フルーツゼリーサンドイッチ
季節のフルーツゼリーサンドイッチを紹介します。軽食やスイーツに、そして洒落たおもてなしの料理にもなります。昨今、フルーツサンドイッチをいたるところで見かけます。コンビニエンスストアにも並んでいますね。
私も食べることがあります。どれも生クリームたっぷりの大変わかりやすい、一般ウケする味の構成です。おいしいのですが、油脂によって果物の風味が消されているのが残念です。
以前、大手コンビニエンスストア向けの商品開発の仕事をさせていただき、その中の一つとして今日のフルーツゼリーのサンドイッチを提案したことがありました。関係者には大絶賛だったのですが、コンビニの店頭に並べる商品としての条件が満たせませんでした。
ライン生産ができ、工場や中継地から各店舗への輸送中の振動や衝撃、温度差に耐えられて、賞味期限がある程度長くなければなりません。私が最も抵抗を感じたのは、生のフルーツが使いにくいということでした。街のパン屋さんやケーキ屋さんなどで発売すれば、大ヒットしたかもしれません。
今回はそのレシピを読者の皆さまだけに公開します。どこにも売っていないのでご家庭で作って楽しんでいただければと思います。柔らかくぷるんとした食感に仕上げたいので、ゼラチンを使います。ゼラチンと寒天とでは特徴や性質が違い、扱いにいくつかのコツがあります。それを全部お教えします。
市販されているカップゼリーなどでも、すべての具材(フィリング)が底に沈んでいるものがあります。これは大量生産向けのやり方で、個人的にはあまり感心しません。ゼリー液を何回かに分けて流し込めば、具材を真ん中に浮いた状態にできます。寒天液は何層かに分けて流し込むと、層と層の間が分離してしまいますが、ゼラチンを使ったものは密着します。
次に具材となるフルーツですが、パイナップルやキウイ、パパイヤ、いちじくなどは、たんぱく質分解酵素を含むため、生のままではゼラチンが分解されて固まりません。どうしても使いたい場合は、シロップで炊くなどして加熱する必要があります。
サンドイッチに使う食パンは厚いと味のバランスが悪くなります。パン屋さんで一般的なサンドイッチ用食パンの、さらに半分以下の厚みでスライスしてもらってください。
フルーツの種類は材料表どおりでなくてもいいので、季節のものでいろいろ工夫すれば一年中楽しめます。小腹がすいたら、フルーツゼリーのサンドイッチで“賛同、一致”(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「フルーツゼリーサンドイッチ」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み 塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・板ゼラチンはたっぷりの水に30分〜1時間つけて、十分に吸水させた後に使用する。
・ゼラチンは60℃を超すと熱変性が起きて固まりにくくなるので、温度に注意する。
・ゼリー液を3回に分けて流し入れる。1層目を固めた上にフルーツを並べ、フルーツの高さの2/3まで2層目を流し入れる。これ以上入れるとフルーツが浮いてしまう。2層目が固まったら3層目を流し入れる。
・冬場など、流し入れる前のゼリー液が固まってしまったら湯煎で溶かす。60℃を超えて加熱しないように注意が必要。
・自宅で食パンを切る場合は、1斤まるごとしっかり凍らせると薄く切れる。
「フルーツゼリーサンドイッチ」
【材料(4人分)】・ぶどう 15〜18個
・マンゴー 1個
・桃 1個
・ゼリー液
白ワイン225cc、水225cc、グラニュー糖90g、板ゼラチン17g、レモン汁1/4個分
・食パン(3mm厚さに切る) 8〜10枚
・バター(無塩、有塩好みで) 適量
【作り方】1.ぶどうは皮ごと食べられるものであればそのまま、皮が堅いものは皮をむく。マンゴーは皮をむいて種を除き、5〜6mm厚さにスライスする。桃は皮をむいて食べやすい大きさに切る。
2.板ゼラチンはたっぷりの水に30分~1時間つけ、中まで十分に吸水させておく。
3.ゼリー液を作る。鍋に白ワインを入れて強火にかけて沸かし、ワインに火がついたら、コンロの火を消してアルコール分を少しとばす。水とグラニュー糖を加えて溶かし、温度が60℃より少し低いくらいになったらレモン汁を加える。水でもどした板ゼラチンを加えて溶かした後、常温で冷ます。
4.16cm角の専用流し型を用意する(なければバットや保存容器などの底にラップを貼って代用)。3のゼリー液を5mmほどの深さで流し入れたら、冷蔵庫で固める。
5.4が固まったらぶどう、マンゴー、桃を高さが同じになるようにバランスよく並べる。フルーツの高さの2/3までゼリー液を流し入れて、冷蔵庫で固める。
6.5が固まったら残ったゼリー液を流し入れ、最終的に2.5cmの厚みまで入れ冷蔵庫で固める。
7.6を型から外して適宜切り、バターを塗った極薄パンではさむ。一口大に切って器に盛る。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。