早春を告げる花。全国でも珍しいマンサクの並木路が見頃

花が咲き始めても枯れ葉が落ちない不思議

日本に自生するマンサクに比べ、シナマンサクは花が大きく開花も早いことから日本でも広く普及しています。そのシナマンサクには非常にユニークな性質があります。秋に紅葉した葉は一般的には冬に枯れて落ちますが、シナマンサクの場合、花が咲き始めても枯れ葉がしっかり枝について残っているのです。

ウメ、ボケ、モモ、サクラの花咲く様子を思い浮かべてみてください。枯れ葉なんて1枚も残っていませんよね。 初めてシナマンサクの枯れ葉に気付いたとき、とても不思議に感じ、その理由を調べたのですが、枯れ葉が残る理由はまだ解明されていないようです。

その枯れ葉は、花が満開になって散り始める頃には、ちゃんと新葉と入れ替わります。

おほかたの枯葉は枝に残りつつ今日まんさくの花ひとつ咲く

平成23年の歌会始のお題は「葉」でした。そしてこの句は皇后陛下の御歌です。おおかたの葉が枝に残ると詠んでいらっしゃることから、このマンサクはシナマンサクであることが推測されます。冬の寒さのなかでも落ちることなく枝に残る枯れ葉、そのなかに咲く輝くような黄色の花、その鮮やかな対比の美しさに感銘を受けました。

花が爛漫に咲く樹姿を眺めよう、撮影しようとすると、茶色に枯れた葉が邪魔な存在にも見えがちですが、これがシナマンサクの不思議ととらえれば、枯れ葉の中に花の咲く姿もまた興味深く感じられると思います。ご一緒にシナマンサクを観賞される方にもぜひ教えて差し上げてください。


花が満開近くなっても枯れ葉が落ちないで残る。これはシナマンサク特有の不思議な性質。 撮影／横田秀樹