にんじん弁当4種 サラダ、そぼろ飯、生春巻き、サンドイッチ
今日は「母の日」ですね。日頃の感謝の気持ちを、カーネーションの花束のように華やかなにんじん料理に託してはいかがでしょう。学生時代、毎日、弁当を作ってくれたお母さんに、今日は手作りの弁当をプレゼント。昔懐かしい雰囲気はそのままに、スタイリッシュに仕上げたアルミの弁当箱に4種類のにんじん料理を盛りつけました。
「
金時にんじん酒肴3種」でお話ししましたが、にんじんには西洋系(五寸にんじん、ミニキャロットなど)と東洋系(金時にんじんなど)の2種類があります。今のようなオレンジ色のにんじんは17~18世紀頃にオランダで作られ、日本には江戸時代後期に入ってきて明治時代以降普及しました。
通常、店頭に出回っているものはオレンジ色の五寸にんじんで、通年産地を替えながら出荷されています。名前のとおり、5寸(約15.2cm)に近い大きさです。最近ではにんじん嫌いの理由のひとつである青臭さを、改良によって少なくした品種(「向陽2号」、「ひとみ五寸」など)も増えてきました。
右から金美にんじん、五寸にんじん、紫にんじん、白にんじん。にんじんには五寸にんじんの他にも、真っ赤な金時にんじん、黄色いものでは沖縄の「島にんじん」や「金美(きんび)にんじん」(中国系のにんじんと掛け合わせたもの)、紫や白色のものもあります。
免疫力を高める効果や抗酸化作用があるβ-カロテンは、皮の近くに多く含まれているので、皮をできるだけ薄くむくか、皮ごと調理するのがよいでしょう。色の違う皮つきのにんじんを合わせてきんぴらなどにしてもいいですね。
にんじんは色が濃くて、葉がついていた切り口が茶色くなっておらず、表面に傷やひび割れがないものを選びます。中心部にある芯とその外側の部分とでは、外側の方がショ糖の量は4倍、β-カロテンの量は2倍と多く、旨みも栄養もあります。葉がついていた切り口の太さは芯の太さとほぼ同じなので、切り口が細いもの(芯が細いもの)のほうがよいでしょう。
今回は数種類のにんじんを使ってサラダ、そぼろ飯、生春巻き、サンドイッチを紹介します。このうち3つには「
金時にんじんの梅煮、黒酢南蛮漬け」でお教えした、にんじん嫌いでも食べやすい料理のコツを活用しています。
細くせん切りにしたにんじんに酸味と甘みと油分を加えます。酸味と甘みには、互いを感じにくくさせる抑制効果があり、油分は香りの強い野菜のにおいをマスキングして感じにくくさせます。
私が子供の頃にも、サラダメインの弁当やカラフルなサンドイッチを弁当に持ってくる女の子がいて、うらやましかったことを覚えています。母に頼みましたが、そんなもの男が食べていたら恥ずかしいでしょうと断られました。時代を反映していますね(笑)。母の日ににんじん弁当作っている私を、母は雲の上からどんな思いで見ているのでしょう。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「にんじんサラダ」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・作ってから時間をおいて食べるサラダはドレッシングをしみ込ませて、汁気をきった後に使う。にんじんのサラダは作り置きにもむく。
・「にんじんそぼろ飯」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・にんじんそぼろの汁気が多いと、飯がふやけてしまう。おろしたにんじんは水分を絞ってから炒める。木綿豆腐は押して程よく水分を抜いて用いる。
・セロリは食感が残るように炒める。
・「にんじん生春巻き」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・ライスペーパーは水につけ過ぎると破けやすくなる。フライパンなどに水を入れてつけるとよい。
・「にんじんサンドイッチ」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・サンドイッチはラップに包んで冷蔵庫に30分ほど入れると、しっとりし、切りやすくなる。
「にんじんサラダ」
【材料(13.5cm×8.5cm×3cmの弁当箱1個分)】・にんじん 80g
・紫にんじん 30g
・コリンキー(生食用のかぼちゃ) 45g
・塩 1.3〜1.5g
・ドレッシング
塩2つまみ、こしょう少々、シェリービネガー10g、レモンの搾り汁25g、はちみつ15g、オリーブオイル大さじ4
・ピスタチオ(粗めに刻む) 適量
・サニーレタス 適量
※トッピングする野菜は下記の材料を参考に好みで。
・ブロッコリー 適量
・カリフラワー 適量
・おかひじき 適量
・ドライいちじく(柔らかいもの) 適量
・ドライりんご 適量
・ニューサマーオレンジ 適量
【作り方】1.にんじんと紫にんじんはピーラーでなるべく薄く皮をむき、スライサーに櫛刃をつけて2〜2.5mm角×6cm長さのせん切りにする。コリンキーも皮をむいて同様にせん切りにする。
2.にんじん、紫にんじん、コリンキーをボウルに入れて塩をふり、軽くもんで5〜10分ほどおく。水分が出てきたら軽く絞ってクッキングペーパーで取り除く。
3.ドレッシングを作る。別のボウルに塩とこしょう、シェリービネガー、レモンの搾り汁、はちみつを入れて泡立て器で混ぜる。オリーブオイルを少量ずつ加えて混ぜる。
4.2をボウルに戻してピスタチオを加えて混ぜる。3を適量加えて和え5〜10分おく。
5.ブロッコリーとカリフラワーは茎側から切り込みを途中まで入れ、手で裂いてから包丁で1.5cm程度の小房に分ける。鍋に湯を沸かし、ブロッコリーとカリフラワーをそれぞれ入れて堅めに茹で、水に放さずざるに上げて薄く塩(分量外)をふる。冷めたらボウルに入れて3を適量加えて和える。
6.おかひじきは、太い茎から枝分かれした柔らかい茎と芽の部分をちぎって使う。鍋にたっぷりの湯を沸かし、おかひじきを入れて30秒〜1分茹でて冷水に放す。冷めたらざるに上げて水気をきり、食べやすい大きさに切って3を適量加えて和える。
7.ドライいちじくとドライりんごは食べやすい大きさに切る。ニューサマーオレンジは皮と薄皮をむいて細かくほぐす。
8.弁当箱にサニーレタスをしいて、汁気をきった4を盛る。ブロッコリー、カリフラワー、おかひじき、ドライいちじく、ドライりんご、ニューサマーオレンジを飾る。
「にんじんそぼろ飯」
【材料(13.5cm×8.5cm×3cmの弁当箱1個分)】・にんじん 3/4〜1本(200〜250g)
・セロリ 40g
・木綿豆腐 1/3 丁(100g)
・生姜(みじん切り) 大さじ1
・松の実 10g
・いんげん豆 4本
・サラダ油 大さじ1/2
・赤唐辛子(種を抜く) 1/2本
・きび砂糖(上白糖でもよい) 3~4つまみ
・塩 3つまみ(0.3g)
・日本酒 小さじ2
・みりん 小さじ2
・濃口醤油 大さじ1と1/3
・白飯 適量
【作り方】1.にんじんは薄く皮をむいて鬼おろし(「
しみつかれ」参照)ですりおろす。クッキングペーパーに包んで、最初の4/5ほどの重量になるまで汁気を絞る。
2.セロリは、筋が堅い場合は筋を除く。1cm×2.5cmほどの大きさで2mm厚さに刻む。
3.木綿豆腐はガーゼで包み、さらに乾いた布巾で包んで網にのせ、その下に出た水分を受けるバットを敷く。上から重石をかけて1時間ほど水分を除く。豆腐の押し方は「
トマトの白和え」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」も参照。水分が抜けたら1〜1.5cm角に切る。
4.いんげん豆は、塩茹でして水に放し、冷めたらざるに上げる。切り口を斜めにして2cm長さに切る。
5.フライパンを火にかけ、サラダ油をひいて赤唐辛子と生姜のみじん切りを入れる。3の豆腐と松の実を入れて炒め、にんじん、セロリの順で加える。油が全体になじんだら調味料をすべて加え、汁気がほとんどなくなるまで炒める。
6.弁当箱に炊いておいた白飯をよそい、上に赤唐辛子を除いた5を均一に広げる。いんげん豆を散らす。
「にんじん生春巻き」
【材料(13.5cm×8.5cm×3cmの弁当箱1個分)】・にんじん 1本(250g)
・生姜(せん切りにする) 50g
・ねぎ(白い部分) 12cm
・せり 1/2束(30g)
・美味出汁 適量
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合
・生きくらげ(せん切りにする。乾物でもよい) 20g
・ねぎ(黄緑の部分) 10cm
・ごま油 大さじ1
・酢 大さじ1と2/3
・濃口醤油 大さじ1と2/3
・ライスペーパー 4枚
・花椒(かしょう)スプラウト(好みで) 適量
【作り方】1.にんじんはピーラーでなるべく薄く皮をむき、スライサーに櫛刃をつけて2〜2.5mm角×6cm長さのせん切りにする。
2.ねぎの白い部分は4cm長さに切り、縦に切り込みを入れて芯を取り除く。巻いていた部分を1枚ずつはがして、その内側についている半透明の薄い膜をはがしたら、重ねて繊維に沿ってなるべく細いせん切りにして冷水に放す。しゃきっとしたらすぐにざるに上げて水気をよくきる。芯はあとで使うので取っておく。
3.せりは葉先や上のほうの柔らかい茎と下のほうの太い茎を分け、しゃきしゃきした食感が残るようにそれぞれさっと茹でて水に放す。冷めたら水から上げて水分を絞り、2cm長さに切ってボウルに入れ、美味出汁で洗って汁気を絞る。
4.ねぎの黄緑の部分と、2で残しておいた芯をみじん切りにする。
5.フライパンにごま油をひいて、生姜と4のねぎを加えて炒める。ごま油にねぎと生姜の風味が移ったら、にんじんを入れて炒める。酢と濃口醤油を加え、からませるように炒めて味をつける。にんじんをフライパンからバットなどに移し、フライパンに残った調味料で生きくらげを汁気がなくなるまで炒める。
6.ライスペーパーは説明書の表示に従って水にくぐらせ、柔らかくもどして使う。フライパンなど、口径が広く底が平らなものに水を入れてつけるとよい。水につけ過ぎると破けやすくなるので注意。
7.まな板などの上に6を広げる。巻き終わった仕上がりの断面を意識して、5のにんじん、ねぎの白い部分のせん切り、せり、きくらげをのせてひと巻きする。両端を内側に折り込んでくるくると巻く。
8.7を3等分して弁当箱に盛り、好みで花椒スプラウトを添える。
「にんじんサンドイッチ」
【材料(13.5cm×8.5cm×3cmの弁当箱1個分)】・にんじん 65g
・金美にんじん 65g
・白にんじん(パースニップ) 65g
・塩 1〜1.2g
・ドレッシング
塩ひとつまみ、こしょう少々、オリーブオイル大さじ4、シェリービネガー10g、レモンの搾り汁25g、はちみつ15g、ココナッツファイン大さじ1
・サンドイッチ用食パン 4枚
・無塩バター(有塩バターでもよい) 適量
・レタス 適量
・バジルスプラウト(好みで) 適量
・ココナッツロング(ローストする) 適量
【作り方】1.にんじんと金美にんじん、白にんじんはピーラーでなるべく薄く皮をむき、スライサーに櫛刃をつけて2〜2.5mm角×6cm長さのせん切りにする。
2.1をボウルに入れて塩をふり、軽くもんで5〜10分ほど置く。水分が出てきたら軽く絞って、クッキングペーパーで水気を取り除く。
3.「にんじんサラダ」の3と同じ手順でドレッシングを作り、ココナッツファインを加えて混ぜる。
4.2をボウルに戻し、3を適量加えて和え5〜10分置く。
5.サンドイッチ用食パンに柔らかくした無塩バターを塗り、2枚をまな板などの上におく。汁気をきり2等分した4を、それぞれにのせて広げる。上から残りの2枚の食パンをそれぞれのせる。軽く手のひらで押さえてなじませる。時間があれば、ラップに包んで冷蔵庫に30分ほど入れるとしっとりし、かつ切りやすくなる。
6.サンドイッチ用パンの耳を切り落とし、3等分する。弁当箱にレタスをしいて、サンドイッチを断面を上にして詰める。上からココナッツロングを適量散らして、好みでバジルスプラウトを添える。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。