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新体験のおいしさ! 出汁と西京味噌で炊き上げた、優しい味のロールキャベツです

2022.04.15

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

春キャベツのロールキャベツ


春キャベツのロールキャベツ

春キャベツが旬です。久しぶりにロールキャベツを手作りしてみませんか。ひき肉に野菜を合わせた具材を、キャベツの葉で包んで炊いたロールキャベツは、洋食屋の定番メニューとしてだけでなく、家庭料理でもおなじみですね。ベーコンで巻いたり、おでんに入れたりもしますが、包んだキャベツをかんぴょうで結ぶやり方は日本で考案されました。

ロールキャベツは日本だけでなく世界中で食べられています。アジアの最西部、現在のトルコ共和国の領土であるアナトリア半島で1世紀頃から食べられていた、ブドウの葉で肉や米などを包んでスープで煮込んだ「ドルマ」という料理が発祥だとされます。


その後、ドルマはロシアやヨーロッパ、中央アジア、アラブ世界へと伝わり、その過程でヨーロッパで古くから栽培されていたキャベツが使われるようになったようです。ロールキャベツは和製英語で、英語圏ではキャベツロール(cabbage roll)です。

一般的なロールキャベツはひき肉で作った肉だねを包み、ブイヨンやトマト、クリームソースなどで煮込みますが、今日は野菜だけで作ります。野菜だけといっても、ご飯や豆腐などを包むというよくあるやり方ではなく、春キャベツを堪能するためのロールキャベツです。

新玉ねぎの焦がし焼き」でお話ししましたように、野菜を「上手に焦がす」ことで味に深みが出ます。春キャベツは「白菜焦がし焼き、姿煮」の白菜のように葉をパリパリに焼くことが難しいので、カーボロネロという葉が細長くて厚みのないキャベツをパリパリに焼いて添えます。

春キャベツのロールキャベツアブラナ科のケールの仲間、カーボロネロ。

カーボロネロはイタリアのトスカーナ地方原産のキャベツで、葉が濃い暗緑色をしており、日本では黒キャベツと呼ばれています。一般的なキャベツと違って結球せず、葉の真ん中に太い葉脈があり、そこから細長い縮れた葉を広げて成長します。11月~4月頃まで収穫されます。繊維が堅いので、生食よりも煮込み料理や炒めものなどの熱を加える料理に向き、焦がし焼きに最適です。

日常的に料理をされる方にも、手間がかかるという先入観から敬遠されがちなロールキャベツ。今回お教えする方法なら葉の下茹でやかんぴょうで巻いたり、楊枝で留める手間もなく簡単にできます。これまでのロールキャベツの常識が“キャ〜〜ッ、別”次元へ(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「春キャベツのロールキャベツ」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

春キャベツは、甘みと風味が抜けないように、茹でずに蒸す。電子レンジで加熱してもよいが、蒸した場合と比べると、みずみずしさがなくなり色が悪くなる。

・生麩は、200℃くらいの高温で一気に表面だけを揚げる。

・ロールキャベツがきっちり入るサイズの鍋を選ぶ。キャベツの葉の巻き終わり部分を下にして鍋に詰める

・最初は調味料を加えた出汁で炊いて下味をつけ、途中で白味噌を加える

煮汁が沸いたら、生麩が膨張しないように弱火で炊く







「春キャベツのロールキャベツ」


春キャベツのロールキャベツ

【材料(2人分)】
・春キャベツ(外側の大きな葉) 4〜5枚(80g)

・生麩(縦2cm×横1cm×6cm長さ) 2本

・揚げ油 適量

・生姜(せん切りにする) 5g

・出汁 500cc

・塩 1.5g

・薄口醤油 小さじ1

・西京味噌 100g

・カーボロネロの葉 2枚

・オリーブ油 適量

・かぼちゃの種(ローストした市販品) 適量

【作り方】
1.春キャベツの大きな外葉は、芯の分厚い部分をそぎ取って葉の部分と厚みをそろえる。そぎ取った芯部分は細めのせん切りにする。

2.春キャベツの葉を耐熱皿に入れ、蒸気の立った蒸し器に入れて3分蒸す。火が通ったらざるに移してそのまま冷ます。

3.生麩を揚げる。フライパンに揚げ油を入れて200℃に熱する。生麩を油に入れて表面だけを一気にきつね色に揚げる。全面が同じ状態に揚がるように、生麩を油の中で返しながら揚げる。「生麩のみたらし」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。揚がった生麩を1cm厚さに切る。

4.カーボロネロにオリーブ油を適量回しかけ、200〜220℃に予熱したオーブンに入れる。5〜7分焼いて、葉がパリパリになったらオーブンから出す。油で揚げる場合は、160℃弱に熱した揚げ油にカーボロネロを入れて、途中で裏返して泡がほとんど出なくなるまで揚げる。パリパリになったらクッキングペーパーに広げて余分な油を除く。

5.まな板の上に春キャベツの葉を広げる。手前に生麩と芯のせん切り、生姜のせん切りをのせてひと巻する。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。両端を内側に折り込んでくるくると巻く。

6.5の春キャベツ全部が鍋底に並ぶ、ぴったりのサイズの鍋を選ぶ。巻き終わり部分を下にして鍋にキャベツを並べ入れる。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。

7.6に出汁を注いで火にかけ西京味噌以外の調味料を加える。沸いたら弱火にして3分ほど炊く。春キャベツを落とし蓋などで押さえて、煮汁のみをボウルに移し西京味噌を入れて溶かしたら元の鍋に戻す。火にかけ沸いたら弱火にし1〜2分炊いて火からおろし、20分以上おいて味を含ませる。温め直して半分に切り、器に盛って煮汁を少量注ぐ。適宜切ったカーボロネロをのせ、かぼちゃの種を散らして供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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