぼうの炒め煮
この連載ではごぼうの料理も数多く紹介してきました。最近では「
ごぼうの旨煮、国師ごぼう」「
たたきごぼう」「
ごぼうの煮しめ」「
ごぼう餅、ごぼうアイスクリーム」などをお教えしましたが、一般的にごぼうといえば細くて長いというイメージがあるのではないでしょうか。
ところが関東と関西とでは「春菊と菊菜」(「
春菊のひたし」)、「小松菜と水菜」(「
小松菜の松の実焼き」、「
若水菜の辛子ひたし」)、「白ねぎと青ねぎ」(「
白髪ねぎと芽ねぎの辛み和え」)と同様に、ごぼうにも違いがあります。
耕土が深く水はけがよい関東では、滝野川ごぼう(たきのがわごぼう。日本各地に広まり様々な品種が生み出された)のような根が細くて長いごぼうが栽培され、耕土が浅い関西では堀川ごぼう(ほりかわごぼう。表面がひび割れて内部に空洞があり直径5〜6cmと太い)のような短いごぼうや、葉を食用にする葉ごぼうが栽培されてきました。
今日は関東の方にはなじみが薄いかもしれない、葉ごぼうを使った料理を紹介します。葉ごぼうは根の部分だけでなく葉や茎も食用にし、大阪を中心とする関西で食べられてきました。産地は「若ごぼう」という呼び名で出荷している大阪府八尾市が有名で、香川県などでも作られています。ハウスものが1月下旬から出回り始め、露地ものの旬は3月〜4月初旬です。
食物繊維(さつまいもの約1.4倍)や鉄分(ほうれん草の約1.6倍)、カルシウムが豊富です。葉ごぼうの葉には、高血圧や動脈硬化などのリスクを軽減する働きがあるとされるルチンが、だったんそばに匹敵するほど含まれています。
鮮度が落ちると葉が黄色っぽくなるので、葉がみずみずしくて鮮緑色のもの、根のあまり太くない、茎が萎れていないものを選びましょう。
葉ごぼうの根・茎・葉は一緒に調理することもできますが、それぞれの特徴を生かして別々に調理することもできます。根は普通のごぼうに比べてやさしい香りで柔らかく、茎の部分はしゃきしゃきとした食感で独特の風味があります。今回の料理では用いませんが、葉も下茹でし冷水に放してあくを抜き、細かく刻んで佃煮や和えものにすると風味豊かでおいしく食べられます。
関東VS.関西、“ごぼう”の“攻防”! 是非、葉ごぼうもお試しください。えっ、面白くな
い? 弘法(こうぼう)も筆の誤り(笑)。野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「葉ごぼうの炒め煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・葉ごぼうは根・茎・葉と部位ごとに分けて下処理する。
・茎は茹でた後、薄皮を除いて用いる。
「葉ごぼうの炒め煮」
【材料(3人分)】・葉ごぼう 1束(200g)
・サラダ油 小さじ1強
・日本酒 大さじ1強
・塩 米2粒分
・みりん 大さじ1と1/2
・濃口醤油 大さじ1強
・一味唐辛子 少々
【作り方】1.葉ごぼうは根・茎・葉に切り分ける。根の部分はたわしで洗ってひげ根を除き、ささがきにして5分ほど水につけ、あくを抜く。葉は佃煮などの別の料理に使う。
2.茎は塩(分量外)もみして、太さによるが1分ほど茹で、冷水に放し水をきる。上下から筋を取る。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」を参照。あくが強い場合は水に5分ほどさらしてから、4cmに切り揃える。
3.フライパンを火にかけサラダ油をひき、根を入れて炒めたら茎も加える。火が通ったら日本酒と塩を加えて炒め、みりんと濃口醤油を加える。調味料を全体にからめるように炒め、汁気がなくなったら一味唐辛子をかけて火からおろす。
4.器に盛って供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗