コルネリス・ベーハの《占星術師》
フェルメールとほぼ同時代の人であったオランダの画家ベーハのこの絵は、ロンドンのナショナル・ギャラリーに展示されている。17世紀後半当時、占星術は科学に取って代わられ急速に衰退。占星術の暦は大いに売れたとはいえ、主流の学問から世俗的な占いへ堕だしてゆく。このみすぼらしい占星術師の姿は衰退する占星術を象徴するようだ。
1 ぼろを着た占星術師17世紀は占星術が学問としての地位から落ちていく時代でもあった。この占星術師の粗末な衣装は当時の占星術の哀れな状況を表すものかもしれない。
2 尿瓶当時の占星術師は医療も行っていた。相談者から持ち込まれた尿の色やにおいも重要な判断材料であり、また尿が持ち込まれた時刻の星の配置によって診断を下すこともあった。当時の占星術師は「尿の預言者」(ピス・プロフェット)と揶揄されることもあったのだ。
3 立てかけられた絵占星術師のイーゼルには、当時の方式で方形に描かれたホロスコープ(天宮図)と、手相の図が置かれている。この時代には占星術師は手相も同時に見ていたと考えられていたのだろう。
鏡リュウジ(かがみ・りゅうじ)
心理占星術研究家・翻訳家。国際基督教大学大学院修了。英国占星術協会会員。占星術の心理学的アプローチを日本に紹介。タロット、神話などにも精通し、占星術の歴史にも造詣が深い。著書・訳書多数。
〔特集〕鏡リュウジ 心の扉を開く タロットと占星術
01
「名画に隠れた占星術の世界観」
この特集の掲載号
『家庭画報』2022年7月号
文/鏡リュウジ 浅島尚美〈説話社〉 撮影/本誌・西山 航、大見謝星斗 撮影協力/ニチユー 東京タロット美術館 LECURIO 構成/三宅 暁〈編輯舎〉
『家庭画報』2022年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。