プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 山わさび醤油漬け、山わさび丼
山わさびは、西洋わさび、ホースラディッシュ、レフォールとも呼ばれ、ローストビーフやステーキに欠かせない薬味として知られています。明治初期に日本に伝来し、原産地であるフィンランドや東ヨーロッパと気候が似ている北海道が主産地です。10月~3月頃に収穫されますが、貯蔵性が高く輸入品も多いので、ほぼ通年出回ります。
山わさび。山わさびは大根に似た香りでわさび大根とも呼ばれ、白くて太いごぼうのような見た目です。繊維が多く、すりおろすと本わさびが鮮緑であるのに対して山わさびは白く、辛さは本わさびの約1.5倍あるともいわれます。本わさびは湧き水や清流など、水がきれいな冷たい場所で3年ほどかけて栽培されますが、山わさびは山で栽培され約1年で収穫できます。収穫量が多いのも特徴で、チューブ入りわさびや粉わさびなど加工わさびの原料になります。
今日は山わさびの醤油漬けを丼にして、ツーンとくる辛さを楽しみます。本わさびと違って苦みとえぐみがあるので、油分と山いもを加え食べやすくするのがコツです。他の料理に適量加えても、よいアクセントになります。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「山わさび醤油漬け」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・
米油といりごまは、食べる分だけに加える。味にメリハリが出て、ごまの風味、食感も失われない。
・旨みが欲しい場合は、
調味料と一緒に出汁昆布を加えるとよい。
・「山わさび丼」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・
やまといもを加えることで粘りが加わり食べやすくなると同時に、甘みも加わる。
・海から収穫したそのままの状態で乾燥、焙煎し、海苔本来の香りと味わいがする「バラ干し海苔」を添える。
・
海苔は3大旨み成分である「グルタミン酸」「グアニル酸」「イノシン酸」を含み、少量添えるだけでも旨みが増す。
・
糸状に切ったオクラ(「
オクラと長いもの梅和え」)
を加えてもよい。
・
アボカドを食べやすい大きさに切って加えてもよい。旨みが増し、油分でコクが出る。
「山わさび醤油漬け」(左)
【材料(作りやすい分量)】・山わさび 200g
・濃口醤油 大さじ3
・日本酒 大さじ1
・みりん 大さじ1
・米油 適量
・白いりごま(市販品をいり直す。好みで) 適量
【作り方】1.山わさびはピーラーで皮をむき、粗みじん切りにして保存容器に入れる。
2.濃口醤油、日本酒、みりんを合わせて1に加えて混ぜる。アルコールが苦手な場合は、耐熱容器に合わせた調味料を入れ、ラップをせずに電子レンジで15秒ほど温めてから山わさびと混ぜるとよい。冷蔵庫で2日ほど保存する。
3.食べる分だけに米油を混ぜ、白いりごまをのせて供する。冷蔵庫で2週間ほど保存できる。
「山わさび丼」(右)
【材料(2人分)】・米 2合
・水 360cc
・山わさび醤油漬け 30g
・大和いも 30g
・ばら干し海苔(焼き海苔でもよい) 適量
【作り方】1.米は炊く30分以上前にとぎ、ざるに上げておく。
2.炊飯器に米と水(飯の炊き上がりの堅さの好みで量を加減する)を入れ、スイッチを入れる。
3.大和いもは皮をむき、包丁で粗みじん切りにしてボウルに入れる。米油といりごまを混ぜた山わさび醤油漬けを加えて混ぜる。
4.ご飯が炊き上がったら、米粒がつぶれないようふんわりと混ぜて碗によそう。3を好みの量のせて、ばら干し海苔を添えて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗