新じゃがいもと里いもの飴かけ
新じゃがいもをほくほくに揚げて表面を飴でパリッとコーティング、おつまみにもおやつにもなります。「
新じゃがいもの味噌ころがし3種」で、かつて日本各地のじゃがいも生産地では、小さ過ぎて出荷できないいもをまとめて料理し、おかずやおやつとしてくり返し食べたという話をしました。食の情報があふれ、食体験も豊富になった現代ではいくら農繁期でもそれは……。
そこで、さほど手間をかけずに作れ、フライドポテトのようにおつまみにもおやつにもなる料理を工夫してみました。老若男女を問わず好まれ、少ししゃれた雰囲気のものをと自分でわざわざハードルを上げて(笑)。
砂糖を鍋に入れて火にかけ、溶かして煮つめる技法は、飴細工やりんご飴は別として、和食ではあまり使われません。この連載では飴化する技法を使った料理として、「
いちじくの蜜煮 バルサミコカラメルかけ」、「
柿のくわ焼き」、「
豆かりんとう」、「
大根と金柑の炒め煮」などを紹介しました。使い方次第では大変有効な技法で、伝統的な日本料理を発展させる可能性が高いと考えています。
カラメリゼなどと呼ぶと、古い世代の料理人からは“フレンチかぶれ”と叱責を受けそうですが、飴細工は江戸時代からありますし、その技法の応用と考えれば日本料理としてもさほど気をてらったことにはならないと思います。
カラメル化とは少し違いますが、砂糖と醤油などを合わせて煮つめて飴状にする技法は、田作りをはじめとする伝統的な日本料理にも存在します。大学いももそうですね。
自己弁護はともかく(笑)、新じゃがいもを皮ごと揚げているので、表面に張った醤油風味の飴が割れた瞬間、内側に閉じ込められていた若々しい香りが広がります。里いものほうは表面はパリッと中身はぬるっとして、新じゃがいもとは違う食感で別のおいしさがあります。飴の上にナッツ類や、香り・刺激のあるものをかけるとお酒にもぴったり。
小さめのキューブ型の大学いもを、大学生よりも小さいということで中学いもというそうです。今回のいもなら、少し大人びた小学いもでしょうか?(笑) 今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「新じゃがいもと里いもの飴かけ」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・香りを閉じ込めるため、切らずにそのまま使える小粒の新じゃがいもを使う。
・飴をからめたら、網付きバットに並べて余分な飴を落とす。平らなところに置くと底面の飴だけが分厚くなり食感がよくない。
・飴が固まる前にナッツ類や揚げそばの実、ピンクペッパー、木の芽などをトッピングする。冷めてからでは定着しない。
「新じゃがいもの飴かけ」(左)
【材料(3人分)】・新じゃがいも(ピンポン玉くらいのもの。大きかったら半分に切る) 200〜300g
・揚げ油 適量
・グラニュー糖 75g
・日本酒 大さじ1
・水 大さじ1弱
・濃口醤油 小さじ1/2
・はちみつ 大さじ1弱
・アーモンドスライス(ローストしたもの) 適量
・ピスタチオ(粗めに砕く) 適量
・レーズン 適量
・ピンクペッパー 適量
【作り方】1.フライパンに揚げ油を入れ、160℃に熱する。新じゃがいもを入れて8分ほど揚げる。竹串を刺して通ったら油から上げる。
2.耐熱容器に日本酒と水、醤油、はちみつを入れて電子レンジで20秒ほど加熱し、全体が均一になるように混ぜる。
3.フライパンか鍋にグラニュー糖を入れ、中火にかける。途中でかき混ぜずにグラニュー糖が溶けるのを待ち、色が変わり出したら混ぜて「ひと目でわかるプロセス&テクニック」の写真のような薄い黄色になったら、火からおろす。フライパンの底を濡れ布巾に当てて2の調味料を一気に加えてかき混ぜる。
4.再度、フライパンを火にかけて、新じゃがいもを入れて飴をまんべんなくからめる。網付きのバットに広げて余分な飴を落とす。熱いうちにアーモンドスライス、ピスタチオ、レーズンを乗せ、ピンクペッパーをふる。
5.飴が固まったら器に盛って供する。
「里いもの飴かけ」(右)
【材料(3人分)】・里いも(なるべく小ぶりなもの 大きかったら半分に切る) 200〜300g
・揚げ油 適量
・グラニュー糖 75g
・日本酒 大さじ1
・水 大さじ1弱
・濃口醤油 小さじ1/2
・はちみつ 大さじ1弱
・そばの実 適量
・木の芽(葉をむしって枝を外す) 適量
【作り方】1.里いもは小ぶりなものを選び、乾いた布巾を使って皮をむく。「
小いもの含め煮」も参照。むきにくい場合は包丁で皮をむいてもよい。
2.フライパンに揚げ油を入れ、160℃に熱する。里いもを入れて8分ほど揚げる。竹串を刺して通ったら油から上げる。
3.そばの実は160℃の油で揚げて、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
4.飴の作り方は「新じゃがいもの飴かけ」の2〜3と同じ。
5.再度、フライパンを火にかけて里いもを入れ、飴をまんべんなくからめて網付きのバットに広げ、余分な飴を落とす。熱いうちに揚げそばの実をのせ、木の芽を散らす。
6.飴が固まったら器に盛って供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。