漢方の知恵と養生ですこやかに 第4回(01) 4月5日は二十四節気の「清明」。万物が清らかに明るく輝き、生き生きと活動を始める春本番です。一方で、体がだるく、朝すっきりと起きられなかったり、日中、眠気に襲われるのもこの頃。春の気が私たちの体に及ぼす影響と、食養生による改善法を教えていただきます。
前回の記事はこちら>> 「気血」が上昇し、頭がぼんやりしてくる頃
春の陽気がもたらす倦怠感。体はだるく、のぼせや目の充血も
〔解説してくださるかた〕横浜薬科大学特任教授・薬学博士 漢方平和堂薬局店主 根本幸夫先生1947年生まれ。69年東京理科大学薬学部と東洋鍼灸専門学校を同時に卒業後、さらに鍼灸と中国医学を学ぶ。「普段の生活こそが治療の場」をモットーに、漢方平和堂薬局(東京都大田区)では多くの人々の健康相談にのり、養生法をベースに漢方薬処方を行っている。横浜薬科大学特任教授を2022年3月に退官。役職多数、著書多数。「気」と「血(けつ)」が上昇して頭のコントロールが利かなくなる
春眠暁を覚えず――。中国唐代の詩人・孟浩然(もうこうねん)の漢詩にある有名な一句です。「春の眠りは心地よく、夜が明けたのも知らず、つい寝過ごしてしまう」といった意味ですが、漢方医学的には朝なかなか起きられない状態を疲労感、倦怠感ととらえることができます。
春は陽気が上へ上へと昇る時期です。漢方理論における「気」とは広い意味で生命エネルギー全体を意味し、「陽気」は特に機能を活性化させるための活動エネルギーを指す言葉と考えてよいでしょう。
4月の和風月名・卯月の「卯」は大地を草が覆う様子を表しています。植物の陽気が上昇して一斉に芽を出すように、人の陽気も上がっていきます。そして陽気と一緒に「血」(血流)も上昇して首から上に集まるため、気血のバランスが崩れ、頭のコントロールが利かなくなり、ぼーっとしてのぼせが生じたりだるさを感じるのです。
さらに夜遅い時間の食事や消化の悪い食べ物などによる胃腸への負担も十分な眠りを妨げ、寝起きの悪さや倦怠感を増す要因となります。