姫皮(ひめかわ)酒肴4種、若竹汁、たけのこの味噌汁
春の美味、たけのこを十分に堪能していらっしゃいますか? 「もう飽きた」、そんなこと言わずに、今を逃したら来春まで食べられない生のたけのこを、いろんな料理法やアレンジで味わい尽くしましょう。
「
たけのこ三昧」でお話ししたように、たけのこは部位によって堅さや特徴が違います。堅い根元部分は刻んで炒めものに、柔らかい穂先は汁ものや和えものにと使い分けます。
たけのこの穂先の内側にある白い柔らかな皮を姫皮と呼び、一説によれば皮が幾重にも重なる様子を、公家のお姫様が着る十二単に例えたとか。
姫皮を刻むコツを今日はお教えします。それさえマスターすれば、今回の酒肴以外でも、酢のもの、和えもの、炒めものなど多くのアレンジが考えられるでしょう。
さらに「
梅若竹椀」でお教えした若竹煮を汁ものにした若竹汁と、たけのこの味噌汁も紹介しましょう。どんな味噌汁もおいしくする隠し技を「
若水菜の味噌汁」でお話ししましたね。和のハーブである山椒や柚子などを、吸いものだけではなく味噌汁に添えると急に高級な味になります。今回は木の芽をたけのこの味噌汁に添えます。香りがよいだけでなく、食べる人に春を意識させることもできます。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「姫皮酒肴4種」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・
穂先部分を縦2つに切り、内側から包丁に力を入れずに刻む。力が入ると堅い皮まで切れて混ざり、食感が悪くなる。
・姫皮だけでは量が少なかったら、根元のほうを薄くスライスして、せん切りにして加えるとよい。
・「若竹汁」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・若竹汁のたけのこは、
柔らかい部位を薄く小ぶりに切って吸い地と一緒に味わう。
・新わかめの
食感と風味を生かすため、火を通し過ぎない。
・木の芽は香りの強さが様々なので、何枚という決まりはなく、確認しながら香りが立つ量添える。
・「たけのこの味噌汁」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・たけのこの味噌汁のたけのこは、
食べごたえがある根に近い部位を厚めの一口大に切る。
・
味噌汁のコツは「沸かさない」「煮えばなを手早く供する」「温め直さない」。「
ゆり根白味噌仕立て」も参照。
・
味噌汁の木の芽は、吸いものと違い一緒に食べる。枝部分が口に残らないように
葉のみをむしって使う。
「姫皮のごま和え」(左上の器)
「姫皮の梅和え」(右上の器)
【材料(2〜3人分)】・たけのこ(中)の姫皮、根元部分のせん切り 80g
・出汁 100cc
・日本酒 大さじ4
・みりん 小さじ1
・塩 0.2g
・薄口醤油 小さじ1
・濃口醤油 小さじ1/2
・白いりごま(市販品をいり直す) 少々
・干し梅(なければ梅肉でもよい) 少々
【作り方】1.たけのこを下処理し、ぬか茹でして冷まし皮をむく。割り箸などで残った皮を軽くこそげ取る。「
たけのこの煮もの」参照。先の堅い部分と根元の堅い部分1cmほどを切って形を整える。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。
2.1の先の部分を縦に半分に切る。断面を上にしてまな板に置き、包丁の刃を力を入れずに当てて、姫皮をせん切りにする。根元部分は断面を上にして薄くスライスし、少しずつずらして重ねせん切りにする。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。姫皮と根元部分のせん切りを合わせ、ざるに入れ水につけてさらす。
3.程よくえぐみが抜けたら、水気をきって鍋に入れる。出汁と日本酒を入れて火にかけ、すべての調味料を加えて、沸いたら中火にする。だんだん火を弱めて、途中、箸で混ぜながら汁気がなくなるまで煮つめて、火からおろす。
4.3の半分に白いりごまを加えて和える。残りの半分には干し梅を加えて和える。干し梅がなければ梅肉を少量のせる。
「姫皮わさび漬けのせ、豆腐の味噌漬けのせ」(左)
【材料(2〜3人分)】・たけのこの穂先部分の輪切り 6枚
・わさび漬け(市販品) 少々
・豆腐の味噌漬け(市販品) 少々
・板わかめ(市販品) 少々
【作り方】1.たけのこを下処理し、ぬか茹でして冷まし皮をむく。割り箸などで残った皮を軽くこそげ取る。穂先部分はそのままにして、根元の堅い部分のみを1cmほど切って形を整えて、たけのこを炊く。「
たけのこの煮もの」参照。
2.味を含んだら、たけのこを煮汁から上げて、穂先の堅い部分のみを切って外す。続けて柔らかい穂先部分を5〜6mm厚さの輪切りにする。
3.わさび漬けと豆腐の味噌漬けを2にのせて、豆腐の味噌漬けには板わかめをちぎって添える。
「若竹汁」(右)
【材料(2人分)】・たけのこ(柔らかい部位) 50g
「
たけのこの煮もの」参照
・新わかめ(塩蔵新わかめでもよい) 60g
・吸い地
出汁360cc、塩0.5g、薄口醤油6cc、日本酒6cc
・木の芽 適量
【作り方】1.「
たけのこの煮もの」を参照してたけのこを炊く。
2.生の新わかめは茎の部分を切り取り、沸いた湯に入れてさっと茹で、色が鮮緑になったら水に放す。冷めたらざるに上げて水気をきり、食べやすい大きさに切る。塩蔵新わかめを使う場合は水につけて塩抜きして使う。
3.炊いて味を含ませたたけのこを煮汁とともに鍋に入れる。新わかめも加え煮汁が少ないようであれば出汁(分量外)をたして火にかける。新わかめが入った分だけ味が薄くなった煮汁に、調味料(薄口醤油、塩、みりんはすべて分量外)をたして元のたけのこの煮汁の味に戻す。沸いたら弱火にして、1〜2分炊き火からおろす。
4.吸い地を作る。鍋に出汁を入れて火にかけ、90℃くらいになったら塩を加えて溶かし、沸く直前に火を弱め薄口醤油と日本酒を加える。
5.新わかめを椀に盛り、たけのこを薄めに切ってのせる。熱い吸い地を注いで、木の芽をたっぷりのせて供する。
「たけのこの味噌汁」(左)
【材料(2人分)】・たけのこ(根元のほう。先の柔らかい部分でもよい) 50g
「
たけのこの煮もの」参照
・新わかめ(塩蔵新わかめでもよい) 60g
・出汁 340cc
・信州味噌(好みの味噌でもよい) 適量
・木の芽(枝を外して葉のみにする) 適量
【作り方】1.「
たけのこの煮もの」を参照してたけのこを炊く。
2.新わかめは「若竹汁」の2と同じように下処理する。
3.鍋に出汁を入れて火にかけ、80℃くらいになったら味噌を溶き入れて、一口大に切ったたけのこと2のわかめを加える。味噌汁が90℃を超えたくらいで火からおろし、椀に盛って木の芽を散らす。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。