根三つ葉のいもおろし和え、根の揚げ出し
日本料理に欠かせない香味野菜である三つ葉は、セリ科ミツバ属の多年草で、数少ない日本原産の野菜です。名前のとおり、葉柄の先に3枚の葉がついています。栽培方法の違いで糸三つ葉、切り三つ葉、根三つ葉の3種に分けることができます。
糸三つ葉は一般にスーパーマーケットなどで見かけるもので、年中、出回っています。葉柄が全体的に青いので青三つ葉ともいい、露地栽培や水耕栽培で作り、水耕栽培のものはスポンジ状の床ごと出荷されています。
切り三つ葉はハウスなどで根株を日光に当てずに軟白栽培したもので、収穫時に根元で切られ、茎から上の部分を束ねて出荷されます。茎が白く柔らかで白三つ葉ともいいます。12月〜2月が旬で、主に関東を中心に出回り、関西ではほとんど見かけません。
根三つ葉。根三つ葉は細いごぼうのような根がついたまま出荷されます。一般的な糸みつばに比べて茎が白くて太く、3月〜4月頃が旬です。6月頃に種をまき、冬に地上の葉が枯れると根元に土寄せして、遮光した状態で軟白栽培します。伸びてくる新芽をビニールで覆い、寒さから守って春に収穫します。根三つ葉は香味野菜的な使い方よりも、三つ葉そのものを味わうひたしや和えもののような料理が向いており、根もごぼうと同じように食べられます。
三つ葉は鮮やかな緑色で香りが強く、葉茎に張りがあってみずみずしいものを選びます。鮮度が落ちると葉が黄色がかり、茎が半透明になります。切り三つ葉と根三つ葉は、白い茎につやがあるものがよいでしょう。
今が旬の根三つ葉を使った料理を紹介します。いもおろし和えと根の揚げ出しで、両方に春大根のおろしを使っています。大根おろしにすりおろした大和いもを合わせるとバサつかず、適度な粘りと旨みが加わり、春の和えものにぴったりです。葉をむしった木の芽を加えた木の芽おろしは、風味がよく春ならではの美味。木の芽の代わりに、根三つ葉の小口切りを混ぜたものでもよいでしょう。
今だけしか食べられない根三つ葉、ぜひ召し上がってみてください。春の贅沢です。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「根三つ葉のいもおろし和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・根三つ葉はさっと茹でて食感を生かす。水にさらし過ぎると風味が抜けるので注意。
・美味出汁で下洗いして水っぽさを除いた後、再度、美味出汁で和えて下味をつける。
・大根おろしは時間がたつとにおいが出る。すりおろした大和いもと混ぜる直前にすりおろす。
・揚げそばの実をかけることで、食感と油分が加わり旨みが増し、アクセントになる。
・「根三つ葉の根の揚げ出し」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・供する直前におろしたての大根に木の芽の葉を混ぜる。
・根の奥に泥が入り込んでいる場合がある。歯ブラシや楊枝を使って泥を洗い落とす。
・天ぷらの衣をつけて揚げ油の中に入れたら、箸でつかんで小刻みに振って余分な衣を散らす。天ぷらと素揚げの間の状態でカリッと揚げる。
「根三つ葉のいもおろし和え」(左)
【材料(2〜3人分)】・根三つ葉 1束
・春大根(すりおろして絞る) 60g
・大和いも(すりおろす) 80g
・そばの実 適量
・揚げ油 適量
・美味出汁 適量
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合
・わさび(市販品のチューブ入りわさびでもよい) 適量
【作り方】1.根三つ葉は根の部分を切り離す。根は「根三つ葉の根の揚げ出し」に用いる。たっぷりの湯でさっと茹でて冷水に放す。冷めたらざるに上げて水気をきり、2.5cm長さに切る。
2.そばの実は160℃の油で揚げ、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
3.春大根をすりおろしてクッキングペーパーに包んで汁気を絞り、ボウルに入れる。すりおろした大和いもを合わせ、美味出汁大さじ2とわさび適量を加えて混ぜる。
4.根三つ葉を別のボウルに入れて美味出汁をまぶして洗い、ざるに上げて汁気をきる。ボウルに戻して、再度、美味出汁で洗い、ざるに上げたら3の大和いもおろしのボウルに移して和える。
5.器に盛って揚げそばの実を散らして供する。
「根三つ葉の根の揚げ出し」(右)
【材料(2〜3人分)】・根三つ葉の根部分 1束分
・天ぷら衣
薄力粉100g、冷水100cc、卵黄1個
・薄力粉 適量
・揚げ油 適量
・美味出汁 適量
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合
・春大根 適量
・木の芽 少々
【作り方】1.根三つ葉は根の奥に泥が入り込んでいる場合があるので、歯ブラシや楊枝を使って泥を洗い落とし、根の部分を切り離す。クッキングペーパーではさんで水気を除く。
2.天ぷら衣を作る。ボウルに入れた冷水に卵黄を加え、泡立て器でときほぐす。そこに薄力粉を加えて粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。ベジタリアンは卵を用いなくてもよい。
3.春大根をすりおろしてクッキングペーパーに包んで汁気を絞り、ボウルに入れる。枝を外して葉のみにした木の芽を加えて混ぜ、木の芽おろしを作る。
4.根三つ葉の根に薄力粉をごく薄くまぶして天ぷら衣をつけ、170℃に熱した揚げ油に入れる。根三つ葉の根を箸でつかんで小刻みに振って余分な衣を散らした後、形を丸く整える。途中で返して、出る泡が少なくなりカリッと揚がったら油から上げて、クッキングペーパーにのせて油をきる。
5.器に盛って、温めた美味出汁適量を横から注ぎ、木の芽おろしをのせて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。