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フルーツトマトやミニトマトで作る、酸味と甘みのバランスが絶妙な3品

2022.06.02

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

トマトの蜜煮、焦がし砂糖がらめ、みつ豆


トマトの蜜煮、焦がし砂糖がらめ、みつ豆

この連載では開始以来、多くのトマトの料理を紹介してきました。トマトを主にしたものだけでも、昨夏には「フルーツトマトの玉〆」、「フルーツトマトの赤出汁」、「トマトの白和え」、今年の春になって「うどと春菜(しゅんさい)の酢のもの」、「春菜のすき焼き」と登場が増え出しました。今日はトマト料理を3品紹介します。

トマトは品種が豊富で、色も赤、オレンジ、黄色、緑などと多様です。世界中には数え切れない何千種という種類があり、国内で栽培されているだけでもかなりの品種になります。


通年店頭に並んでいますが、露地ものの旬は6月~8月です。ただ、「春菜のすき焼き」でもお話ししたように、トマトは本来、高温多湿に向いていないため、夏場はトマトの糖度が上がりにくくなります。

最もおいしいのは初春から初夏にかけてです。日光をたくさん浴び、比較的乾燥した気候の中で糖度を上げて、栄養価も最も高くなります。この連載は真夏に始まりましたので、糖度が落ちたトマトを使った料理を紹介するのは避け、フルーツトマトを使いました。

トマトの蜜煮、焦がし砂糖がらめ、みつ豆フルーツトマト。

アンデス高原地帯が原産とされ、16世紀にじゃがいもと一緒にヨーロッパに渡り、広く食べられるようになったのは18~19世紀になってからです。日本へは17世紀頃に伝わったとされますが、当時はまだ観賞用でした。明治時代以降、食用として栽培されるようになり、一般家庭に普及したのは第二次世界大戦後です。

現在市場に出回っているもののほとんどが桃色系トマト(桃太郎など)で、大玉で皮が薄く、ゼリー状の部分が多いのが特徴です。甘みがあってくせが少ないのですが、香りが弱い傾向があります。

トマトの蜜煮、焦がし砂糖がらめ、みつ豆カラフルなミニトマト。

他にも、主に加工用の皮が厚くて皮自体にも色がついた赤色系トマト、ミニトマトやマイクロトマト、緑色のグリーントマトなどがあります。品種名ではありませんが、栽培方法によって糖度を高めたフルーツトマト(「春菜のすき焼き」)や緑健(りょくけん)トマト、熊本の塩トマトなども。

大聖寺(たいしょうじ)伊万里の赤玉瓔珞文(あかだまようらくもん)金襴手(きんらんで)向付に、それぞれ“煮しめた”トマト3種を盛りつけます。赤くて丸いものばかりでかわいく仕上げました。今日はいつものダジャレではなく回文(始めから読んでも終わりから読んでも同じ文)で、「試しにトマト煮しめた」(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「トマトの蜜煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・トマトは皮を湯むきし、ヘタを取らずに丸のまま炊く。ヘタを取って炊くと煮くずれやすく、蜜にトマトのエキスと風味が溶け出してしまう。

トマトを2〜3分炊いたら、氷水に鍋ごとつけて急冷する。そのまま冷ますと余熱でくずれてしまうことがある。

・「トマトの焦がし砂糖がらめ」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

カラメルにミニトマトを加えたら、蓋をして加熱する。カラメルの熱で皮が破れてトマトの水分がはね、やけどをする恐れがある。

・「トマトのみつ豆」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・トマトを蜜煮にした際の蜜を無駄なく活用して、みつ豆を作る。

寒天液は一見溶けているように見えても、ある程度の時間をかけないと、完全には溶けない。溶け切っていないと、食べたときざらっとしたものが口に残る。鍋全体に気泡が沸き立った状態でしっかり煮溶かす。

湯で煮溶かした寒天液に、ほうじ茶を加えてこす。先に抽出したほうじ茶で寒天を煮溶かすと、ほうじ茶の風味が消えて苦みが出る。

白きくらげは時間をかけて下煮し、柔らかくとろとろにした後に蜜で炊く。







トマトの蜜煮、焦がし砂糖がらめ、みつ豆

「トマトの蜜煮」(左)


【材料(5個分)】
・フルーツトマト(中) 5個

・白ワイン 300cc

・水 300cc

・グラニュー糖 210g(好みで加減)

・塩 1g

・レモン汁 1/2個分

・バジルスプラウト(好みで) 少々

【作り方】
1.フルーツトマトは皮を湯むきしておく。トマト5個がぴったり入るくらいの口径の鍋を用意する。ヘタを取らずに丸のまま、ヘタを下にして鍋に入れる。

2.蜜を作る。別の鍋に白ワインを入れて強火にかけて沸かし、ワインに火がついたら、コンロの火を消してアルコール分を少しとばす。水とグラニュー糖、塩を加えて溶かす。

3.1の鍋に2の蜜を注ぐ。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。鍋を火にかけて沸いたら弱火にする。トマトの大きさによるが2〜3分炊いてレモン汁を加え、火からおろす。鍋ごと氷水につけて急冷する。冷蔵庫で1時間以上味を含ませる。

4.トマトを蜜から上げて、ヘタを取り4等分して器に盛り、蜜を少量かけてバジルスプラウトを添えて供する。

「トマトの焦がし砂糖がらめ」(右)


【材料(3人分)】
・カラフルミニトマト 20個(180g)

・グラニュー糖 小さじ2と1/2(13g)

・オリーブ油 大さじ1と1/2

・シェリービネガー 大さじ1

・濃口醤油 小さじ1

【作り方】
1.カラフルミニトマトはヘタを指で摘んで除く。

2.シェリービネガーと濃口醤油を混ぜる。

3.フライパンにグラニュー糖とオリーブ油を入れて中火にかける。グラニュー糖が黄色く色づいてきたら、2を加えて混ぜる。ミニトマトを加えてすぐに蓋をして、フライパンを揺らしながら弱火で1分ほど加熱する。

4.ミニトマトを器に盛る。フライパンに残ったカラメルを少し煮つめ、かけて供する。

「トマトのみつ豆」


トマトの蜜煮、焦がし砂糖がらめ、みつ豆

【材料(3人分)】
・トマトの蜜煮 3個

・ほうじ茶寒天 適量
作りやすい分量:水400c、グラニュー糖30g、ほうじ茶の茶葉2g(好みで加減)、粉寒天4g

・白きくらげの蜜煮
白きくらげ(もどしたもの)35g、水100cc、グラニュー糖100g

・そら豆の蜜煮
そら豆10~12個(50g)、水120cc、日本酒30cc、砂糖40g、塩1.5g

・白玉だんご
白玉粉20g、水30cc

・フルーツトマトのドライトマト(2mm×1.5cmに切る) 適量

【作り方】
1.ほうじ茶寒天を作る。鍋に水を注いで粉寒天を加え、泡立て器でよく混ぜ火にかける。細かな泡が立って沸騰してきたら、吹きこぼれないぎりぎりの火加減にして2分ほど沸かし、寒天をよく煮溶かす。寒天が完全に溶けたら、グラニュー糖とほうじ茶の茶葉を加えて火からおろす。ほうじ茶の風味と味が出たらこして、バットや保存容器に流す。冷めたら冷蔵庫で冷やし固める。

2.白きくらげの蜜煮を作る。「白きくらげのきんかんビネガー煮」を参照して、白きくらげを水でもどしたものを炊く。とろっと柔らかくなった白きくらげを水で優しく洗い、水気をきる。鍋に水とグラニュー糖を加えて火にかけ、グラニュー糖がとけたら白きくらげを入れる。沸いたら弱火にして10分炊いて火からおろす。そのまま20分以上味を含ませた後、冷蔵庫で冷やす。

3.そら豆の蜜煮は「そら豆の翡翠煮」を参照して、同じ要領で翡翠色に炊き、冷蔵庫で冷やす。

4.白玉だんごを作る。ボウルに白玉粉を入れて分量の2/3の水を加える。ダマをつぶしつつ、手で混ぜ合わせて水分を均一になじませる。残りの水を加えてこね、ボウルにも手にもつかないくらいに生地がまとまったら棒状に伸ばす。2gずつに切って丸める。

5.鍋にたっぷりの湯を沸かし、白玉だんごを入れる。20〜30秒たったら、鍋底にくっついたものを離すため箸で一度だけ優しく混ぜる。すべての白玉だんごが浮いてきたら、30秒ほど茹でて冷水に放す。冷めたらざるに上げて水気をきる。

6.ヘタを取り4等分したトマトの蜜煮、保存容器から取り出して1.5cm角に切ったほうじ茶寒天、白きくらげの蜜煮、そら豆の蜜煮、白玉だんごを器に盛る。フルーツトマトのドライトマトを散らしてトマトの蜜煮の蜜をかけて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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