辻井伸行さん初の音楽教室や限定100名リサイタルも。第1回富士山河口湖ピアノフェスティバル

【2日目】河口湖円形ホール
限定100名の贅沢なリサイタル

「音楽家として、皆さまに生の音楽が届けられるのが一番嬉しいこと。次に向けて、まだ弾いたことのない作品や珍しい曲を発見して挑戦していきたいです」ととても意欲的。

小空間を生かした音楽に想像力を膨らませて

昼は大自然の息吹の中で、夜は客席の息遣いが聞こえるほどの小空間で──。


100名限定で行われた河口湖円形ホールでのプレミアム・リサイタルでは、サロンのような雰囲気を意識して、印象派作品、自作曲、リストによる編曲作品、ショパンなどが演奏されました。小空間だからこそ聴き手の想像力も膨らみます。

辻井さん作曲「コルトナの朝」ではイタリアの陽光が差し込んでくる感覚に、静謐な讃美歌のように始まるワーグナー＝リスト編曲『ローエングリン』より「エルザの大聖堂への行列」では教会にいるような心境になった人も多かったでしょう。この曲とはコロナ自粛期間中に出会ったそうです。

自粛期間中に新たに学び精神的・音楽的にも成長
「ゆったりした曲で自分の音をよく聴いて深く表現することをこの2年で新たに学びました」── 辻井さん

実はこの1～2年、辻井さんの中では新しい挑戦が始まっていました。

「自粛期間中はコンサートができなくて辛い思いもしましたが、自分の演奏を見直したり、新たなレパートリーを増やす時間ができました。特に、ゆったりした曲で自分の音を聴いて深い表現ができるように心がけました。2021年夏のリサイタルではショパンのエチュード全27曲にも挑戦し、一回り成長できたかなと思います」。

またYouTubeチャンネルを立ち上げ、松任谷由実さんの『春よ、来い』をカバーして配信したり、オンラインコンサートも実施したそうです。

さらに、音楽で少しでも人々に寄り添うことができればという思いを込めて「笑顔で会える日のために」を作曲。そのしっとりとした優しい曲で、プレミアム・リサイタルは締めくくられました。



忙しい合間にも、温泉でリラックスしたり、公園を散歩したり、河口湖を感じることもできたという辻井さん。

4日間に及ぶフェスティバルで大役を務めた辻井さんですが、その伸びやかで幸福感に溢れる音や、「私たちが実際見ている風景よりも、彼が心の眼で見ている風景は何倍も美しい」（プロデューサー談）という繊細な感性に共鳴し、全国各地から聴衆が集まり、また多くの地元ボランティアも参加していました。

そんなすべてのかたに感謝をと、最終日の挨拶では客席に向かって拍手している辻井さんの姿がありました。

「素晴らしい富士山の麓で、お客さまに色々なプログラムを楽しんでいただけたかと思います。次もまた今回を超えるような新たな企画を考えたいです」。

音楽によるまちづくり、そして世界に開かれた音楽祭を目指し、富士山河口湖ピアノフェスティバルは2022年の秋、2回目を迎えます。



富士山の稜線に美しく映える河口湖円形ホール。