楽譜が体に入っていれば腕を振らなくともいい音を鳴らせる
反田 ショパンコンクールもファイナルでは純粋にこの曲が世界で本当にいちばん好きだというのを伝えたいと思って弾いたんです。あのコンクールだけはミスタッチが減点の対象にならないんですよね。音に人間性を求められる。2次予選に進んだ人たちの評を見て「ああ、やっぱりそうなんだ」って。譜面にない音、作曲した子が予選を通ってるんです（笑）。緊張しすぎて途中でどこを弾いているかわからなくなって、同じ箇所を何度も繰り返して戻れなくなってしまったんだけれど、それでもうまかったから。
佐渡 へ～え、面白い（笑）。指揮の場合だと、たとえ振り間違えても、この人の棒なら合わせたいということはあるかもね。指揮法を身につけて上手に振れるから指揮者になれるわけではなく、楽譜をどれだけ読み込んで、それが自分の体に入っているかが重要。反田君も指揮を勉強したいといっているけれど、やはり指揮者って、誰でもいいわけではなくて、こいつがリーダーだ！って、皆が納得しなくちゃならない。そう思わせるには、まず自分の中に音楽が深く入っていることだと思う。それさえあれば、僕はたぶん両手を後ろに組んでもいい音を鳴らせると思うしね。
反田 腕を振らずに？
佐渡 その自信はある。だから曲の研究はキリがない。次々にやってくる本番に向けて、勉強しなきゃといつも追われて、追いつかないもの。
反田 まったく一緒です（笑）。僕は時間があると好きなことをやっちゃうほうなので、本当に恥ずかしい話なんですけど、世界的に見てもいちばん練習してない人間だと思います。1か月ピアノを弾かないとか、ざらにありますからね。車の合宿免許を取りに行ったりするくらいで（笑）。結局二人とも遊び好きっていう......。
佐渡 僕は勉強しますよ（笑）。
反田 いや僕も勉強しています（笑）。
佐渡さん、反田さんのコンサート情報
●大和証券グループPresents 佐渡裕（指揮）／反田恭平（ピアノ） 新日本フィルハーモニー交響楽団50周年記念演奏会 【日程】2022年5月19日～6月4日 山形、宮城、岩手、大阪、愛媛など全国12公演 【曲目】ベートーヴェン：ピアノ協奏曲第5番「皇帝」、交響曲第7番
●佐渡裕指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団演奏会 【日程】 2022年5月21日 すみだトリフォニーホール、5月22日 所沢市民文化センターミューズ、5月23日 サントリーホール 【曲目】 R.シュトラウス：交響詩「ドン・ファン」、バーンスタイン：前奏曲・フーガとリフス、ベートーヴェン：交響曲第7番 上記のチケットの残席など詳細は、佐渡裕オフィシャルファンサイトでご確認ください。URL：
http://yutaka-sado.meetsfan.jp/category/ticket/ 反田恭平さんを中心に若手音楽家で作るオンラインサロン Solistiade（ソリスティアーデ）では、楽曲解説やレッスン、会員限定のコンサートや音源などの配信を行っています。現在会員募集中。詳しくは、
https://solistiade.jpで。
（佐渡さん）衣装協力／Utsubo Stock （反田さん）スーツ／デ ペトリロ シャツ／ギ ローバー タイ／ニッキー（すべてシップス 渋谷店） チーフ／フラテッリ ルイージ 靴／トゥールズ＆コンストラクション（ともにユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店）
撮影／鍋島徳恭 スタイリング／横田依生子（佐渡さん）、宮崎 司（反田さん） ヘア＆メイク／大和田一美〈APREA〉 構成／三宅 暁〈編輯舎〉 協力／新日本フィルハーモニー交響楽団/すみだトリフォニーホール
『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
