ブロッコリーのフライ三杯酢、かき揚げ
今日の料理、ブロッコリーのフライには合わせ酢のひとつである三杯酢を使います。三杯酢に漬けるからこそ大変おいしくなります。他のソースなどではこの味は出せません。
合わせ酢とは、「
生姜味噌」でお話ししたように、私たちプロの料理人が厨房に常備している合わせ調味料のひとつです。合わせ酢だけでもかなりの種類があり、この連載でも甘酢(昆布出汁9:酢6:砂糖2)、土佐酢(出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1)、加減酢(出汁6:薄口醤油1.5:濃口醤油0.5:みりん1.5:酢1.5:柑橘酢0.5)、三杯酢(出汁1:濃口醤油1:みりん1:酢1:砂糖0.2、ポン酢少々)、寿司酢などを紹介してきました。
他にも、もずく酢(出汁6:薄口醤油1:みりん1:酢1、かつお節、昆布)、かに酢(出汁5:薄口醤油1:濃口醤油0.2:みりん1:柑橘酢1)、なまこ酢(出汁7:薄口醤油1:みりん1:酢1、かつお節、昆布)などがあります。
それぞれの調味料などの比率を記しましたが、どう感じられたでしょうか? どれも似たような感じ、あるいはそれぞれに微妙に違うもんだなというところでしょうか。よく秘伝のレシピなどと言ってもったいぶる料理人がいますが、私はすべて公開します。
なぜなら、私と同じように作ることは難しいからです。技術的な話をしているのではありません。合わせ酢も使う素材や料理、お客さまの好みによっても使う量を変えたり、調味料を加減するなどし、そのまま万能調味料的な使い方をすることはないからです。この微調整・微差が料理人の器量でありおいしい料理のコツです。
二杯酢は濃口醤油1:酢1といわれますが、餃子や春巻きならまだしも、他の料理でこのまま使うことはほとんどないでしょう。三杯酢も濃口醤油1:みりん1:酢1をベースに、比率を調整したり、出汁をたしたり、酢の種類を柑橘の果汁に替えたりして工夫します。
二杯酢や三杯酢と呼ぶのは、昔は盃を使って醤油を1杯、酢を1杯……と量っていたからです。口の肥えた現代人にはそんな単純な比率では通用しませんが。
三杯酢はこれまでも、「
しいたけのフライ三杯酢につけて」や「
丸なすの煮もののフライ 三杯酢にひたして」で使いました。お教えする三杯酢につけてフライを食べると、フライがパンチのある和食になって、皆さん驚かれます。野菜のフライだけでなく、魚介のフライに使っていただいてもよいでしょう。是非是非お試しください。後悔させません。
個性が大切といわれて久しく、そうありたいと望んでいながらも、食に関しては定番で満足している自分がいないでしょうか? 合わせ酢を例にあげれば、便利酢、万能酢、簡単酢などという触れ込みの市販品を使ってもかまいません。ただ、そこに家族の好みや自分の工夫という微差を加えると、我が家ならではのどこにもない料理になります。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「ブロッコリーのフライ三杯酢」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・ブロッコリーをカリッと揚げて三杯酢にくぐらせると、程よい酸味と油分が相まって大変おいしくなる。
・ベジタリアンでなければ、揚げ油の1/4をラードにするとボリュームが出て旨みが増す。
・「ブロッコリーのかき揚げ」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 香り 刺激
・食感を出すため、カリフラワーはブロッコリーより大きめに切る。
・ブロッコリーとカリフラワーの花蕾(からい)の部分だけでなく、茎の部分や葉をかき揚げにしてもよい。
「ブロッコリーのフライ三杯酢」(右)
【材料(2人分)】・ブロッコリー 80g
・フライの衣
強力粉(ふるったもの)70g、水100cc、おろし生姜3g、牛乳20cc、卵(卵黄と卵白に分ける)1個、塩少々
・パン粉(細めのもの) 適量
・三杯酢 適量
三杯酢の作りやすい分量:出汁40cc、濃口醤油40cc、みりん40cc、酢40cc、砂糖8g、ポン酢適量
・揚げ油(サラダ油3:ラード1) 適量
【作り方】1.ブロッコリーは茎側から切り込みを途中まで入れ手で裂いたら、包丁で小房に分ける。
2.フライの衣を作る。卵白と塩以外の材料をボウルに入れてよく混ぜる。別のボウルで卵白に塩少々を加えて八分立てにしたら、先のボウルに入れてさっくり合わせる。
3.ブロッコリーにフライの衣をつけ、さらにパン粉をつける。
4.フライパンに揚げ油を入れ180℃に熱し、3のブロッコリーを入れる。パン粉がきつね色に色づいたら油から上げる。三杯酢にひたしてすぐに供する。
「ブロッコリーのかき揚げ」(左)
【材料(2人分)】・ブロッコリー 40g
・カリフラワー 40g
・生姜(せん切り) 20g
・天ぷら衣
薄力粉100g、冷水100cc、卵黄1個
・揚げ油 適量
・塩 少々
【作り方】1.ブロッコリーとカリフラワーは茎側から切り込みを途中まで入れて手で裂き、ブロッコリーは1.5㎝程度、カリフラワーは2cm程度の小房に包丁で分ける。生姜は2mm角×2.5cm長さのせん切りにする。
2.天ぷら衣を作る。ボウルに入れた冷水に卵黄を加え、泡立て器でときほぐす。そこに薄力粉を加えて粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。ベジタリアンは卵を用いなくても構わない。
3.ブロッコリーとカリフラワー、生姜をボウルに入れ、ごく少量の薄力粉(分量外)をまぶす。
4.3に2の天ぷら衣を適量加え、全体が均一になるよう混ぜる。
5.180℃に熱した揚げ油の中に、4を小さなおたまで静かに入れていく。実際は170℃前後で揚げたいので、油の量にもよるが最初は180℃にしておき、たねを入れた後に170℃になるように火加減を調整する。
6.油の中でたねが広がってきたら、箸で寄せて形を整える。しばらくしたら裏返す。泡が小さくなり揚がったら、油をよくきって、塩をかけて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。