一方的な金銭援助はどちらのためにもならない
結婚した息子や娘の婚家と張り合って、散財してしまう親も多いものです。孫のランドセルをどっちが買うかで競うぐらいならまだほほえましいのですが、子どもが家を建てる際、あちらのご両親は頭金を出すと聞いて、つい多額の援助をしてしまう人もいます。
地方に講演に行くと、地元では子どもの結婚資金のうち、このくらいは親が出すのが相場だから、うちも出すという家庭が多く、驚かされることもあります。「お隣と同額を出さなければならない理由は何もありませんよ」と、いくらアドバイスしても、一向に聞く耳を持ってくれません。
数年前、教育資金贈与の非課税制度が登場し、予想以上に利用件数が伸びて話題になりました。子や孫に教育資金援助を行う場合、信託銀行の専用口座に一括で上限1500万円を預けて、目的に合った使い方をすれば贈与税がかからない制度です。
本来、教育資金という目的であれば、高校や大学に入学する際に学費を援助しても無税ですが、なぜそんなに贈与する人が多いのか不思議です。貯金に余裕があると、制度を利用したくなるのかもしれませんが、子どもから頼まれたわけでもないのに、大金を贈与しようという親の意識に疑問を感じています。
もちろん、うちには潤沢な資産があるから余計なお世話だという人もいるでしょう。ただ、自分の老後はお金の心配がないとしても、親が結婚・独立した子どもに対して一方的に金銭的な援助を行うことは、やはり問題といわざるをえません。
金銭的援助を惜しまないことは一見、親子の仲がよく良好な関係に見えますが、親がいつまでも子どもの世話を焼いていると、子どもは経済的にも精神的にも自立できず、何でも親に頼ってしまいます。親を亡くした後のダメージは計り知れません。
それに、子や孫にたくさん援助したからといって、将来、自分たちが頼りたいと思っても、面倒を見てもらえる保証は何もありません。
以前、親に買ってもらったマンションで新婚生活をしている息子さんに、「ここまでしてもらったら、将来お母さんの介護はしっかりしなくてはね」といったところ、「なんで僕が面倒見なきゃいけないんですか」といい返されて驚いたことがあります。
それ以来、そういう人に会うたびに同じことを尋ねてみるのですが、「私が介護しなくても施設ならいくらでもあるでしょう」という答えをよく聞きます。むしろ親が過分にお金を援助してきた子どもほど、いずれ自分が親を介護するという意識が低く、親が子どもにお金の苦労をさせないと、かえって親不幸を助長するのではないかと思うほどです。