ほぼ糖質ゼロお好み焼き
春野菜を使った、焼かないお好み焼を紹介します。また、何か変なことを言い出したとお思いでしょう。しかも糖質ゼロといううたい文句で、読者の気をひこうという企みが見え見え(笑)。完全に糖質ゼロではありませんが、粉ものではなく、焼かないというのは事実です。
粉ものとは主に小麦粉を主原材料とする料理のことで、ソースの甘い香りにひきつけられる「鉄板系粉もの」(お好み焼きやたこ焼き)だけでなく、麺類やパン類なども含まれます。関西では「粉もん」と親しみを込めて呼ばれ、西日本の食文化というイメージがありますが、安くておいしく気取らない食べもので、今日では東西関係なく老若男女に愛されています。
1週間後、5月7日(土)は「粉の日」、「ゴールデンウイークは家族団らんホットプレートを囲んで」と言いたいところですが、粉ものは近年ダイエットの定番となっている糖質制限からすれば……。
そこでほぼ糖質ゼロの、焼かないお好み焼きの出番です。味つけは一般的なお好み焼と同じソース。使う野菜の量はおそらく3倍以上で、おなかいっぱい食べても食後の罪悪感がありません。
「
春キャベツの酢のもの」や「
紫キャベツと春菜の博多ドーム」のアレンジといってもよいかもしれません。薄く塩をふって水分を出した春キャベツときゅうりに香味野菜を加えて、ぎりぎりの量の寒天出汁で固めてお好み焼のように仕上げます。
実はこの料理、日本一の寒天メーカーと仕事をさせていただいたときに、昼食に出していただいた料理をアレンジしたものです。「
焼き大根」で紹介した某高級料亭のご主人の話ではありませんが、玄人の自分に何を作ってくれるのだろうと思っていたところに出された料理がこのお好み焼き、完全にやられました。夢中で食べて感心しきりだったことを覚えています。
糖質は決して「悪」ではありません。糖質は人間が生きていく上で欠かせない栄養素で、全身の細胞や脳のエネルギー源となります。糖質の摂り過ぎに注意し、上手にコントロールしていくのが糖質制限ダイエットの極意。糖質制限している方もしていない人も、野菜いっぱいの“こんなもの”いかがでしょう(笑)。本当におすすめです。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「ほぼ糖質ゼロお好み焼き」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・春キャベツときゅうりにふる塩は、余分な水分を除き下味をつけるためなので薄くてよい。
・そら豆は油焼きすることで香ばしさと油分が加わり、よりおいしくなる。
・はっさく(またはニューサマーオレンジ)を入れることで酸味が加わり、味にメリハリがでる。
・寒天液は一見溶けているように見えても、ある程度の時間沸かして煮なければ、完全には溶けない。溶けきっていないと、食べたときざらっとしたものが口に残る。鍋全体に気泡が沸き立った状態でしっかり溶かす。
・寒天液は常温で固まるので注ぐ前に冷まし過ぎない。
・好みで辛子や紅生姜を添えて、野菜料理をおいしくする7要素の1つである刺激を加えてもよい。
「ほぼ糖質ゼロお好み焼」
【材料(4人分)】・春キャベツ 300g
・きゅうり 1本(120g)
・塩 少々
・青じそ 10枚
・みょうが 3個
・大和いも 125g
・はっさく(ニューサマーオレンジでもよい) 1個
・昆布茶 少々
・たけのこ(炊いたもの) 小2本分 「
たけのこの煮もの」参照
・そら豆の油焼き 15粒 「
そら豆の油焼き」参照
・寒天出汁 約500cc
出汁500cc、塩0.5g、薄口醤油小さじ1、粉末寒天8g(角寒天2〜3本分)
・ごぼう 15cm(40〜50g)
・揚げ油 適量
・お好み焼きソース(市販品) 適量
・削り干ししいたけ(なければかつお節でもよい) 適量
・揚げ玉(お好みで) 適量
【作り方】1.春キャベツは芯を切り落とし、3㎜幅のせん切りにする。きゅうりは2mm厚さの小口切りにする。ボウルに春キャベツときゅうりを入れ、塩を少々加えて軽く混ぜ5分ほどおく。手で軽く絞って乾いた布巾で包み、水分を除く。
2.青じそは軸の部分を除いて1cm四方に切る。みょうがは縦に半分に切り、繊維にそって薄切りにする。大和いもは皮をむいて4〜5mm角に切る。はっさくは皮と薄皮をむいて身を小さめにほぐす。
3.炊いたたけのこは食べやすい大きさに薄切りする。
4.揚げごぼうを作る。ごぼうは5cmに切って櫛刃をつけたスライサーで2mm角×5cm長さのせん切りにし、さっと水で洗って水気をきる。フライパンに揚げ油を入れ、150〜160℃に熱してごぼうを入れる。きつね色にカラッと揚がったら、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
5.鍋に出汁を注いで粉末寒天を加え、泡立て器でよく混ぜ火にかける。細かな泡が立って沸騰してきたら、吹きこぼれないぎりぎりの火加減にして2分ほど沸かし、寒天をよく煮溶かす。寒天が完全に溶けたら火を止めて調味料を加えて粗熱を取る。
6.底が平らな直径18cmくらいの鍋やケーキ型の内側に霧吹きで水を吹きかけ、大きめに切ったラップをぴったりと貼りつける。
7.ボウルに春キャベツ、きゅうり、青じそ、みょうが、大和いも、はっさくを入れて混ぜ、昆布茶を好みの量ふりかけて均一に混ぜる。
8.6に7を入れて同じ厚みになるように広げる。たけのことそら豆の油焼きを上面に散らす。そこに50℃ほどに冷めた5の寒天出汁を流し入れる。寒天出汁が均一に行き渡るように、フライ返しなどで上から軽く押さえ、冷蔵庫に入れて固める。
9.鍋(または型)から取り出し、お好み焼ソースをかけて、揚げごぼう、削り干ししいたけをのせて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。