うどと春菜(しゅんさい)の酢のもの
うどは特有の香りとほのかな苦み、しゃきしゃきとした食感が持ち味です。全体が白い「軟化うど(軟白うどとも呼ぶ)」と緑色の「山うど」があり、軟化うどは地下で栽培するなどして、日光を当てずに全体を白く育てます。山うどは、本来は天然ものを指しますが、収穫量が少なくほとんど出回っていません。軟化うどに出荷前に光を当て、葉先部分を緑色にしたものが山うどと呼ばれて出回っています。緑化した山うどは軟化うどに比べて香りと風味が強く、苦みやえぐみも多めです。
漢字では「独活」と書きます。風もないのにひとりでゆらゆら動いているように見えることから「独活」という字が当てられたとのこと。
春から初夏が旬で、一般には3月~5月頃に出回ります。茎が太めで穂先がしおれておらず、張りのあるものを選びます。全体的にうぶ毛が密生しているものが新鮮で、茎が変色しているものは鮮度が落ちているので避けます。
うどは穂先から茎まですべて食べられ、太い茎、脇の枝のような部分、穂先に切り分けて使います。若葉や穂先は天ぷらに、茎は厚めに皮をむいて酢のものや和えもの、煮ものに、皮はきんぴらにと無駄がありません。今日はその切り分け方もお教えします。
よくあく抜きが必要だといわれますが、軟化うどはえぐみや苦みが弱いので、風味を大切にしたいものです。すぐに使うのであれば、切った後、さっと水で洗うだけで十分です。
「うどの大木」ということわざが有名ですね。うどは成長すると2mにもなり、茎の中に空洞ができ、堅くなって食用に適さなくなります。うどは木でなく多年草のため、大きくなり堅くなっても木材としては使えないことから、「図体ばかり大きくても中身が空っぽ」「大きくても役に立たない」の例えになったとのこと。
私のような古い人間は、気が回らず動きが鈍いスタッフを見ると、つい、「このうどの大木が!」と怒鳴りそうになります。しかし、そう怒鳴ったところで彼らにはその意味が伝わらないでしょうし、パワハラにもなりそうです。“う〜ど”うしよう(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「うどと春菜の酢のもの」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・うどは風味を大切にし、食べる直前に切りさっと洗って使う。
・フルーツトマトの旨み成分グルタミン酸を、同じ旨み成分をもつ醤油、昆布で強化して、うどと春菜を食べる。
・うど、長いも、春かぶの食感の違いと、3つが合わさった際の苦み、粘り、甘みが織りなすおいしさを楽しむ。
・うどは太い茎、茎をむいた皮、枝、穂先に分け、下処理して料理する。皮、枝、穂先の料理は4月に紹介予定。
「うどと春菜の酢のもの」
【材料(4人分)】・うど 1本
・長いも 4cm
・春かぶ(大) 1〜2個
・フルーツトマト 2個
・和え酢 適量
作りやすい分量:オリーブ油大さじ1、白ワインビネガー大さじ1、塩1g、濃口醤油適量、昆布茶適量
・芽じそ(青じそを刻んだものでもよい) 少々
・刻み昆布(なければ白板昆布を刻んで使ってもよい) 適量
・揚げ油 適量
・フルーツトマトのドライトマト(小さめに刻む) 適量
【作り方】1.うどは茎の部分を使う。4cm長さに切り、皮を厚めにむく。2〜3mm厚さで縦にスライスし、水でさっと洗いクッキングペーパーで水気を除く。
2.長いもは4cm長さに切り、皮をむく。2cm幅×2〜3mm厚さで縦にスライスし、水でぬめりを洗い流し、クッキングペーパーで水気を除く。
3.春かぶは葉茎を切り落として皮をむく。2cm幅×2〜3mm厚さで縦にスライスする。
4.フルーツトマトは湯むきして、3mm厚さで縦にスライスする。
5.刻み昆布を160℃の油で揚げて、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
6.和え酢を作る。ボウルに塩と昆布茶、濃口醤油、白ワインビネガーを入れて泡立て器でよく混ぜる。オリーブ油を少量ずつたらしながら泡立て器で混ぜて乳化させる。
7.器に長いも、春かぶ、うど、フルーツトマトの順に3回くり返して並べる。和え酢をところどころにたらし、ドライトマト、芽じそ、揚げた刻み昆布を散らして供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。