是枝裕和監督。最新作にして初の韓国映画『ベイビー・ブローカー』は、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出された。ソン・ガンホさんらとの「いつか一緒に」をかなえた本作
2007年、熊本県にある慈恵病院に「こうのとりのゆりかご」が設置されました。こうのとりのゆりかごは、養育できない新生児を匿名で預けられる窓口のことで、「赤ちゃんポスト」ともいわれます。世界で初めて赤ちゃんポストが設けられたのは、ドイツ。2000年のことでした。以降、ドイツ全土、中欧・東欧へ。そして、日本、韓国にも広がりました。
「『そして父になる』を作るときに、日本の養子縁組や里親制度などを調べていく中で関心を持ったのが最初です」と、赤ちゃんポストに意識が向いたきっかけを話す是枝裕和監督。そして、韓国にも「ベイビー・ボックス」と呼ばれる赤ちゃんポストがあることを知ったといいます。
同じ頃、持ち上がっていたのがソン・ガンホさんやカン・ドンウォンさん、ペ・ドゥナさんそれぞれとの「いつか一緒に映画を」という話。それがかなって誕生した是枝監督初の韓国映画が、第75回カンヌ国際映画祭エキュメニカル審査員賞を受賞した『ベイビー・ブローカー』です。「これなら自分の頭の中にいる韓国の俳優さんたちと一緒に映画が作れるのではないか」というプロットをふと思いついたことが制作のきっかけになったと、韓国で行われた制作報告イベントで是枝監督は語りました。