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甘くて柔らかい春キャベツ。テクニック次第でいろいろな料理に変化します

2022.03.20

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

春キャベツの酢のもの、辛子和え



春キャベツの酢のもの、辛子和え

野菜売り場に、春キャベツが並んでいるのを最近よく見かけます。2月末頃から出回り始めますが、名前に「春」がつくだけあって、暖かくなると甘みが増して、柔らかくおいしくなってきます。キャベツの種類については「キャベツの味噌汁、辛子和え」ですでにお話ししましたね。


春キャベツは秋に種をまき、翌春に収穫されます。冬キャベツ(寒玉キャベツ)に比べると縦長の球形で、内部は黄緑色をしており、巻きがゆるくふっくらとしています。春キャベツと寒玉キャベツの糖度はあまり変わりませんが、水分量は春キャベツのほうが圧倒的に多く、葉も柔らかで生食に適しています。

春キャベツの酢のもの、辛子和え

キャベツは江戸時代にオランダ人によって日本に伝来しましたが、食用として広まることはなく観賞用に一部で栽培され、葉牡丹が生まれました。野菜としては明治4年(1872)に札幌で試験栽培されたのが始まりで、その後、日本中に広まり現在に至ります。

家庭では冷蔵庫の常備野菜となったキャベツですが、その料理といえばせん切りキャベツ、コールスロー、ロールキャベツ、回鍋肉、野菜炒め……、と日本料理が見当たりません。洋野菜だから、庶民的なイメージがあり高級日本料理店では使いにくい、日本料理の技法とマッチしない……という理由が挙げられそうですが、あまり説得力がありませんね。

一般的にイメージされている日本料理ではなくても、日本料理のエッセンスや技法を活用することはできます。この連載では、キャベツを使った野菜料理も、今後どんどん紹介していきます。

1983年頃に大流行したキャベツ人形をご存じでしょうか? 独特の表情、顔や髪型、肌や目の色、服装の違いで6000種類以上もあったそうです。人形を購入すると誕生証明書と戸籍登録申請書が入っていて、申請書をおもちゃメーカーに送ると戸籍登録書が届きました。1年後にはバースデーカードも送られてきました。破損した場合はベビーランドのホスピタルに送ればお医者さんが治してくれるという、至れり尽くせりの斬新なアイデアで大流行しました。キャベツ料理もアイデアと工夫次第なのでしょう。

キャベツ人形が大人気になった理由は「世界にたった一つの私だけのお人形」というキャッチフレーズでした。であれば「世界にたったひとつの私の家だけのキャベツ料理」を一緒に考えてみませんか。最近話題になった無限キャベツではありませんが、大ヒットするかもしれませんよ(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。



ちょっとしたコツ


・「春キャベツの酢のもの」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

キャベツは食べる直前に酢と油で和える。マリネのように漬け込むやり方は作り置きには向いているが、キャベツの甘みと旨みが溶け出してしまう。

・ドレッシングは主に塩分、油分、酸味で構成されているが、そこに旨みや甘みが加わると、少ない油でもおいしくなる。また、和える素材に酸味があるものが加わると、酢も少なくてよく、軽やかな仕上がりになる。

りんごの酸味と甘み、くるみの油分と旨み、昆布茶の旨みを加える。はっさくを入れることで酸味がメリハリのあるものになる。

・好みで粉山椒などの刺激と風味を加えてもよい。

・「春キャベツの辛子和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘味 ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・春先に出てくる新ものの切り干し大根は、臭みも少なく甘くてみずみずしい。味が抜けないように水につけ過ぎない。

・切り干し大根の風味に負けないように、粒マスタードにパンチのある黒酢を加えて味を引き締める

・油揚げの油分がこくを出し、揚げ昆布が旨みを増す。






春キャベツの酢のもの、辛子和え

「春キャベツの酢のもの」(左)



【材料(2人分)】
・春キャベツ 60g

・りんご(酸味のあるもの) 10g

・はっさく 適量

・くるみ(ローストして刻む) 適量

・塩 米2粒分

・昆布茶 少々

・オリーブ油 小さじ2

・白ワインビネガー 小さじ2

【作り方】
1.キャベツは芯を切り取り、2〜3mm幅のせん切りにする。ボウルに入れ塩を加えて軽く混ぜ、5分ほどおいて出てきた水分をクッキングペーパーにはさんで除く。

2.りんごは、皮付きのまま2〜3mm幅のせん切りにする。はっさくは、皮と薄皮をむいてほぐす。

3.ボウルにキャベツ、りんご、はっさく、くるみを入れて混ぜ、昆布茶を好みの量ふりかける。オリーブ油と白ワインビネガーを加えて和え、器に盛る。

「春キャベツの辛子和え」(右)



【材料(2人分)】
・春キャベツ 50g

・塩 少々

・切り干し大根(新もの) 10g

・油揚げ 1/2枚

・高菜の粒マスタード(一般的な粒マスタードでもよい) 小さじ2

・黒酢 小さじ2

・刻み昆布(なければ白板昆布を刻んでもよい) 適量

・揚げ油 適量

【作り方】
1.キャベツは芯を切り取り、2〜3mm幅のせん切りにする。ボウルに入れキャベツの重量の1%の塩を加えて軽く混ぜ、15分ほどおいて出てきた水分をクッキングペーパーにはさんで除く。

2.ボウルに水をたっぷり入れ、切り干し大根を入れてほぐし、付着したごみなどを落とす。下に沈んだごみが混ざらないように、両手で少しずつすくってざるに上げる。ボウルに再度、たっぷりの水を入れて切り干し大根を入れ、3〜5分ほどつけてざるに上げる。何回かに分けて両手でギュッと握って水気をしっかり絞っておく(10gの切り干し大根はもどすと50gほどになる)。食べやすい長さに切る。

3.油揚げは予熱したオーブントースターでこんがり焼いて、3cm長さ×5mm幅に切る。

4.刻み昆布を160℃の油で揚げてクッキングペーパーに広げ、余分な油を除く。

5.ボウルにキャベツと切り干し大根、油揚げを入れてよく混ぜる。高菜の粒マスタードと黒酢を加えて和える。器に盛って揚げ昆布を添えて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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