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志野流香道、令和の大献香式に寄せて。天下の名香「蘭奢待(らんじゃたい)」を聞く

2022.04.20

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志野流香道、令和の大献香式に寄せて 天下の名香「蘭奢待」を聞く 第1回(全3回) 室町幕府足利八代将軍義政公に仕えた志野宗信(しのそうしん)を流祖とし炷香(ちゅうこう)の作法や精神を20代にわたり今に受け継ぐ、志野流香道。今年5月、日本と世界の安寧を祈るため、東京・芝の増上寺にて献香式を執りおこないます。そこで炷(た)かれるのが、志野流に初代より“家木(かぼく)”として伝わる天下の名香“蘭奢待”。この類い稀なる機会に今改めて“香”という文化の魅力について見つめ直します。
一子相伝の口伝で継承された“名香聞作法”
蘭奢待(らんじゃたい)

いにしえより「天下の名香」の名をほしいままにしてきた香木。黄熟香(おうじゅくこう)という沈香(じんこう)の一種で、「蘭奢待」の名は漢字の中に「東大寺」の三文字を隠した雅名。正倉院宝物として知られ、室町時代には足利義政が、安土桃山時代には織田信長が、また近代には明治天皇がその一部を截(き)り取っている。長さ156センチ、重さ11.6キログラム。

一子相伝の口伝で継承された“名香聞作法”


一子相伝の口伝で継承された“名香聞作法”


香室「松隠軒」に同座する蜂谷宗玄氏と家元後嗣の宗苾氏。5月の献香式を控えて多忙の日々を送るお二人が、心静かに香と向かい合う時間。宗苾氏の香の手前を家元の宗玄氏が見守る。

香木の香りを楽しみながら、深い精神世界へといざなう香道。香道では香りを「かぐ」ではなく「聞く」と表現します。それは「およそ目に見えぬ、香りというものに集中し、心を澄ませる」ことだと、二十世幽光斎宗玄(ゆうこうさいそうげん)宗匠は語ります。

自然より生まれた香木は、一つ一つ微妙に異なる香りを持ちます。その多種多様な香りを聞き分けること、あるいは一つの香木の中に存在する複雑な香りを奥の奥まで追求することによって、香を聞く人の内側に新しい感受性を育む――それが香道という、世界的にみても類い稀な香りの芸道なのです。

その伝統は父子相伝というかたちによって20代にわたり連綿と守られ続け、今また家元後嗣の一枝軒宗苾(いっしけんそうひつ)若宗匠へと受け継がれていきます。

一子相伝の口伝で継承された“名香聞作法”

志野流好みの千鳥蒔絵の香盆の上に、青磁の聞香炉、重香合、火道具建が載る。名香を炷く際は、青磁の香炉を使用し、香木を扱うときにも通常の「七つ道具」は使わずに象牙・南鐐製の火箸、黒檀製の木香箸の2種のみでの手前となるという。

流祖・志野宗信没後500年を来年に控え、このたび「蘭奢待」を用いた献香式が執りおこなわれます。

足利義政が截り取り、さらにその一部を志野流の祖・志野宗信が賜ったという、正倉院宝物の香木。室町時代から大切に伝わってきた名香中の名香を炷くことは、「この身を切る思い」と宗玄宗匠が吐露されるほど稀有なことです。

激動の時代を迎えた今、日本から世界に向けて散華のように芳香を降り注がせたいという願いから、前代未聞の献香式がおこなわれるのは5月28日。人々の安寧と幸せを祈る特別な儀式です。

増上寺献香式および 特別展「香道の世界」展

志野宗信没後500年を来年に控え、5月28日に増上寺にて献香式が執り行われます。そこで炷かれるのが、家木として守り継がれてきた蘭奢待。その前後2か月にわたり、志野流に伝わる香道具や香木の展示、聞香体験会、講演会を開催。先人が遺した“香りの逸品”に出合えます。詳細、お申し込みは下記、志野流香道松隠会ウェブサイトまで。



増上寺大殿本堂。撮影/平 剛 増上寺所蔵

展覧会会期:2022年4月16日〜6月26日
場所:大本山増上寺 宝物展示室(大殿地下1階)
東京都港区芝公園4-7-35
TEL:03(3432)1431
開館時間:平日11時〜15時 土曜・日曜・祝日10時〜16時
休館日:火曜(5月3日、10日は開館)
入場料:一般700円

●志野流香道松隠軒(しのりゅうこうどうしょういんけん)
志野流香道ウェブサイト:https://www.shinoryu.jp
問い合わせ先Email:info@shinoryu.jp

【参加者募集】家庭画報 特別聞香会のご案内


増上寺での蘭奢待献香式に参列、聞香を体験し、「香道の世界」展を解説付きで鑑賞できる特別聞香会を本誌読者10名限定で開催します。(※当イベントは蘭奢待献香式に参列いただきますが、蘭奢待を聞くことはできません。ご了承ください)

詳細・応募はこちら>>





〔特集〕天下の名香「蘭奢待」を聞く



01 天下の名香「蘭奢待」を聞く





この特集の掲載号
『家庭画報』2022年5月号掲載



『家庭画報』2022年5月号掲載


撮影/小林庸浩 取材・文/福井洋子
『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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