きものの解説は、記事の最後にある「フォトギャラリー」をご覧ください。正直、この27年間、波風立たない日などなかった。母子家庭で一人っ子として育った未成年の私と、15歳から親元を離れ、芸能界という特殊な世界で生きてきた夫。ふたりの理想と現実は、なかなかしっくり落ち着くところを知らなかった。
未だに、危うい綱渡りのパートナーシップではあるけど、良くも悪くも、まるで鏡のように互いを映し出す存在を面白がれる限りは、のらりくらりと歩みを止めずにいけるかもしれない。
ロスで彼と文通の約束を交わしたあの日から14年後、どういう風の吹き回しか、私は「もう二度と来るはずもない」と信じていた米国アカデミー賞授賞式会場前にいた。
私と出会う直前に、バックパッカーとしてインドを東西南北、旅する中で、 彼が初めて向き合った死生観を元に企画した映画『おくりびと』が、奇しくも外国語映画賞に輝いたのだ。
やっぱり、人生は、思いがけないことに満ち溢れている。
母と娘の新たなる邂逅 内田也哉子の「衣(きぬ)だより」
撮影/森山雅智 きものコーディネート・着付け/石田節子 ヘア&メイク/Eita〈Iris〉 着付け/杉山優子 構成・取材・文/樺澤貴子 撮影協力/VOGEL
『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。