慶應義塾の三色旗を思わせる「表紙の色使いがとても気に入っています」とうれしそうに語る菅沼さん。体をメンテナンスするには、偏りのない食事、睡眠、運動が不可欠。何事もバランスを取ることが健康の秘訣です。
本書の内容は応急処置だけにとどまらず、脳、呼吸・循環系、血液、消化器系、泌尿器系から、出産や育児も含めた女性の体や心の問題など、全身のしくみや病気に及んでいます。
全編を読んで感じるのは食事の大切さ。つくづく人間の体は食べ物でつくられているのだと気づかされます。
「人間の体は常にある程度は壊れていて、それをしょっちゅう補修しています。また、車でいえばガソリンや電気に当たるエネルギーも必要です。つまり、食べ物から摂る糖質、たんぱく質、ビタミンやミネラルなど、さまざまな材料によって日々成り立っているわけですね。家が壊れたら床材や壁紙がなければ直せないのと同じで、体を補修し続けるために、食事はものすごく大事です。食物繊維が多いからと1種類のものばかり食べていては、その食物繊維が好きな腸内細菌しか増えないので、やはり偏っていてはダメなのです」
しかも、食べ物だけでなく、睡眠も運動も重要であり、人生100年時代に100歳まで元気で生きるには、何事もバランスが大切だと菅沼さんは言います。
一方、乳がんや大腸がんなど、女性に多いがんに話が及ぶと、こんなアドバイスをしてくれました。
「もちろん、がんになりにくい食生活や生活習慣を心がけることも大切ですが、今は早期発見すれば治る病気になりましたから、乳がんなら定期的に自分で触診をする、大腸がんなら自分の便をちゃんとチェックすることが大事です。そのうえで、年に1回は必ず健康診断を受けていただきたいですね」
女子高生に語りかけるようなわかりやすさが魅力
医療の世界は日進月歩だからと、菅沼さんは本に最新情報をできるだけ盛り込んでほぼ書き下ろしたうえで、第一線で活躍中の慶應義塾大学医学部の教授の皆さんにも助言をいただいたとのこと。なかには一冊まるごと丁寧にチェックしてくださった先生も複数いたそうで、慶應義塾の卒業生のネットワークがここにも生かされています。
「家庭の医学」と銘打った本は数々ありますが、現役の医師が一人でまとめた400ページ余にも及ぶ大冊は珍しく、何より女子高生に向けた、わかりやすく親しみやすい語り口が本書の魅力です。
最後に、家庭画報本誌の読者に向けて、こんなメッセージをいただきました。
「私の周りの女性と話していると、意外と若い人にも『家庭画報』の読者がいて、幅広い年代に読まれていることを感じます。そういう皆さんに、ご自身や家族の健康、年を重ねてからどういうふうに生きるかなど、いろいろなことを考えながら、ご家族と一緒に読んでいただけたらうれしいですね」
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撮影/家庭画報本誌・坂本正行 取材・文/大山直美
『家庭画報』2022年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。