プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> ブロッコリーの梅昆布和え、ごま和え、わさび海苔和え
ブロッコリーは栄養豊富でくせがなく、料理しやすい野菜です。日本には明治時代に渡来しましたが、他の野菜に比べて傷むのが早いこともあってか、当時はあまり普及しませんでした。
第2次世界大戦後に国内でも栽培され始めますが、色は違うものの形がよく似ているカリフラワーのほうが初めは人気がありました。その後、人々の栄養意識が高まって、緑黄色野菜であるブロッコリーの栄養価が評価されます。消費が一気に伸びて、カリフラワーの3倍程度の生産量になりました。
ビタミンCやB1、B2、葉酸を多く含みますが、普通に茹でるとビタミンなど水溶性の栄養素は茹で汁に溶け出して減少します。ところが、蒸すと栄養素が溶け出しにくく、ビタミンCが96%も残り、味も濃く感じられます。
輸入されるブロッコリーは「氷結輸送」(発泡スチロール製の箱などに、砕いた氷を一緒に詰めて輸送)で運ばれますが、それは途中で花が咲いたり、乾燥するのを防ぐためです。ブロッコリーは鮮度が落ちやすく、収穫後に常温に置くと甘み成分は1日でおよそ半分になり、ビタミンCは3日で半分に。ところが0℃で保存すると、栄養素はほとんど減りません。ブロッコリーは鮮度の良いものを買い求めて、ポリ袋に入れて冷蔵庫のチルド室で保存しましょう。
今日はブロッコリーの持ち味を生かし、蒸したもので3種の和えものを作ります。蒸すと茹でるより格段においしいのですが、形が少しくずれてしまいます。そこでエッジの立った古志野織部の向付に盛りました。味を取るか、見た目を取るかのどちらかではなく、両方いただきます(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「ブロッコリーの梅昆布和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 食感 ◎香り ◎刺激
・ブロッコリーは蒸して持ち味を生かす。
・梅干しの酸味が味を引き締め、おぼろ昆布が旨みを加える。
・「ブロッコリーのごま和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・ごま酢クリームに刻みごまを加えて、風味と食感を追加する。
・「ブロッコリーのわさび海苔和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・焼き海苔を加えて旨みと風味をたす。海苔は3大旨み成分である「グルタミン酸」「グアニル酸」「イノシン酸」を単独で持ち、いまひとつ物足りないときに加えるとおいしくなる。
・美味出汁を土佐酢に替えてもよい。
・カリフラワーは途中から加えて食感が残るように蒸す。
「ブロッコリーの梅昆布和え」(上)
【材料(2人分)】・ブロッコリー 60g
・日本酒 大さじ1
・梅肉 適量
・おぼろ昆布 適量
【作り方】1.ブロッコリーは茎側から切り込みを途中まで入れ、手で裂いてから包丁で一口大の小房に分ける。
2.フライパンにブロッコリーを入れて日本酒を加え、蓋をして中火で2分加熱する。火からおろし、そのまま2分おいて余熱で火を通す。
3.ボウルにブロッコリーを入れて梅肉を加えて和え、器に盛る。おぼろ昆布を添えて供する。
「ブロッコリーのごま和え」(左)
【材料(2人分)】・ブロッコリー 60g
・日本酒 大さじ1
・ごま酢クリーム 適量
作りやすい分量:白ごまペースト(市販品で可)50g、酢大さじ3、砂糖大さじ3弱
・いりごま(市販品をいり直す) 少々
【作り方】1.ブロッコリーは「ブロッコリーの梅昆布和え」の1〜2と同じように蒸す。
2.いりごまをまな板の上に広げて粗めに刻む。
3.ボウルにブロッコリーを入れてごま酢クリームを加えて和え、器に盛る。いりごまをかけて供する。
「ブロッコリーのわさび海苔和え」(右)
【材料(2人分)】・ブロッコリー 40g
・カリフラワー 20g
・日本酒 大さじ1
・美味出汁 適量
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合
・わさび(市販品のチューブ入りわさびでもよい) 少々
・焼き海苔 適量
【作り方】1.ブロッコリーとカリフラワーは茎側から切り込みを途中まで入れ、手で裂いてから包丁で一口大の小房に分ける。フライパンにブロッコリーを入れて日本酒を加え、蓋をして中火で1分加熱したら、カリフラワーも加えてさらに1分加熱する。火からおろし、そのまま2分おいて余熱で火を通す。
2.ボウルに美味出汁を適量入れてわさびを溶かす。ブロッコリーとカリフラワーを入れ、ちぎった焼き海苔も加えて和える。器に盛り、ボウルに残った美味出汁を少量かけてちぎった海苔をのせて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗