藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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みずみずしい葉色を背景にするとスズランの白さが際立ちます。これは葉と花茎を切り分け、花を中心に集めて束ねたブーケ。スズランの清楚なベル型の花はかわいらしさの象徴
毎年1月末になると「JAながのみゆき」からスズランが届くのを心待ちにしています。
「JAながのみゆき」は長野県の最北端、奥信濃とよばれるエリアにあり、「スズラン研究会」があるほどスズランの栽培に力を注いでいます。2月の初めから出荷が始まり、ピークを迎えるのが4月の上旬。この期間、クオリティの高いスズランを使ったブーケやアレンジを制作できるのは、私自身の楽しみでもあります。
スズランの魅力はなんといってもふっくらしたベル型の、小さな花の愛らしさ。そして香水の原料にもなるほど芳しい香りです。
香水でよく「ミュゲ」と名づけられたものがありますが、ミュゲとはフランス語でスズランの意味です。さらに贈り花を制作するうえで、とても魅力的なのがみずみずしい緑色の大きな葉です。この葉があってこそスズランの白い花が際立つので、贈り花を作る際には必ず葉をたっぷり加えます。
「JAながのみゆき」のスズランは、根付きの状態で出荷されるため鮮度が抜群によく、皆さまに届いたあとも長く花を楽しんでいただけます。その特徴を最大限に生かしたく、根が付いたまま束ねてブーケにすることもあります。「群生するスズランの中から摘んできました」というナチュラルな雰囲気を感じていただけたらいいなと思います。
根付きで届いたスズランをそのままガラスの花器に。花茎も葉もピンと立ってみずみずしい! 可憐な花ですが、たくさん出ている根には植物のたのもしさを感じます。スズランは5月まで出回りますが、とくに5月1日の“スズランの日”の前にはもう一度出荷のピークがきます。フランスではこの日に愛する人やお世話になった方へスズランを贈る習慣が古くからあります。
この習慣が日本でも広く普及すると素敵だなと思い、一昨年(2020年)、去年(2021年)とたくさんのスズランを取り寄せ、スズランだけのシンプルなブーケを制作してSNSに載せたところ、大好評でした。私だけでなく、スズランを好きな方がたくさんいらっしゃることを実感しました。今年の5月1日には、スズランの贈り花をぜひ楽しんでみてください。
藤野幸信/Yukinobu Fujino
広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書
『大切な人への贈り花』も好評。
https://www.fleurs-tremolo.com 『人気フローリストが教える フラワーアレンジのデザイン&ヒント78 大切な人への贈り花』
誕生日、結婚記念日、ウエディングなど、78例のブーケ&アレンジメントを色別に掲載したオールカラーの大判の単行本。色別花図鑑コラムや全国の生産者データなどお役立ち情報やインデックスも充実。大切な人へ花を贈る際のヒントが満載です。