「ジュエリーの真髄」を知る 第2回(全14回) 美術館や博物館で観るような歴史的な芸術品から、日々を彩る日常使いの輝きまで……。美しいジュエリーには、夢や希望を与え、人々の心を潤す圧倒的な力があります。学び、愛で、そして楽しむ。ジュエリーの真髄を知れば、私たちの人生はもっと心豊かなものになることでしょう。まずはアルビオンアートが集めた名品コレクションからお目にかけます。
前回の記事はこちら>> アルビオンアート ── 王侯貴族とジュエリー
プロイセン王国ホーエンツォレルン家 ピンクトパーズ ダイヤモンド パリュール
王室の壮麗さの典型である19世紀初期のパリュール。プロシアとスウェーデン、デンマークの3人の王妃及び、オランダ、シャウムブルク=リッペ、プロシアの4人のプリンセスたちという7世代によって着用されてきた。(1810年頃、ピンクトパーズ、ダイヤモンド、ゴールド)/個人蔵監修・文/山口 遼(宝石史研究家)ここに載せるのは、基本的に王侯貴族しか作らない、使わないとされるジュエリー。ピンクトパーズのパリュールと、ダイヤモンドのティアラである。
ピンクトパーズを用いた箱に入ったジュエリーは、同じ宝石、あるいは同じようなデザインのものを数点一緒に作った作品で、日本ならセットなどと呼ぶが、正式にはパリュールというフランス語を用いる。こうしたパリュールは、3点以下の場合にはドゥミパリュールと呼ぶのが普通である。
これはネックレス、ブローチ、イヤリング、ティアラ、そして大きなブレスレットの5点からなり、すべて見事な色合いのトパーズとダイヤモンドで作られている。ドイツ系の貴族伝来のもので、オリジナルの箱ごと残るのは極めて稀である。
プリンセス・シャウムブルク=リッペ・ルイーセの着用画。このパリュールをすべて、一度に着用した場合には、その美しさと見事さで他を圧したものと思える。正装の王侯貴族しか、それも正式の場にしか着用しないジュエリーが、このように完全な形で残っていることに価値がある。
ティアラというジュエリーも誤解されやすい。髪の生え際から上に立ち上がって着用されるために、非常に目立つジュエリーだ。
ベル・エポック アンデス伯爵夫人旧蔵 ダイヤモンドのティアラ
渦巻くフェストゥーン(花綱飾り)が印象的なティアラ。アンデス伯爵がスペイン貴族の最高位の称号、大公爵を得たことにより、ヨーロッパ屈指の豪華絢爛な宮廷セレモニーで着用したとされる。(1906年以降、ダイヤモンド、プラチナ)/アルビオンアート・コレクション上写真の花綱飾りを並べたダイヤモンドだけを用いたティアラは、スペインの貴族伝来のもので、高さがありシンプルな作りながら、威圧感がある。このティアラは珍しくプラチナ製で、初期の頃のプラチナ技術の見事さを示した作りのものである。
ティアラを着用したアンデス伯爵夫人。ティアラもまた王侯貴族だけが正装の場合にのみ用いるもので、王侯貴族が存在しない国の宝石商には作れないし、ほとんど存在しない。
「特別展 宝石 地球がうみだすキセキ」で至高の輝きを間近に
現在開催中の「特別展 宝石 地球がうみだすキセキ」では、アルビオンアートのジュエリーコレクション約60点が展示されています。貴重なミュージアムピースの圧倒的な煌めきを間近に感じられる、またとない機会です。 日程:~2022年6月19日(日) 場所:国立科学博物館 東京都台東区上野公園7-20 時間:9時~17時(入場は16時30分まで) 休館日:月曜(祝日の場合は翌火曜休館。ただし、5月2日、6月13日は開館) 入場料:2000円(一般・大学生) 600円(小・中・高校生) お問い合わせ:TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル) URL:
https://www.kahaku.go.jp/
左『指輪が語る宝石歴史図鑑』(3080円) 右『決定版 アンカットダイヤモンド』(4400円)/ともに世界文化社刊 この特別展で展示されているダイヤモンドの原石や、指輪についてまとめた、諏訪恭一氏の本が、絶賛発売中です。
撮影/栗本 光
『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。