六本木歌舞伎2022『ハナゾチル』では赤星十三郎を勤めさせていただきました。
僕は真女方なので、立役を演じるときは感覚的に、男になろうとしてしまう傾向があります。どう動くか、どう立っているかということさえ、僕には難しいんです。
そこで『阿古屋』や『妹背山婦女庭訓』のお三輪などの女方を演じるとき役に徹していたことを思い出して、赤星の性根を探ることで演じ方を見出すことができました。
『壇浦兜軍記 阿古屋』の遊君阿古屋。2018年12月、歌舞伎座。©松竹僕の根底には「歌舞伎役者は古典歌舞伎をやるべき」という考え方があります。
赤星の台詞でも、最初はテンポよく、人にも伝わりやすい感じでしゃべっていたのですが、ある程度台詞を語れるようになったら、あえて時代物の色がある話し方をしたところ、好評をいただきました。
歌舞伎が大好きだからこそ、そのいい回しが歌舞伎らしく聞こえたんだと思います。
歌舞伎にはいろんな色がある。僕はそれぞれの色にある歌舞伎の手法を融合させることにも意味があると思います。
2022年5月の團菊祭には父(中村福助)も久しぶりに出演します。僕は歌舞伎十八番の『暫』で桂の前を初役で勤めさせていただきます。(市川)海老蔵のお兄さんが東京オリンピックの開会式でも演じた勧善懲悪を体現する歌舞伎らしい演目です。
お役をしっかりと演じることで、お客さまから“古典作品を演じる児太郎がもっと見たい”と思っていただけるような存在感を出せたらいいなと思います。
中村児太郎(なかむら・こたろう)
1993年、東京都出身。父は9代目中村福助。2000年歌舞伎座『京鹿子娘道成寺』の所化、『菊晴勢若駒』の春駒の童で、6代目中村児太郎を名乗り、初舞台。2018年には『壇浦兜軍記 阿古屋』の琴、胡弓、三味線を演奏する阿古屋という難役を史上最年少である24歳で初役で勤めた。
今月の歌舞伎
【歌舞伎座】
團菊祭五月大歌舞伎
~2022年5月27日
●第一部 11時開演一、『祇園祭礼信仰記 金閣寺』 二、『あやめ浴衣』
●第二部 14時30分開演一、歌舞伎十八番の内『暫』 二、新古演劇十種の内『土蜘』
●第三部 18時15分開演一、『市原野のだんまり』 二、『弁天娘女男白浪』
※中村児太郎さんは第二部の『暫』の桂の前役で出演します。
1等席1万6000円ほか
チケットホン松竹:0570(000)489
公演の詳細は歌舞伎公式総合サイトをご参照ください。
歌舞伎美人
https://www.kabuki-bito.jp
【御園座】
坂東玉三郎 特別舞踊公演
『隅田川』は能を題材にして創られた舞踊。斑女の前(坂東玉三郎)は我が子である梅若丸の行方を尋ねて東国へとやってくるが、偶然出会った舟長(中村鴈治郎)からすでに我が子が不幸のなか亡くなったことを聞く。子を思う母親の深い愛情と悲哀を描いた作品。『傾城』では吉原随一の傾城が廓の男女の恋模様を舞で表現している。古風な風情の七変化舞踊『拙書力七以呂波』の一景。
中村鴈治郎出演 2022年5月27日~28日
●14時開演一、『口上』 二、『隅田川』 三、『傾城』
A席1万8000円ほか
御園座チケットセンター:052(308)8899(10時~16時)
表示価格はすべて税込みです。
撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン ヘア&メイク/AKANE
『家庭画報』2022年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。