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生地にしっかり味をつけるのがコツ。揚げたて飛龍頭は、そのまま食べてもおいしい!

2022.06.14

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

飛龍頭(ひろうす)2種


飛龍頭(ひろうす)2種

水気を絞った豆腐に、にんじんやれんこん、ごぼうなどを刻んで混ぜ、丸めて油で揚げたがんもどきは、関西ではひろうす、ひろうず、ひりょうずという名称で親しまれています。現在、関東と関西での呼び方が違うだけで、両者は同じものを指しますが、その由来はまったく別です。

がんもどきの由来は諸説ありますが、豆腐などを使って雁(がん)の肉に似せて作った精進料理のもどき料理(「なすのきじ焼き」、「焼きねぎと揚げこんにゃくの丸仕立て」、「蓮餅のうなぎもどき」)の一種です。


一方ひろうすは、戦国時代にポルトガルから伝来した「Filhós(フィリョース)」という、小麦粉と卵を混ぜて油で揚げた南蛮菓子が由来とされます。日本語の音を当て、漢字で「飛龍頭」、「飛龍子」と表記されました。

日本流にアレンジして菓子として作られていたのですが、江戸時代、『和漢精進料理抄(わかんしょうじんりょうりしょう)』(1697年)に載っている豆腐を使った「豆腐巻(とうふけん)」と調理法が似ていたため、豆腐巻も飛龍頭と呼ばれるように。さらに、「豆腐巻」の製法はがんもどきとそっくりだったため、飛龍頭とがんもどきが異名同品になったといわれています。

日本ではフィリョースという菓子よりも、飛龍頭という豆腐料理がメジャーになったわけですが、そもそも菓子と料理という2つのカテゴリーは重複部分も多く、定義づけも曖昧になります。羊羹(羊のあつもの。羊の肉を使ったスープ)から甘い羊羹(ようかん)へ、饅頭(まんとう。中に肉や野菜を入れる)から甘い饅頭(まんじゅう)への変化も同じです。

飛龍頭をおいしく作るコツもこれに近く、生地を菓子とも料理ともとれるくらいに味つけします。市販品の飛龍頭はそのまま食べてもおいしくありませんが、今日お教えする飛龍頭は、菓子というのは言い過ぎですが、そのままでも大変おいしいです。この飛龍頭を食べたら、もう他は食べられなくなります。ぜひお試しください。

よくプロの料理人が飛龍頭という字にこじつけて「具材のぎんなんは龍の目、笹がきごぼうは龍のひげ、ゆり根はうろこを表している」などと言います(笑)。「鋳込みかぶ2種」、「のっぺい汁」、「擬製豆腐」でも述べましたが、精進料理では野菜を皮や根、切れ端に至るまで残さずに使い切って、おいしい料理にします。飛龍頭も一緒です。読者の皆さまの心にはどちらが響くのでしょう。

生地がポイントです。これだけは習得してください。具材は材料表どおりでなくてもかまいません、家にあるものでいろいろ工夫を。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「飛龍頭2種」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

生地自体においしい味をつけ、炊く煮汁は薄味に。

生きくらげと新ごぼう以外の具材はさいの目切りにする。細切りや薄切りにすると味を感じにくく、生地からはみ出しやすい。

生地に加えるいりごまがおいしさのポイント。すり過ぎない。

・生地を丸める際、手にサラダ油を少量つけると生地が手につかない

低温で中までしっかり揚げる。油温が高いと焦げやすい。

・鍋の底面についた部分が焦げるので。揚げ油の中でころがすようにして揚げる







「飛龍頭」


飛龍頭(ひろうす)2種

【材料(作りやすい分量)】
※下の分量で飛龍頭大(120g)3個と小(40g)12個ができる

・木綿豆腐 2.5丁

・大和いも(すりおろす)75g

・卵黄 1と1/2個

・白いりごま(市販品をいり直す) 40g

・砂糖 25g

・薄口醤油 9cc

・ごま油 大さじ1弱

・揚げ油 適量

・生きくらげ(せん切りにする。乾物を水でもどしてもよい) 55g

・新ごぼう(笹がきにする) 65g
笹がきのやり方は「季節のおばんざい ひじきの炒め煮、おからの酢炊き」参照

・にんじん(6mm角のさいの目切り) 50g

・しいたけ(8mm角のさいの目切り) 75g

・ゆり根 100g

・枝豆(塩茹でし、さやから出して薄皮をむく) 90g
茹で方は「枝豆のおいしい茹で方」参照

・飛龍頭の煮汁
出汁1000cc、塩2g、日本酒大さじ2、みりん大さじ1、薄口醤油大さじ2

・青柚子 適量

【作り方】
1.「トマトの白和え」を参照して、木綿豆腐を押して絞り豆腐にする。ミキサー(フードプロセッサーでもよい)に絞った豆腐を入れて、均一なペースト状にする。

2.白いりごまをいり直して、「ひと目でわかるプロセス&テクニック」の写真のようにすり鉢で粗めにする。

3.ゆり根は大きくて厚い鱗片は6mm角のさいの目切りに、真ん中近くの小さな鱗片はそのままで2分30秒〜3分蒸す。ゆり根の下処理は「ゆり根のかき揚げ、揚げ出し」参照。

4.フライパンを火にかけ、ごま油をひき、生きくらげ、新ごぼう、にんじん、しいたけを加えて炒める。油がなじんだら塩(材料外)を薄くふって下味をつける。

5.2の白いりごまが入ったすり鉢に1を加えてゴムべらで均一になるように混ぜる。大和いも、卵黄、砂糖、薄口醤油を加えてよく混ぜ、均一になったら、4と枝豆、3のゆり根を合わせる。

6.手にサラダ油(材料外)を薄く塗って、5の生地を半量使って、40g×12個に丸める。

7.揚げ鍋に揚げ油を入れ、165℃に熱して丸めた生地を入れる。鍋の底面についた部分が焦げるので、油の中でころがすようにして2分ほど揚げる。全面がきれいなきつね色になったらクッキングペーパーに広げて余分な油を除く。

8.鍋に飛龍頭の煮汁の出汁と調味料をすべて入れて火にかける。沸いたら7の飛龍頭を入れ、2分炊いて器に盛り、青柚子の皮の部分のみをおろし金で削ったものをふりかけて供する。

「揚げたて飛龍頭」


飛龍頭(ひろうす)2種

【材料(3人分)】
・飛龍頭の生地(大3個分) 360g
「飛龍頭」と同じ

・揚げ油 適量

・薄めの美味出汁 適量
出汁6:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合

・おろし生姜 適量

【作り方】
1.飛龍頭の作り方の1~5と同様に生地を作り、手にサラダ油(材料外)を薄く塗って、生地の半量を3等分にして丸める。

2.揚げ鍋に揚げ油を入れ、165℃に熱して丸めた生地を入れる。鍋の底面についた部分が焦げるので、油の中でころがすようにして、全面がきつね色になるように4分ほど揚げる。

3.揚げたてを器に盛り、温めた薄めの美味出汁を横から注いで、おろし生姜を添えてあつあつを供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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