ミュージカルの極意「人の心に潜む存在を描く」
ミュージカル『フランケンシュタイン』の「偉大なる生命創造の歴史が始まる」やゲーテの戯曲『ファウスト』が原作のミュージカル『DEVIL』の「THE SONG OF SONGS」は僕がこれまでに出会った作品の中でも特に印象に残る楽曲です。
歌ったときに、気持ちと曲が一つになったような感覚を味わうことができたんです。どちらも韓国で生まれた曲だということが、僕にはとても興味深いです。
今回演じさせていただく役はアムドゥスキアスという“音楽の悪魔”です。自分に音楽の才能がないと打ちひしがれていたニコロ・パガニーニが、彼のヴァイオリンの練習場でもある森でこの悪魔と出会い、血の契約を結びます。
パガニーニといえば、ステージに現れるだけですさまじいオーラを放ち、異常なまでの集中力と高度なテクニックで演奏することから、悪魔に魂を売ったからに違いないといわれるほどの人物だったことは有名な話。
中には実際に十字を切る聴衆がいたそうです。そんな人間の心に潜んでいる存在を具体的な人物で演じるのが見どころです。
例えばパガニーニに会ったゲーテは「彼はこの宇宙に存在する悪魔的な要素を身につけている」と語ったそうで、このことを役作りの一つの手がかりにしたいと考えています。
また20歳のリストの前でも彼は演奏し、“ピアノのパガニーニになる”と決意させたともいわれています。人の未来を決定づけるような役割があったのではないでしょうか。
ニコロ・パガニーニの音楽は唯一無二のもの。僕が演じる悪魔はヴァイオリンという楽器を超越し、彼の生の声を操ります。
パガニーニの音楽に魂を宿し、奏で続けさせる悪魔は一般的なそれとは少し違うので、どのように映るのかが楽しみです。
中川晃教(なかがわ・あきのり)
1982年、宮城県出身。2001年に自身が作詞作曲した「I Will Get Your Kiss」でシンガーソングライターとしてデビュー。2002年、ミュージカル『モーツァルト!』の日本初演で井上芳雄とダブル主演し、第57回文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞ほか受賞多数。以降、ミュージシャンとして活動するとともに俳優としても舞台を中心に活躍。2016年にはミュージカル『ジャージー・ボーイズ』で主演を務めて第24回読売演劇大賞最優秀作品賞へと導き、自身も最優秀男優賞を受賞した。
『CROSS ROAD 〜悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ〜』
人気音楽朗読劇シリーズ『VOICARION』の原作・脚本・作詞・演出を手がける藤沢文翁が、2012年に朗読劇として上演されたオリジナル作品を自らミュージカル化する。舞台は数多くの音楽家が生まれた19世紀。
なかでも音楽史に突如として現れた“漆黒のヴァイオリニスト”パガニーニには「悪魔と契約して、魂と引き換えに音楽を手に入れた」という噂がささやかれていた。果たして真相は......。
主演の音楽の悪魔、アムドゥスキアスを中川晃教、ニコロ・パガニーニを相葉裕樹、水江建太がダブルキャストで務める。
シアタークリエ2022年6月7日~30日
1万2000円(全席指定)
東宝テレザーブ:03(3201)7777
URL:
https://www.tohostage.com/crossroad/※この情報は、掲載号の発売当時のものです。最新情報は公式サイト等でご確認ください。 表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/山下シオン
『家庭画報』2022年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。