「ジュエリーの真髄」を知る 第9回(全14回) 美術館や博物館で観るような歴史的な芸術品から、日々を彩る日常使いの輝きまで……。美しいジュエリーには、夢や希望を与え、人々の心を潤す圧倒的な力があります。学び、愛で、そして楽しむ。ジュエリーの真髄を知れば、私たちの人生はもっと心豊かなものになることでしょう。
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Van Cleef & Arpels(ヴァン クリーフ&アーペル)── 緻密な技と優美さ
花びらの一枚一枚に瑞々しさが宿る巧みなセッティング
菊の花びらの内側にサファイアを留めて立体感を演出。カールした花びらの先端にはバゲットカットダイヤモンドをチャネルセット。「フルール アンペリアル」リング(WG×レッドスピネル5.46ct×モーヴサファイア×ダイヤモンド)5108万4000円(参考価格)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)職人技の粋を尽くしデリケートに仕立てる生き生きとした自然
メゾン誕生のきっかけは、宝石細工職人の息子アルフレッド・ヴァン クリーフと宝石商の娘エステル・アーペルの幸福な結婚でした。
1906年、アルフレッドとエステルの兄シャルル・アーペルが意気投合し、ヴァンドーム広場にブティックを開くと、たちまち紳士淑女が引きもきらず訪れるようになりました。両家の人々が抜きんでた鑑識眼を持っていただけでなく、美意識はどこまでもエレガントに洗練し、さらに驚くようなアイディアを実現させる情熱も持ち合わせていたからです。
例えば、モードとハイジュエリーの優美な融合として今も高く評価される「ジップ」ネックレス。何とモチーフはジッパーで、実際に開閉できるように仕立てるには大変な困難を極めましたが、10年以上の試行錯誤を経てついに完成させました。
現代も作り続けられているアイコニックな「ジップ」ネックレス。ジッパーを閉じるとブレスレットに変身。アイディアが形になるまでに長い時間を要した名品。また、1933年に特許を取得した「ミステリーセット」は、宝石を支える金属が表からは全く見えないという驚くべきもの。この超絶技巧はプレシャスストーンの色彩の魅力を極限にまで高めるという効果を発揮しました。
宝石の裏に溝を刻み、ゴールドのレールにかませて留めるミステリーセットのデリケートな作業。ほかにもフェアリーやバレリーナなど、可憐なアイコンたちによって詩情溢れる夢の世界を描き出してきた「ヴァン クリーフ&アーペル」。花々は摘んできたばかりのように香り高く、蝶は今にも羽ばたきそうな愛らしさで、女性たちを甘く飾ります。
指の間にそっと止まるプレシャスな蝶たちの愛らしさにため息
トラディショナルなミステリーセットのバタフライ。表面につややかなふくらみを持たせたバフトップのルビーで仕立てているのが特徴。「フライング バタフライ アントレ レ ドア」リング(WG×RG×ルビー×ダイヤモンド)3907万2000円(参考価格)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)ヴァンドーム広場の本店ブティック【1906年創業 創業者:アルフレッド・ヴァン クリーフ、エステル&シャルル・アーペル】●ヴァン クリーフ&アーペル本店[Boutique Van Cleef & Arpels Paris]22-24 Place Vendôme, Paris,France
●ヴァン クリーフ&アーペル銀座本店東京都中央区銀座3-5-6 TEL:03(3563)1906
撮影/Fumito Shibasaki〈DONNA〉 スタイリング/阿部美恵 取材・文/本間恵子
『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。