伊藤泰介先生浜松医科大学皮膚科学講座 病院教授・准教授。1995年、産業医科大学医学部卒業。浜松医科大学皮膚科助手、講師、病院准教授を経て2020年より現職。専門は皮膚アレルギー、脱毛症。【本気の毛髪ケアを成功に導く極意】
生え変わるために毛髪はいったん抜ける。がっかりせずに治療を続けることが着実な成果につながっていく
薄毛や抜け毛の治療が誰でもできるようになった今も、思ったような効果が出ないと嘆く人は実は少なくありません。
「治療効果を十分に得たいのなら、最初に毛周期をよく理解することが大切です」と脱毛症を専門とする伊藤泰介先生はいいます。
毛髪の構造
毛髪には一定の寿命があり、「毛周期」と呼ばれるヘアサイクル(成長期→退行期→休止期)にしたがって生え変わっていきます。このヘアサイクルが正常に働いているとボリュームのある頭髪が保たれます。
毛周期の仕組みと女性型脱毛症
毛髪は成長した後に自然に抜け、再び同じ毛穴から新しい毛髪が生える。このヘアサイクルは「毛周期」と呼ばれ、成長期(初期・後期)、退行期、休止期に分かれる。女性型脱毛症では成長期が短くなり、薄毛や抜け毛が起こる。その原因としては男性ホルモンの影響があると考えられているが、50代以上では栄養(たんぱく質、鉄分、亜鉛)や睡眠不足、ストレスなどほかの要因も絡んでいる。女性の場合、更年期前後から毛周期が乱れるようになり、成長期が短くなって毛が細くなったり抜けたりして薄毛や抜け毛に悩まされるようになります(図参照)。
その原因の多くは老化や女性ホルモンの急激な低下に伴う男性ホルモンとのバランスの崩れなど生理的現象だといわれます。
毛周期を考えない治療やケアは効果が期待できない
「薄毛や抜け毛の治療では新しい毛髪を生えさせるために、毛周期をリセットすることが欠かせません。外用薬の塗布治療をしていると毛髪が抜けるから使いたくないという人がいますが、生え変わる準備として毛髪はいったん抜けます。そこでがっかりせずに治療を続け、新しい髪が生え変わってくるのを気長に待つことが着実な成果につながります」と伊藤先生は治療の心得をアドバイスします。
それはホームケアにおいても同じです。毛周期を理解せずに、育毛剤をはじめ、いろいろなヘアケア用品を次々に替えて使っていくのもケア効果が期待できないといいます。
「毛髪が伸びるのは1か月に1センチ程度なので、この成長速度からいっても最低半年間は同一のケア法にしっかり取り組みたいものです」。
治療もホームケアも継続は力なり──。これが本気の毛髪ケアを成功に導くための極意といえるでしょう。
〔特集〕予防だけでなく、着実に“結果”を出す時代へ 「本気の頭皮・毛髪ケア最前線」(全8回)
イラスト/にれいさちこ 取材・文/渡辺千鶴
『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。