プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 6月の本膳、豆々の煮こごり
6月の野菜本膳を紹介します。5、6月にお教えしたレシピを中心に組んでみました。献立は飯:
生姜飯、汁:ごま豆腐(6/30に紹介予定)と
じゅんさいの赤出汁、平椀:
利休麩、うど・みょうが・しそ、辛子麹、坪椀:豆々の煮こごり(本日紹介します)になります。連載最後の野菜本膳、暑い日が続いていますので、涼やかに銀溜(ぎんため)塗の本膳皆具(かいぐ)を使いました。
今日は坪椀の一品、豆々の煮こごりを紹介しましょう。春から夏にかけてバトンリレーを展開する多くの種類の青い豆を一つにまとめて煮こごりにします。
露地ものでいえば、初春のうすい豆(「
豆飯、「
わかめとうすい豆」、「
うすい豆の薄甘含ませ」)やグリンピースから始まり、その後、スナップえんどう(「
スナップえんどうと季節野菜の黄身酢かけ」)、きぬさや(「
きぬさや3種 ひたし、ごま和え、酢のもの」、「
きぬさやとせりの根の天ぷら」)、そら豆(「
そら豆3種」、「
そら豆の翡翠煮、醤油煮」、「
そら豆のかき揚げ、そら豆とセロリの葉のきんぴら」)、さやいんげん(「
さやいんげんと春菜の黒ごま和え」、「
さやいんげんの煮もの、きんぴら、梅煮」、「
さやいんげんと新ごぼうのたたき」)、モロッコいんげん(「
モロッコいんげんごま酢クリーム和え」)などによって、追いつ追われつのバトンタッチがくり広げられます。
春から初夏に出そろった様々な豆で作った、緑鮮やかな煮こごり。そして初夏が近づくと枝豆(「
枝豆のおいしい茹で方、ずんだ和え」、「
枝豆飯」、「
枝豆ととうもろこしのかき揚げ」)が参入し、9月に枝豆(「
茶豆の塩茹で、紫ずきん3種」、「
小いもの紫ずきんずんだ和え」)の甘みがピークに達して、青い豆のリレーは終わります。
多彩な豆々の異なる風味、食感の違い、その移り変わりに季節の変化が感じ取れます。今なら、豆々の走り、盛り、名残のすべてがそろいます。一つにまとめておいしく味わえる豆々の煮こごりを“まめ”に作るとは“まめまめ”し(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「豆々の煮こごり」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・スナップえんどうは茹でた後に筋を取る。香りと食感が残るように、40秒ほどさっと茹でて水に放さず、ざるに上げる。
・板ゼラチンはたっぷりの水に30分〜1時間つけて十分に吸水させた後に使用する。
・ゼラチンは60℃を超すと熱変性が起きて固まりにくくなるので、温度に注意する。
・茶巾絞りにする際は塩化ビニル樹脂のラップではなく、半透明のポリエチレンのシートを使う。ラップは水分がつくとクチャクチャになり扱いにくい。ポリエチレンは表面がサラサラで、水分がついても離れやすい。
・青柚子の皮の部分のみを削ってふりかけてもよい。
「豆々の煮こごり」
【材料(5人分)】・スナップえんどう 5本
・さやいんげん 5本
・そら豆の翡翠煮 15粒
「
そら豆の翡翠煮」参照
・うすい豆の薄甘含ませ 50粒
「
うすい豆の薄甘含ませ」参照
・寄せるための出汁
作りやすい分量:出汁540cc(かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい)、塩2.2g、薄口醤油小さじ3、日本酒小さじ1、板ゼラチン45g
作り方は「
夏野菜の煮こごり」参照
・ごま酢クリーム
白ごまペースト(市販品でよい)50g、酢大さじ3、砂糖大さじ3弱
・クレイジーピー(さやいんげんの幼葉。好みで) 適量
・ポリエチレン製の袋 5枚程度
【作り方】1.鍋に湯を沸かし、スナップえんどうを40秒ほど茹でる。浮いてくるので落とし蓋をするか、箸で混ぜながら茹でる。茹で上がったらざるに上げて薄く塩(分量外)をふり、扇風機かうちわで風を送って冷ましながら両側の筋を取る。ヘタを折って先端まで引っぱって太い筋を取る。反対側に爪を立て同じく先端に向かって筋を取り、冷めたら1cmほどの乱切りにする。
2.さやいんげんは筋がある場合があるので、念のために1〜2本の両端を折って筋がないか確かめ、筋があれば除く。鍋に湯を沸かし、塩(分量外)を湯の量の1.5%加え、さやいんげんを1分30秒〜2分ほど茹でて水に放す。冷めたらざるに上げて水気をきり、1cm長さに切る。
3.茶巾絞りに使うシートを作る。ポリエチレン製の袋を切って25cm四方程度のシートを5枚作る。小鉢や小さなボウルなどを5個並べ、内側に霧吹きで水をかけ、シートを広げて貼っていく。
4.スナップえんどう1本分、さやいんげん1本分、そら豆の翡翠煮3粒、うすい豆の薄甘含ませ10粒を、シートを敷いた5つの小鉢にバランスよく入れる。
5.寄せるための出汁を4に適量ずつ注ぎ、シートを茶巾に絞って輪ゴムで留める。氷水に入れて粗熱を取り、冷えたら冷蔵庫で完全に固める。
6.輪ゴムとシートを外して中身を取り出し、器に盛ってクレイジービー(好みで)を散らす。ごま酢クリームを添えて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗