鹿角市教育委員会所蔵 大湯ストーンサークル館展示 世界文化遺産・特別史跡 大湯環状列石出土 数の土版(秋田県鹿角市十和田大湯)世界文化遺産になった「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産である特別史跡大湯環状列石(約4000~3500年前)で発掘された土版。縦5.8×横3.7×厚さ1.5センチ、重さ48.3グラム。手のひらに収まるほど小さい人体を模した土製品にすぎないが、縄文人が数を表現することを発明した事実を伝える重要な遺物である。
数の発明発見
文=小林達雄(考古学者)
ものの高低や大小は一目瞭然の場合が少なくないが、私たちの祖先は、対象の構成要素を個体に還元して、順番や量を勘定する方法に気づいた。画期的な数の発明だ。
その記念品が、縄文人自身の身体をデザインした長方形土版である。表面中央に一回り大きな円点があり、これは口である。上方両肩の円点2つを目とする。右横腹に3、左に4、真っすぐ上下に5つ並べて正中線に見立てる。
裏面の肩胛骨にあたる各々の3を足すと6になり、それに倣って表面の円点も足していくと、1から9までが出現する。
縄文人はそれほどまで数の概念を認識し、自在に操る能力を身に着けていた。さらにそれらをただ並べるのではなく、配置によって人体を表現した。
抽象的な数の概念と、具体的な身体のカタチという、相異なる2つを融合させたデザイン感覚が見て取れる。
『家庭画報』2022年7月号掲載。
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