天野惠子先生のすこやか女性外来 第1回(02) 日本の女性医療、性差医療の先駆者で、ご自身の更年期体験も山ほどお持ちの、天野惠子先生の新連載「すこやか女性外来」がはじまりました。女性たちが更年期とそれ以降の人生を元気に過ごせますように─と。1回目は、更年期に生じる体の変化を閉経前との比較で教えてくださいます。
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更年期は女性の体の“変化のはじまり”
●前回の記事
更年期と“その後”の元気のために、体の変化を知りましょう天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。女性らしさも健康も恵んでくれるエストロゲンは“守り神”
エストロゲンは、女性たちに若々しさと健康を惜しみなく恵んでくれるまず、20代~30代の性成熟期に体内で繰り返される月経のサイクルやエストロゲンの働きをみてみましょう。その複雑さ、ありがたさがわかると、閉経がいかに大きな変化のはじまりであるかを実感できるはずです。
初経から約40年間、ひと月周期で繰り返される体のサイクル
初経から閉経までの約40年間、卵胞の発育や成熟にともなって体の中では下図のような変化が約28日周期で繰り返され、妊娠可能な状態がつくられます。
月経周期にともなう体の変化
卵胞が成熟しはじめると卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌され、子宮内膜が増殖して受精卵を迎える準備を整える。排卵後は黄体ホルモン(プロゲステロン)が子宮内膜を厚く保って受精卵が着床しやすい状態をつくり、体温も上昇。受精しないと子宮内膜は剝がれ落ち月経血となって排出され、再び妊娠のための準備がはじまる。閉経とは卵胞がなくなってホルモン分泌もなくなり、子宮内膜も基礎体温もフラットになること。
月経困難症や月経前症候群(PMS)など月経がらみの症状がなくなる代わりに加齢現象がはじまります。
子宮や乳房だけじゃない。エストロゲンは体全体をサポートする
エストロゲンは基礎代謝を保ち、低体温を防いで免疫力を保つなど体全体にかかわる大きな働きをしており、下図のように各臓器にも作用しています。
エストロゲンの働き
血管を拡張させて血圧の上昇を抑制し、高血圧を防ぐ。LDLコレステロールを肝臓に取り入れて血中のコレステロール値の上昇を防ぐ。インスリンを効きやすくして血糖値を抑える
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動脈硬化の進行が抑えられる
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脳梗塞や心疾患(狭心症、心筋梗塞)を予防できる
更年期以降の病気予防の点から特に注目したいのは、高血圧、高血糖、高コレステロールを抑え、動脈硬化の進行を予防する働きがあること。エストロゲンによって骨量が保たれていることも重要です。