スナップえんどうと季節野菜の黄身酢かけ、さやいんげんとたたき新ごぼう
若採りしてさやごと食べるさやえんどうには、きぬさや(「
きぬさや3種 ひたし、ごま和え、酢のもの」、「
きぬさやとせりの根の天ぷら」)の他にも、大ぶりのオランダさやえんどう、砂糖さや、肉厚のスナップえんどうなどがあります。今日はスナップえんどうを使った料理を紹介します。
スナップえんどうは1970年代にアメリカから日本に入ってきました。当時はスナックえんどうとも呼ばれましたが、農林水産省により名称統一され、スナップえんどうになりました。グリーンピースの改良品種で、豆が成長してもさやが堅くならず、さやのまま食べられます。甘みがあってパリッとした食感が特徴です。
(右)モロッコいんげん、(中)スナップえんどう、(左)さやいんげん(どじょういんげん)。選ぶ際はさやに傷や変色した部分がなく、ふっくらして張りがあるものがよいでしょう。ふくらみがなく平たいものは柔らかですが、中の豆が育っておらず甘みも少なめです。逆に豆が育ち過ぎてふくらんでいるものは、さやが堅くなっているので注意が必要です。
一般的には筋を除いてから下茹でして使いますが、今回は甘みと風味が残るとっておきの茹で方をお教えしましょう。
スナップえんどうはきぬさやよりも筋が太くて堅く、筋を除いてから茹でるとそこから中の空洞に湯が入ってしまいます。茹でた後に筋を取ると水っぽくならず、風味が抜けません。また、茹で過ぎると食感が悪くなり、香りも抜けてしまいます。40秒ほど茹でたら、水に放さずざるに上げて薄く塩をふり、扇風機かうちわで風を送って冷ますとおいしく食べられます。
もう一品は「
新ごぼう飯、味噌汁」でもお話しした、新ごぼうを使ったたたきごぼうです。あくが少なくて柔らかく、優しい風味の新ごぼうをさやいんげんと合わせます。同じたたきごぼうでも初夏向けの軽い仕上がりになります。
スナップえんどうしかり、たたきごぼうしかり、ちょっとした“スナップ”の利かせ方が重要です。また、“たたかれ”そうですね(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「スナップえんどうと季節野菜の黄身酢かけ」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・
スナップえんどうは茹でた後に筋を取る。香りと食感が残るように、40秒ほど茹でてざるに上げる。
・
新ごぼうと新れんこんは茹でた後、水ではなく土佐酢に漬けて冷ます。
・「さやいんげんとたたき新ごぼう」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・冬のたたきごぼう(「
たたきごぼう」)よりも
ごまの量を減らして、新ごぼうの風味を生かす。
・
新ごぼうが熱いうちにたたいて、すぐに合わせ酢に漬けると味が染みる。冬のたたきごぼうよりは、軽めにたたいて歯ごたえと風味を残す。
・
ごまは香ばしくいり直して使う。このひと手間で味も香りも格段によくなる。
・ごまと相性がよいさやいんげんを加えることで、見た目も味も初夏にふさわしい軽い仕上がりになる。
「スナップえんどうと季節野菜の黄身酢かけ」(左)
【材料(4人分)】・スナップエンドウ 60g
・新ごぼう 40g
・新れんこん 40g
・酢 適量
・土佐酢 300cc
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合
・みょうがの甘酢漬け 1個
「
みょうがの甘酢漬け」参照
・黄身酢 適量
「
金時草の黄身酢かけ」参照
・柚子こしょう 少々
【作り方】1.新ごぼうは洗って2.5cm程度の乱切りにし、3分ほど水から茹でる。水に放さず土佐酢に漬ける。
2.新れんこんは皮を薄くむいて、新ごぼうと同じくらいの大きさに切る。鍋に湯を沸かして酢(湯500ccに対して酢大さじ1)を加える。れんこんを食感が残るくらいに茹でてざるに上げ、1の新ごぼうを漬けた土佐酢に一緒に漬ける。
3.鍋にたっぷりの湯を沸かし、スナップえんどうを入れて40秒ほど茹でる。浮いてくるので落とし蓋をするか、箸で混ぜながら茹でる。茹で上がったらざるに上げて薄く塩(材料外)をふり、扇風機かうちわで風を送って冷ましながら両側の筋を取る。へたを折って先端まで引っ張って太い筋を除く。反対側に爪を立て同じく先端に向かって筋を取る。冷めたら2cmほどに切る。
4.新ごぼうと新れんこんを土佐酢から上げ、酢をきってボウルに入れる。スナップえんどうを加えて混ぜ、器に盛る。黄味酢をかけて柚子こしょうをのせる。縦に4つに切ったみょうがの甘酢漬けを添えて供する。
「さやいんげんとたたき新ごぼう」(右)
【材料(4人分)】・新ごぼう 150g
・さやいんげん 45g
・合わせ酢 約435cc
作りやすい分量:出汁300cc、みりん50cc、薄口醤油50cc、酢35cc
・ごま衣
白いりごま(市販品)80g、出汁16cc、みりん4cc、薄口醤油4cc、酢4cc、砂糖小さじ1/2弱
【作り方】1.新ごぼうは洗って16cm長さに切り、縦に半分に割って(細いものはそのままでよい)4分ほど水から茹でる。
2.合わせ酢を作る。鍋に出汁を入れて火にかけ、みりんと薄口醤油を加える。沸いたら酢を加えて火からおろす。
3.1の新ごぼうを茹で湯から上げ、熱いまま布の上に並べて上からも布をかぶせる。すりこ木(麺棒でもよい)で布の上から新ごぼうを軽くたたき、ごぼうの繊維を開かせる。
4.3の新ごぼうを4cm長さに切って、縦に2つに割り、熱いうちに2の合わせ酢に漬けて30分以上味を含ませる。
5.ごま衣を作る。市販の白いりごまを軽くいり直して香りを出し、すり鉢で粒の形が少し残るくらいにする。調味料を加えて全体になじませる。「
たたきごぼう」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。
6.新ごぼうを合わせ酢から上げて汁気をきる。すり鉢に入れてごま衣で和え、ごぼうに衣を均一にまとわせる。保存容器に移して30分以上おいて味を含ませる。
7.さやいんげんは筋がある場合があるので、念のために1〜2本の両端を折って筋がないか確かめる。筋があれば除く。鍋にたっぷりの湯を沸かし、さやいんげんを入れ1分30秒〜2分ほど茹でて水に放す。冷めたらざるに上げて水気をきり、4cm長さに切る。
8.6にさやいんげんを混ぜて5分ほどおいた後、器に盛って供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。