プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 苦瓜とズッキーニの天ぷら、苦瓜となすの味噌炒め
夏バテで気分が晴れないときは苦瓜がおすすめです。ビタミンCが豊富で、神経を覚醒させる効果や、胃粘膜を保護して食欲を増進させ、血圧や血糖値を下げる作用もあります。
苦瓜は蔓茘枝(つるれいし)とも呼ばれます。かつては現在ほど一般的ではなく、沖縄県や九州南部で食べられていました。1990年代に沖縄県の果物や野菜が県外に出荷されるようになると全国に普及して、ゴーヤという呼び名が定着し、夏に人気の野菜になりました。最近は白いものやいぼのないものなど、様々な品種が出ており、日除けのグリーンカーテンとしても人気ですね。
苦みが特徴ですが、品種によって苦みが強いものから弱いものまであります。いぼが大きくて色が薄いものは苦みが弱いといわれますが、それは苦瓜が成長し熟し始めているからです。苦いほうが好みなら、いぼが小さくて色が濃い緑の若いものを、苦みが弱いものがよければ成長したものを選ぶとよいでしょう。
みずみずしくて、いぼがすき間なくぎっしりと詰まり、弾力があるものが新鮮です。先端が枯れているもの、いぼがつぶれたり、傷があるものは避けます。
白いわたに苦みがあるので、苦みがあまり得意でない場合は、スプーンで種と一緒にわたをしっかりこそげ取り、薄めにスライスして調理するとよいでしょう。
和えものや酢のものに使う場合は、切った後に少量の塩をまぶして10分ほどおき、さっと茹でて水にさらし、水気を除いて使います。ただし茹で過ぎると栄養分が流失し、食感も失われるので注意。苦みが好きな場合はこの限りではありません。
おいしく料理するコツもお教えしましょう。加熱調理の場合は強火で短時間がポイントです。弱火で長時間加熱したものに比べて、爽やかな苦みになり、栄養分の流出も少なくてすみます。今日は天ぷらにもしますが、天ぷらはまさに高温短時間調理で、苦瓜の苦みも弱まり、油の風味と旨みが加わっておいしくなります。ゴーヤ料理のコツを学んでゴーヤ料理にGoや!(笑)今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「苦瓜とズッキーニの天ぷら」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・苦瓜は7mm厚さの輪切りにする。薄過ぎると食感が失われる。
・苦みを減らしたい場合は、スプーンで種と一緒にわたをしっかりこそげ取る。
・「苦瓜となすの味噌炒め」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・苦瓜は強火で短時間加熱する。長時間加熱にならないように、途中でフライパンから出し、他の食材を炒めた後に一緒に合わせて味をつける。
・味噌は他の調味料で溶かして加え、短時間で調味料がからむようにする。
「苦瓜とズッキーニの天ぷら」(右)
【材料(3人分)】・苦瓜 9cm
・ズッキーニ(緑、黄) 各5cm
・天ぷら衣 適量
薄力粉100g、冷水100cc、卵黄1個
・薄力粉 適量
・揚げ油 適量
・塩 少々
・天出汁(好みで)
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合
【作り方】1.苦瓜は7mm厚さの輪切りにして、スプーンで種を除く。ズッキーニはそれぞれ8mm厚さの輪切りにする。
2.天ぷら衣を作る。ボウルに入れた冷水に卵黄を加え、泡立て器でときほぐす。そこに薄力粉を加えて粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。ベジタリアンは卵を用いなくてもよい。
3.苦瓜とズッキーニに薄力粉を薄くまぶして天ぷら衣をつけ、170℃に熱した揚げ油に入れて揚げる。途中で返して、出る泡が少なくなりカリッと揚がったら油から上げて、クッキングペーパーにのせて油をきる。好みで塩か天出汁で食する。
「苦瓜となすの味噌炒め」(左)
【材料(3人分)】・苦瓜 1/3本(75g)
・なす 2本
・甘長唐辛子(ししとうでもよい) 3〜4本
・みょうが 2個
・生姜(みじん切り) 小さじ2
・サラダ油 大さじ2
・日本酒 小さじ1
・濃口醤油 小さじ1
・みりん 小さじ2
・信州味噌(好みの味噌でよい) 小さじ2
【作り方】1.苦瓜は縦半分に切り、スプーンで種を除く。5mm厚さの半月切りにする。
2.なすはヘタの部分から切り落として縦半分にする。耐熱皿にのせて500Wの電子レンジで90秒ほど加熱する。一口大に乱切りにする。
3.甘長唐辛子は枝の部分を外して3cm長さに切る。みょうがは縦に4等分する。
4.ボウルにすべての調味料を入れて混ぜ、味噌を溶かしておく。
5.フライパンを強火にかけてサラダ油の半量をひく。苦瓜を入れて強火で1分ほど炒めてバットに移す。残りのサラダ油をフライパンにたして、生姜を入れて中火で炒める。甘長唐辛子、なす、みょうがの順で加えて炒め、油がなじんだら苦瓜をフライパンに戻す。4を加えて強火で一気にからめて、汁気がなくなったら完成。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗