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ゼリー状の膜に包まれた不思議な野菜、じゅんさい。味噌汁に入れてもおいしいですよ

2022.06.04

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

じゅんさいわさび酢、和三盆蜜かけ、味噌汁


じゅんさいわさび酢、和三盆蜜かけ、味噌汁

涼し気な見た目でぷりぷりした歯ごたえ、つるっとした食感やのど越しがたまらない生のじゅんさいが、今、盛りです。5月から8月くらいまで収穫されますが、6月のちょうど今頃に、最もおいしいものが店頭に並びます。

じゅんさいは、葉になる前の芽の部分(両端がとがった長い巻物状のもの)と茎、花のつぼみ(茶色で丸い部分)を手作業で摘み取って食用とします。じゅんさいを包む透明なゼリー状の膜がつるっとした食感で、芽や茎の部分はプリプリした歯ざわりを楽しませてくれます。


水煮や酢漬けは通年売られていますが、生のものは今しか手に入りません。水煮のものは赤みがかっており、生のものは茹でると緑になって食感も優れています。

世界各地に広く分布しますが、食用にするのは日本と中国だけ。全体の98%以上が水分で、淡味を愛でる日本料理では吸いものや味噌汁、酢のものなどにします。

じゅんさいわさび酢、和三盆蜜かけ、味噌汁じゅんさい。

淡水の池や沼に生育し、水底から水面に向かって茎を伸ばして睡蓮(すいれん)のような丸い葉を広げます。本州と北海道に自生していましたが、今では環境の変化などでほとんど見られなくなり、昔は産地として有名だった京都の深泥池(みぞろがいけ)も一時は絶滅が心配されました。現在、じゅんさいの8割は中国産で、国産のほとんどは秋田県山本郡三種町(みたねちょう)で採られたものです。

じゅんさいは漢名の「蓴(ちょん)」がなまった「じゅん」に「菜(さい)」をつけたのが名前の由来で、古くは「ぬなわ」(沼の縄の意)とも呼ばれ、『万葉集』にも記載があり食用にされてきました。

芽の部分が小さくてゼリー状の膜部分が多いほどおいしく、出始めの5月~6月初め頃に採れる「1番芽」が最高です。その後、「2番芽」(6月〜7月)、「3番芽」(7月以降)と続きます。生じゅんさいの中でも特別の「1番芽」が、今なら食べられます。ぜひお試しください。

この連載をお読みいただいている関西の読者の中には、私のことを「じゅんさいなことばっかしゆーとったら、あかんで」と思われている方もいらっしゃると思います(笑)。この言葉、関西にいる頃、時々耳にしました。じゅんさいはぬるぬるして箸ではさみにくいことから、のらりくらりとしてつかみどころのない、いい加減という意味で使われていたようです。言い訳はしませんが、それも愛嬌ということで、野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「じゅんさいわさび酢」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

生じゅんさいは食べる直前に茹でる。茹で置きすると色が悪くなり、ゼリー状の部分も減ってしまう。

・生じゅんさいを保存するときは、冷蔵庫の野菜室ではなく、冷気の吹き出し口に近い場所やチルド室で保存する。

瓶詰やパック詰めの水煮じゅんさいを使う場合は、ざるに上げてしばらく水にさらし、ph調整剤などを抜く。酢漬けのものも同様に、水につけて酢を抜いてから使う。

・「じゅんさいの和三盆蜜かけ」は、野菜料理をおいしくする7要素中4要素を取り入れている。

◎旨み 塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

黒蜜ではなく和三盆蜜(ネット販売もされている)を使う。和三盆蜜は黒蜜とは味も風味も異なり、強い甘さではなく独特の酸味とやわらかな甘さが特徴。黒蜜は黒砂糖を水に溶かして煮つめて作るが、和三盆蜜は和三盆糖を作る際に抜かれた糖蜜を煮つめて作る。発酵食品で独特の酸味が特徴だが、熱を通すことによりまろやかな風味へと変わる。

・食べる直前に和三盆蜜をかける。

・黒蜜を使う場合は量を少なめにして、仕上げに青柚子の皮の部分のみをおろし金で削ってふりかけるとよい。

・「じゅんさいの味噌汁」は、野菜料理をおいしくする7要素中4要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

じゅんさいは味噌汁が80℃くらいになってから加える。加熱し過ぎると色が悪くなり、ゼリー状の部分も減り、食感も悪くなる。

味噌汁のコツは「沸かさない」「煮えばなを手早く供する」「温め直さない」。「ゆり根白味噌仕立て」も参照。







じゅんさいわさび酢、和三盆蜜かけ、味噌汁

「じゅんさいわさび酢」(左)


【材料(2人分)】
・生じゅんさい(瓶詰、酢漬けでもよい) 50g

・わさび酢 約23cc
土佐酢(出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合)20cc、わさび(市販品のチューブ入りわさびでもよい)3g

【作り方】
1.生じゅんさいはざるに入れ、ざるごと水につけてさっとすすいで水をきる。沸いた湯にざるごと入れて30秒〜1分茹で、色が鮮やかな緑になったら冷水につける。つぼみや茎の赤茶色の部分が緑色に変わる。瓶詰や酢漬けの場合はざるに上げてしばらく水にさらした後、生じゅんさいと同じように処理する。

2.水気をよくきったじゅんさいを器に入れ、わさび酢をかけて供する。

「じゅんさいの和三盆蜜かけ」(右)


【材料(2人分)】
・生じゅんさい(瓶詰、酢漬けでもよい) 50g

・和三盆蜜 小さじ2(好みで加減)

・花穂じそ(好みで) 少々

【作り方】
1.生じゅんさいは「じゅんさいわさび酢」と同じように茹でて冷水につける。

2.水気をよくきったじゅんさいを器に入れ、和三盆蜜をかけて花穂じそを添えて供する。

「じゅんさいの味噌汁」


じゅんさいわさび酢、和三盆蜜かけ、味噌汁

【材料(2人分)】
・生じゅんさい(瓶詰、酢漬けでもよい) 40g

・オクラ(せん切り) 2本 「オクラと長いもの梅和え」参照

・出汁 350cc

・赤出汁味噌(好みの味噌でもよい) 適量

【作り方】
1.鍋に出汁を入れて火にかけ、80℃くらいになったら赤出汁味噌をとき入れる。

2.同時進行で生じゅんさいを「じゅんさいわさび酢」と同じように茹でて、冷水につけずに味噌汁に加える。

3.味噌汁が90℃を超えたくらいで火からおろし、椀に盛ってオクラのせん切りをのせて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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