おかひじきのひたし、豆腐の味噌漬け和え、梅酢和え
おかひじきは、日当たりのよい海岸の砂浜などに自生しますが、天然ものはその数が減って絶滅が危惧されています。現在は各地で栽培されるようになり、スーパーマーケットにも並んでいます。
海藻のひじきに似ているので、おかに生えるひじきという意味で「おかひじき」と名づけられました。天然ものは4月中旬〜6月にかけてが旬ですが、栽培ものは通年出回っています。
選ぶ際は鮮緑で艶があるものを。黄色みを帯びているものは鮮度が落ちています。若い芽の部分がおいしく、茎が太く全体に大きく成長したものは堅くなっているので避けます。
おかひじき同様、海岸の砂地に生えて若芽を食用とするものに「松菜(まつな)」があります。形が五葉松に似ているので、古くから宴席の祝儀ものとして吸いものや刺し身の青み(料理全体の色バランスをよくする緑色の野菜)として用いられてきました。しかし、松菜の数が減って高額で取引されるようになると、見た目が似ていて安価なおかひじきが、その代替品として日本料理でも使われ出しました。シャキシャキした食感が特徴で、くせのない淡泊な味なのでどんな料理にも合い、今では多くの料理に活用されています。
今日は涼やかな祥瑞(しょんずい)の洲浜(すはま)鉢に料理を盛ります。洲浜とは、土砂がたまって水面に現れた砂浜のこと。3か所を押さえて洲浜の形にした鉢に、砂浜に生息するおかひじき3品を盛りつけました。
祥瑞は中国の明朝末期から清朝初期、日本の茶人の注文により景徳鎮(けいとくちん)窯で作られました。精白の素地に鮮やかな青藍色で吉祥文や幾何学文などを緻密に描き込んだ、染付磁器の最上級品とされます。名の由来は一部の器の底に「五良大甫 呉祥瑞造(ごろうたいほ ごしょんずいぞう)」の銘があるためです。
今の時期の鮮やかな新緑を思わせる、おかひじきの料理を3種紹介します。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「おかひじきのひたし」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・おかひじきはさっと茹でる。茹で過ぎるとシャキシャキ感が損なわれてしまう。
・「おかひじきの豆腐の味噌漬け和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・淡泊な味のおかひじきは、濃厚な味の豆腐の味噌漬けで和えるとおいしくなる。食感が生きるように食べる直前に和える。
・「おかひじきの梅酢和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・おかひじきとうどの食感が相まって軽やかな酢のものになる。おかひじきの色と食感が失われないよう、食べる直前に梅酢で和える。
「おかひじきのひたし」(上)
【材料(2人分)】・おかひじき 15g
・コリンキー(生食用のかぼちゃ) 10g
・美味出汁 適量
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合
・アマランサススプラウト(好みで) 適量
・青柚子 少々
【作り方】1.おかひじきは、太い茎から枝分かれした柔らかい茎と芽の部分をむしって使う。太い茎が柔らかい場合はそのまま用いてもよい。
2.鍋にたっぷりの湯を沸かし、おかひじきを入れ、30秒〜1分茹でて冷水に放す。冷めたらざるに上げて水気をきり、食べやすい大きさに切る。
3.コリンキーは皮をむいて2mm角×2.5cm長さに切る。
4.ボウルにおかひじきとコリンキーを入れて混ぜ、美味出汁をまぶして洗う。ざるに上げて汁気をきったらボウルに戻して、再度美味出汁をまぶす。器に盛り、好みでアマランサススプラウトを添え、青柚子の皮の部分のみをおろし金でおろしたものをふりかけて供する。
「おかひじきの豆腐の味噌漬け和え」(左)
【材料(2人分)】・おかひじき 15g
・きゅうり 10g
・豆腐の味噌漬け(市販品) 5g
・ボリジスプラウト(好みで) 適量
【作り方】1.おかひじきは「おかひじきのひたし」の1〜2と同じように、茹でて食べやすい大きさに切る。水分をクッキングペーパーで除く。
2.きゅうりは小口切りにして、薄く塩(材料外)をふり水分が出たらクッキングペーパーで除く。
3.ボウルにおかひじきときゅうりを入れ、豆腐の味噌漬けを加えて和える。器に盛って好みでボリジスプラウトを添えて供する。
「おかひじきの梅酢和え」(右)
【材料(2人分)】・おかひじき 15g
・うど 10g
・梅酢ドレッシング 5cc
作りやすい分量:梅酢(市販品。商品により塩分濃度がかなり違うので加減する)10cc、 甘酢(昆布出汁(水1L 昆布10g)450cc、酢300cc、砂糖100g)10cc、オリーブオイル5cc、 砂糖小さじ1
・芽じそ(好みで) 適量
【作り方】1.おかひじきは「おかひじきのひたし」の1〜2と同じように茹でて、食べやすい大きさに切る。水分をクッキングペーパーで除く。
2.うどは太い茎の部分の皮をむいて1cm×3cm、2mm厚さの短冊切りにする。さっと洗って水分をクッキングペーパーで除く。
3.梅酢ドレッシングを作る。ボウルに梅酢と甘酢、砂糖を入れ、泡立て器で混ぜる。オリーブオイルを少しずつ垂らして泡立て器でよく混ぜる。
4.別のボウルにおかひじきとうどを入れて混ぜ、3を適量加えて和える。器に盛って好みで芽じそを添えて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。