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がんになった医療者の治療選択と向き合い方。看護師 射場典子さん 第3回(前編)

2018.02.02

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閉経前に卵巣摘出した場合は、その影響にも十分に注意する


射場典子さんは卵巣がんの標準治療である手術と術後化学療法を行い、発症から半年後には当時勤めていた聖路加看護大学(現・聖路加国際大学)に復職します。しかし、緊張を強いられる職場で以前と同じように看護教員の仕事を続けていくことに限界を感じ、やむなく退職を決意します。

「再発リスクが高い時期は体調を優先すると決めたものの、新しい生活に適応するまでには本当に時間がかかりました」と射場さんは打ち明けます。

朝食のとき、「もう実習に出ている時間なのに、家でゆっくりご飯を食べていてもいいのか」という思いがふっと浮かんだり、昼間にスーパーで買い物をしていると罪悪感に駆られたりしたそうです。このような日常が、不眠やほてりなどの卵巣欠落症状(がんの手術で卵巣を摘出したことにより女性ホルモンが分泌されない状態になることで起こるさまざまな更年期様症状)に悩まされていた射場さんにさらに追い打ちをかけ、精神的にも苦しい状態に陥っていきました。


つらそうにしている射場さんに主治医の塩田恭子先生はホルモン補充療法(HRT)を提案してくれたといいます。現在、HRTは研究が進み、より安全に使いこなされるようになりましたが、当時は安全性を問題視する意見が強く、射場さんはリスクに関する文献を読んだうえで塩田先生と十分に相談し、実施することを決めました。「リスクに対する不安よりも、生きる意欲がわかない現状を変えたいという思いが勝ったのです」。

こうしてホルモン補充療法による治療を開始した射場さんは、眠れるようになるなど徐々に元気を取り戻していきました。塩田先生は、閉経前に卵巣がんや子宮がんの手術で卵巣を摘出したときはその影響にも十分に注意する必要があるとアドバイスします。

「卵巣欠落症状に加えて骨粗しょう症や動脈硬化症にもなりやすく、がんではなく脳卒中や心臓病で命を落とす人も少なくありません。これらの病気が進展しないように生活スタイルを見直し、適切な治療を受けることが大切です」(塩田先生)。
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