ちしゃとう実山椒炒め、塩麹和え、粕漬け、味噌漬け
今日はちしゃとうを使った料理を4品紹介します。「
山くらげの辛子酢味噌和え、レタスがゆ」でもお話ししましたように、山くらげの原料のちしゃとうは、ステムレタスとも呼ばれる結球しないレタスの仲間で、茎の部分を食用とします。
(左)ちしゃとう、(右)山くらげ。春まきと秋まきの年2回収穫でき、春まきは6月〜7月にかけて、秋まきは11月中旬〜12月が収穫時期となります。料理屋がちしゃとうと呼んで、味噌漬けなどにしておせち料理や正月料理に使うものは、秋まきのものになります。味噌漬け以外にも和えもの、きんぴら、炒めもの、天ぷらなどにしてもおいしく召し上がれます。
今回は粕漬けもお教えしましょう。発酵させた醪(もろみ)から日本酒を搾る際の副産物が酒粕ですが、日本人は古くから酒粕を「
粕汁」や甘酒などに使ってきました。この連載でも「
ヤーコンとクレソンの酒粕白酢和え」、「
酒粕アイスクリーム、味噌豆を添えて」を紹介しています。たんぱく質、炭水化物、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどが豊富で、旨み成分も含まれているため、粕漬けにすると風味だけでなく旨みやこくが増します。他の料理には新粕を使うことが多いですが、粕漬けには熟成させた酒粕を用います。
熟成粕の作り方は、新粕を保存容器に入れて3〜4か月密封し、暖かくなり始めた頃に甕(かめ)や桶などに隙間なく詰め替えます。上から叩くなどして圧をかけ、中にたまった空気をしっかり抜きます。塩を溶かした焼酎を表面にふりかけ蓋をして密封し、20~25℃くらいの暗い場所で半年間保存すると、粕漬け用の熟成粕が仕上がります。熟成している間に麹菌が酵素を出し、でんぷんやたんぱく質を分解してアミノ酸を作り出し、糖とアミノ酸が結合して深いこくが生まれます。
手間と時間が作り出すおいしさですが、家庭で時間をかけずに手軽にできる方法もあります。今日はそれを紹介しましょう。酒粕に焼酎やみりんなどアルコール度数が高いものを加えて電子レンジで軽く温め、酒粕の中の酵素を活性化させるだけです。ちしゃとう以外の野菜、魚介や肉類を漬けても大変おいしくなります。是非お試しください。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「ちしゃとう実山椒炒め」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・ちしゃとうは皮が非常に堅い。ケガをしないようにピーラーを使って皮をむく。白い筋がある部分をすべて除いて緑の部分だけにする。
・先に実山椒を炒めて香りと辛みが移った油で野菜を炒める。
・ちしゃとうは食感のよさを生かす。新ごぼう、にんじん、ちしゃとうの順で炒める。
・ちしゃとうに香りや甘みがない分を、新ごぼうの風味とにんじんの甘みで補う。
・新ごぼうはあくが少ないので、水にさらさずに使う。
・「ちしゃとう塩麹和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・ちしゃとうは素麺状に切ってさっと茹でる。
・食べる直前に塩麹たれで和える。和えて時間がたつと水っぽくなり食感が悪くなる。
・「ちしゃとう粕漬け」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・焼酎とみりんを加えて電子レンジで40〜50℃に温め、酵素が活性化した酒粕に漬ける。
・こんにゃくは臭みを抜いたものを使う。
・「ちしゃとう味噌漬け」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・ちしゃとうは漬け過ぎない。薄めの味で食感が残るくらいがおいしい。おせち料理に使う場合は保存のために長めに漬けるが、柔らかくなり色も悪くなる。
「ちしゃとう実山椒炒め」
【材料(2人分)】・ちしゃとう 60g
・新ごぼう 30g
・にんじん 30g
・サラダ油 大さじ1弱
・実山椒(水煮) 5g 「
春若いもの実山椒味噌かけ」参照
・塩 1.5g
・日本酒 大さじ1/2
・みりん 大さじ1
・濃口醤油 小さじ2
【作り方】1.ちしゃとうは、堅い皮をピーラーでむいて緑の部分だけにする。4mm厚さで斜めに切る。
2.新ごぼうは3mmの厚さで斜めに切る。太い部分は縦割りにして斜めに切る。にんじんも新ごぼうと同じように斜めに切る。
3.フライパンを火にかけてサラダ油をひく。クッキングペーパーで水気をよく除いた実山椒を加えて中火で炒め、香りと辛みを油に移す。新ごぼう、にんじん、ちしゃとうの順で入れて強火で炒める。油がなじんだらすべての調味料を加え、汁気がなくなるまでからめる。火からおろして器に盛って供する。
「ちしゃとう塩麹和え」
【材料(2人分)】・ちしゃとう 60g
・塩麹たれ 20g(好みで)
作りやすい分量:塩麹(市販品。商品により塩分濃度がかなり違うので加減する)225g、 はちみつ25g、オリーブ油25g、シェリービネガー15g
※塩麹たれは日持ちするので、まとめて作って冷蔵庫で保存するとよい。
・シトラスフレッシュスプラウト(好みで) 少々
【作り方】1.ちしゃとうは7cm長さに切る。堅い皮をピーラーでむいて緑の部分だけにする。櫛刃を付けたスライサーで2mm角×7cm長さのせん切りにする。
2.鍋にたっぷりの湯を沸かし、1を入れて色よくさっと茹でて水に放す。冷めたらざるに上げてよく水気をきる。
3.塩麹たれを作る。ボウルに塩麹を入れ、はちみつ、オリーブ油、シェリービネガーを加えてよく混ぜる。
4.別のボウルに2を入れ、塩麹たれを好みの量加えて和える。器に盛ってシトラスフレッシュスプラウトを添えて供する。
「ちしゃとう粕漬け」(左)
【材料(2人分)】・ちしゃとう 30g
・白こんにゃく(黒こんにゃくでもよい。1cm角×3cm 長さに切る) 4切れ
・粕漬け用の酒粕 適量
作りやすい分量:酒粕200g、焼酎50cc、みりん60cc、塩2〜3つまみ
・新生姜の赤い部分の甘酢漬け 2個 「
新生姜の甘酢漬け3種」参照
【作り方】1.粕漬け用の酒粕を作る。耐熱容器に酒粕を小さくちぎって入れ、焼酎とみりんを加える。電子レンジ(500W)で40秒ほど加熱し、全体が40〜50℃になるように温める。ゴムべらで混ぜてなめらかなペースト状にする。使う分のみに塩(酒粕200gに対して塩2~3つまみの割合)を加えて混ぜる。日持ちするので、残りは冷蔵庫ではなく、20~25℃で保存する。
2.ちしゃとうは8cm長さに切る。角棒状になるように堅い皮を包丁で4回に分けて切り除き、1.5〜2cm角×8cmにする。
3.鍋に湯を沸かし、ちしゃとうを入れ2分30秒〜3分ほど茹でて水に放す。冷めたらざるに上げ、クッキングペーパーで水気を除く。
4.白こんにゃくの臭みを抜く。水に8%の酢(材料外)を加えた中にこんにゃくを2分つける。酢水から上げたこんにゃくを流水でもみ洗いして酢を流す。鍋に湯を沸かし、こんにゃくを入れて1分茹でて水に放し、もみ洗いして酢を完全に抜き、水気をきる。
5.バットに1の酒粕を5mm強の均等な厚みに広げ、ちしゃとうと白こんにゃくを水切りネットの中に並べ、バットの酒粕の上に置き、さらに上から酒粕をのせてはさむ。1日〜1日半、冷蔵庫で保存して粕漬けする。漬け方は「
菜花の辛子味噌漬け」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」も参照。
6.酒粕からちしゃとうと白こんにゃくを出して、どちらも立方体になるように切る。器に盛って、小さく切った新生姜の甘酢漬けを添えて供する。
「ちしゃとう味噌漬け」(右)
【材料(2人分)】・ちしゃとう 30g
・味噌漬け用の味噌 適量
作りやすい分量:粒白味噌(西京味噌)500g、日本酒60cc、みりん60cc
※味噌は他の味噌でも構わないが、塩分濃度により、酒やみりんの量を加減する。
【作り方】1.ちしゃとうは堅い皮をピーラーでむいて、円柱状に形を整え、緑の部分だけにする。
2,鍋に湯を沸かし、ちしゃとうを入れ2分30秒〜3分ほど茹でて水に放す。冷めたらざるに上げ、クッキングペーパーで水気を除く。
3.バットに味噌漬け用の味噌を5mm強の均等な厚みに広げ、ちしゃとうを水切りネットの中に並べ、バットの味噌の上に置き、さらに上から味噌をのせてはさむ。味噌の種類、塩分にもよるが、5時間ほど冷蔵庫で保存して味噌漬けする。「
菜花の辛子味噌漬け」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」も参照。
4.味噌からちしゃとうを出して、食べやすい大きさに切り、器に盛って供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。