〔聴衆を圧倒した佐渡+反田の熱演〕この日は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番に始まり、反田さんのアンコールはショパンの「マズルカ op. 56-2」。新日本フィルは、リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」のロマンティシズム溢れる演奏で聴衆を魅了し、アンコール、ヨハン・シュトラウス2世の「雷鳴と電光」で会場を沸かせる。佐渡さんと新日本フィルの今後の活躍に期待を抱かせる演奏会となった。世界でいちばん福利厚生が進んだオーケストラを
反田 将来的に学校(アカデミー)を作りたいと思っているんですけれど。
佐渡 いつもいってるよねえ(笑)。
反田 そこで学ぶソリストたちのためにいつでも稼働できるプロのオーケストラを作りたいなと思っているんですね。学生がオーケストラに入って弾いても、ソリストとして弾いてもいい。そういうフレキシブルなものにしたい。やっぱりジャパン・ナショナル......という名前をつけたからには、世界にも出なきゃ意味がないと思うし、だからこそ僕はショパンコンクールに出る必要があったんです。今回やっとオーケストラの存在を知ってもらえたので、数年後にはみんなを世界に連れていけるようにしたい。
それと世界でいちばん福利厚生がいいオーケストラにしたいなと思っていて。メンバーからの要望にもできるだけ応えていく。たとえば、ベルリンフィルなんかも演奏会が終わったらすぐビールを飲んだりするじゃないですか。そういうのを今、ホールにつくろうといっていて。終わってみんなで語らったときに何か次が芽生えることもあると思うんです。
佐渡 絶対あるよ。それ。
反田 ですよね。今バーを作っています。
佐渡 お酒飲まないのに?(笑)
反田 僕はコーラでいい(笑)。
佐渡 先輩面していうわけじゃないけど、僕が28歳でブザンソンのコンクールで優勝したときまず思ったのは、これでやっとメシ食っていけるということ。それまでの日本の仕事は全部辞めてバーンスタインのところに勉強しに行って、コンクール優勝後は少しずつ海外で仕事をもらえるようになり、ヨーロッパで指揮することにこだわり続けてきた。何がいいたいかというと、よくそんなにいろいろなことを考えるなぁと本当に感心する!
反田 (笑)。
佐渡 だって、自分のソロ活動がまずあるわけでしょう? 今の話は完全に経営者としての目線だからなかなか両立は大変だろうと思って。僕にはそんな余裕はなかったな。次の演奏会の譜面を読むことでいつも必死だったし、あるいは次に入るギャラでソファを買いたい、みたいな(笑)。オーケストラの福利厚生なんて思いもしなかったしね。まあでも今はもう時代も環境も違うからね。
佐渡さん、反田さんのコンサート情報
●大和証券グループPresents 佐渡裕(指揮)/反田恭平(ピアノ) 新日本フィルハーモニー交響楽団50周年記念演奏会 【日程】2022年5月19日~6月4日 山形、宮城、岩手、大阪、愛媛など全国12公演 【曲目】ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」、交響曲第7番
●佐渡裕指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団演奏会 【日程】 2022年5月21日 すみだトリフォニーホール、5月22日 所沢市民文化センターミューズ、5月23日 サントリーホール 【曲目】 R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」、バーンスタイン:前奏曲・フーガとリフス、ベートーヴェン:交響曲第7番 上記のチケットの残席など詳細は、佐渡裕オフィシャルファンサイトでご確認ください。URL:
http://yutaka-sado.meetsfan.jp/category/ticket/ 反田恭平さんを中心に若手音楽家で作るオンラインサロン Solistiade(ソリスティアーデ)では、楽曲解説やレッスン、会員限定のコンサートや音源などの配信を行っています。現在会員募集中。詳しくは、
https://solistiade.jpで。
撮影/鍋島徳恭 スタイリング/横田依生子(佐渡さん)、宮崎 司(反田さん) ヘア&メイク/大和田一美〈APREA〉 構成/三宅 暁〈編輯舎〉 協力/新日本フィルハーモニー交響楽団/すみだトリフォニーホール
『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。