天野惠子先生のすこやか女性外来 第2回(03) 今回は、女性ホルモン・エストロゲンの急激な減少によって「体に生じる更年期症状」を取り上げます。まず起こりうる症状と自分の不調の程度を知り、対処法・治療法にも目を向けましょう。“我慢せず、積極的に治す習慣”は今後の健康維持にもきっと役に立つはずです。
前回の記事はこちら>> 更年期の症状/体の不調
だるさ、頭痛、冷え、動悸も。更年期の不調は全身に
●前回の記事
更年期の症状が全身に出るのはなぜ? 訴えの多い10の不調と対処法天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。【セルフチェック】専門医も使う簡易テストで症状を自己採点
個人差の大きい更年期症状を客観的にとらえるために数値化したのが「簡略更年期指数(SMI)」です。婦人科医の小山嵩夫先生が開発したもので、下のチェックシートは診察の場でも使われています。自分の不調の程度を知り、適切な対処を心がけましょう。
簡略更年期指数(SMI)
症状の程度に応じて○をつけ、合計点で対処法を考えます。 強=毎日のようにある 中=毎週ある 弱=症状として強くはないがある 無=ない自己採点評価法0〜25点/上手に更年期を過ごしています。これまでの生活を続けてよいでしょう。
26〜50点/食事、運動に注意を払い、無理のない生活を心がけましょう。
51〜65点/医師の診察を受け、生活指導、カウンセリング、薬物療法を受けたほうがよいでしょう。
66〜80点/長期間(半年以上)の計画的な治療が必要でしょう。
81〜100点/各科の精密検査を受け、更年期障害のみである場合には専門医による長期的な対応が必要でしょう。
【対処法】天野先生が効果を実感
不調を和らげる3つの治療法
治療薬は形状も投与法もさまざま。主治医の説明をよく聞いて、自分に合うものを。天野先生が特に効果を実感している更年期症状の治療法は「ホルモン補充療法、漢方薬、プラセンタ」。
前回の記事でも示したように症状によって効果の表れやすい治療法は異なります。ホルモン補充療法には禁忌のケースや不正出血や乳房の張りなどの副作用もあります。主治医の指示のもと、定期的な経過観察を続けながら適切に行うことが何よりも大事です。
1.ホルモン補充療法減少したエストロゲンを補充する方法。一般的には、子宮内膜増殖症発症予防のためにエストロゲンとプロゲステロンを併用する方法(HRT)を、病気などで子宮を摘出した人にはエストロゲンを単独投与する方法(ERT)を行います。経口剤、貼付剤、ジェル剤の3タイプがあります。
【禁忌のケース】
・子宮体がん、またはその疑いのある人
・乳がん、またはその疑いのある人。過去に乳がんになった人
・原因不明の不正な性器出血がある人
・重い肝機能障害のある人
・血栓症になったことがある人
・心筋梗塞や狭心症、脳卒中になったことがある人
2.漢方薬重い副作用が少なく、根本的な体質改善に効果があることが特徴です。特によく使われるのは「三大処方」と呼ばれる定番の漢方薬。証(体格や体質を加味した漢方独自の診断方法)に応じて処方されます。おおよその目安として「実証」はがっちりした体型で体力があり、胃腸が丈夫なタイプ。「虚証」は筋肉が少なく疲れやすく、冷えの多いタイプ。「中間証」はどちらにも偏らないタイプです。
【女性のための三大処方】
•当帰芍薬散(虚証)•加味逍遙散(中間証)•桂枝茯苓丸(実証)
3.プラセンタ医療用プラセンタは健康で満期出産した人の胎盤から抽出した水溶性物質で、注射剤「メルスモン」は厚生労働省より更年期障害に対する保険適用が認可されています。天野先生は特に肩こりやだるさの解消に効果を実感しています。
その他・痛みやこりに→鍼灸、整体、マッサージなど
・症状が重いとき→和温療法、疼痛治療、漢方の煎じ薬など
*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
公式サイト「女性外来オンライン」:
https://joseigairai.online/YouTube
「女性外来オンラインチャンネル」はこちら>> 撮影/鍋島徳恭 イラスト/佐々木 公〈sunny side〉 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2022年7月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。